第三百七話 蛸唐
タコから美味しいよね。
たこ焼きを焼こうと思いました。鉄板がありませんでした。あと、タコの処理の仕方もよく分かりませんでした。仕方ないのでティアに聞いてみたら「ちょっと待って」って言われて「水で洗って塩で揉めって」ということを言われた。なるほど、わからん。ともかくこのぬめりは取らないといけないらしい。
宿屋の水道を借りてジャバジャバ水洗い。どうせ塩水に漬けるんだから海水でもいいんじゃないかなとは思うけど真水で洗う。ひたすら触手の吸盤の中も綺麗にする。
次に塩だ。塩は私がコンビニで買ったやつ。だってこっちの世界の塩は若干苦味がね。いい塩は高いんだよ。買えるんだけどさ。
塩が変色してきたら綺麗に洗い流して茹でる。すぐ生で食べるのでなければしっかり茹でた方がいいんだってさ。まあさすがに刺身を強制するのは怖いからね。
あとは氷水で締める……ん? 氷水? そんなものはない! ないのでまあ仕方ないから流水で冷やします。とりあえずはいってイレーヌちゃんに渡したら嫌な顔された。なんだよ、食材だぞ!
エイリークさんが調理してくれるらしい。うんうん、揚げ物にしよう! 片栗粉つけて油にドボン! これだけ! あ、油の温度は百八十度くらい? 下味つけた方が美味しいけどまあこれで良し。
「へえ、なるほど。エールが欲しくなる味だ。ちょっと取ってくる」
エイリークさんが試食するとそんな感想を出してエールを取りに行った。オリビアさんは仕方ないわねって顔をしてる。まあ私が持ち込んだものだからね。
ピチピチタコの唐揚げあげてると音につられたのか客が入ってくる。あっという間に席が埋まった。
入って来た奴らはエイリークさんの食べてるものを見て同じものをと注文してくる。イレーヌさんがタコに触りたくないと言ってるのでエイリークさんが厨房に帰った。
それから私達も手伝いながら営業スタート。アディ君は主に裏方で頑張ってくれたし、パンドーロちゃんは物覚えが良いのでウルリカちゃんとの二枚看板だ。私? うん、邪魔にならないように色々買ってくるね!
みんなに店を任せてこっそり市場に舞い戻る。だってやることないんだもん。可愛さでは二枚看板に敵わないし、大人の色気はオリビアさんに太刀打ち出来ない。
ということで市場で買い出しだ。ええと、魚介類がメインだね。果物とか欲しいけど。あ、別大陸の果物とかあるの? なるほと。それは育ててみる必要あるかも。いや、気候的に無理かもだけど。
見てみたらバナナ、マンゴー、パイナップル、でかいスイカ。スイカは良いなあ。よし、とりあえず全部買って帰ろう。果物は生き物判定じゃないからアイテムボックスに入れられるしね。
ついでに魚も何匹か。私は捌けないのでお金払って捌いてもらった。いや、そういうのはやらせようよとか思うんだけど、どうもね。アイテムボックスに入れられないと詰んじゃうから。
ついでにいきの良さそうなのを何匹か見繕って桶に入れてもらった。よし、これでいいかな。転移で屋敷に戻る。
「アンヌ」
「はい、キュー様」
「これ、お土産。みんなで食べて」
「魚介類? 珍しいです。捌いたことないです」
「捌いた見本はあるから練習してみて。はい、これが見本ね」
見事に処理されたお魚も一緒に渡すとアンヌは「頑張る」と張り切ってくれた。コロンバちゃんも腕まくりしてたのできっとやる気なんだろう。
ついでにラヴィアのところにも顔を出して書類にハンコを押す。ゴンドザの街との通商関係の書類とかが多くあるみたい。まあ商業ギルドのトップが代わったから悪い話ではない。
グリッシーニちゃんの目から光が消え掛けてるのは気になったが、「大丈夫です。あれは甘えてるだけですから」という言葉で跳ね起きて頑張ります! と言ってくれた。いや、まだ光戻ってないよ? そ、そんなクビにするとかしないからね? ね?
アンヌが晩御飯食べていって欲しいと言ってきたが、残念ながらエイリークさんのところで食べなきゃなんだよね。みんな残してきたんで。あ、また持って帰るからその時は研鑽の成果を見せてね。
みんなと別れて再びアンダーゲートへ。ついでに酒屋で酒を買い宿屋に戻る。まだ絶賛営業中なんだよね。
「いらっしゃいませ、あっ、おかえりなさい」
「うん。ただいま。まだかかりそうだね」
「ごめんなさいね。なんか今日はみんな食べる量が多くて」
どうやらタコの唐揚げは好評らしい。私らの分残ってる? 残ってないか。再び市場に転移。魚屋が店じまいしてたので余ったやつを全部買わせてもらった。タコは二体いたよ。少し小さめだけど。
るんたった、と再度帰ってエイリークさんにタコを出したら嫌な顔をされた。というかあからさまに嫌な顔したのはイレーヌちゃんだけど。
一体はエイリークさんが、もう一体はイレーヌちゃんが処理することに。あ、塩は提供しました。もったいないとか言わない!
イレーヌちゃんはヌメヌメに拒否反応を示しながらも懸命にぬめり取りをしていた。やりながらうえーって顔してるからわかるよ。まあぬめりが取れてくるにつれて顔も穏やかになっていったけど。
ついでなんで醤油をどばー、日本酒をどばーっと。エイリークさん、なんでお酒見て物欲しそうな顔してるんですか? はい、揉んで。揉んで揉んで揉んで、揉んで!
馴染ませたら片栗粉つけて油で揚げる。よし、さっきのより下味ついて美味しいのが出来たよ。という訳でみんなで実食。エイリークさんとオリビアさんにはビールを出してあげた。発泡酒じゃなくてビールね。何が違うのか私には分かんないけど。ちゃんとキンキンに冷えてるから。
「こ、こりゃあ美味い! エールよりもタコに合うな!」
「本当に。こんなのがあったら売り上げ倍増どころじゃないわね!」
あー、とりあえずこれを一般の皆さんには出せないのでみんなで楽しみましょう。あ、私も含めて子どもたちにはこどもびぃる……じゃなくてオレンジジュースだよ! みんな美味しそうに飲んでる。




