EP25 奪った力、託された力、作られた力 4/5
カプトステーションの作戦室のモニターには、相変わらず「NO SIGNAL」の文字
キムがアルファステーションに連絡を取っているが、なかなか情報は貰えない
作戦室の前では、現場から戻った雷斗が腹部を気にしている
斧槍で防いだもののブルーのスーパーオーラ蹴りのダメージが腹部に残っている
ダメージを見せるわけにはいかないので、雷斗は背筋を伸ばし入室する
入室する雷斗を見て、雨宮は
「雷斗、腹大丈夫か?」
「大丈夫と言えば大丈夫だが…(なんで腹のダメージを知ってるんだ?)」
「整腸薬持ってるか?」
「整腸薬????」
会話が噛み合わない2人。マルティナはそれを見かねて
「市販薬でよければ部屋にあるから、おいで雷斗くん。キムくんアルファとU.K.の呼びかけをお願い。白くん並行して鵲を呼び出して」
マルティナはそう指示した後、雷斗を連れ作戦室を出る
「さて、ダメージを受けてるみたいだね。現地での情報、教えてくれるんだよね?」
戦闘があった森林より東のブリストル郊外、ブリストル空港までを繋ぐ道路にアンホ軍が規制線を張り、救急車両や消防車、そして民間企業の救助隊が待機している
規制線より内側にアンホの救助部隊や兵隊達が慌ただしく出入りしているが
「安全確認が出来ていません。近寄らないで下さい」
「街の近くで戦闘をするな」という声やアンホ兵に直接石を投げて抗議する住民もおり辺りは騒然としていた
ライオネルとローズィーは、ドローンバイクに乗り、その規制線のある場所まで来ていた
「自分はカプトに所属している者です。ブリストル空港まで行きたいのですが、可能ですか?」
アンホ兵に話しかけるも
「カプト!?」「ファルベが3体も現れたんだ。動物保護部隊のあんたらの出る幕じゃないよ」「見て分かるでしょ、現場レベルでの判断はしかねますよ」
などと相手にもされない
アンホによるジャミングもまだ続いているようで、ブリストル空港のカナタにも、ステーションのマルティナにも連絡がつかない
「セオリー通りだと、アンホとカプトは連携するべきなんだろうけどな」
ライオネルは言葉を漏らす
先日の中国方面のアンホの二極化とは違うが、イングランドのアンホも統率が取れている様には見えなかった
「副隊長、どうしました?」
ライオネルの表情を見て、ローズィーは心配そうな声で尋ねる
「アンホは、国の軍隊じゃないからな、こうやって戦闘になれば、問題も起きる。今まで年に数回現れる程度のキマイラを街外れで相手にしていた時とは状況は違って、エグゼは街で戦うだろ?アンホ兵は、板挟みになって可哀想だなって思ってさ」
ライオネルのその言葉を聞いて、ローズィーは複雑な表情をする
2人は、規制線を張っているアンホ、そしてそれと衝突している住民を見ながら群衆から距離を置く
幸いローズィーは私服で、今のライオネルはカプト隊員服、軍服ではあるがアンホの隊員が着ている迷彩服ではない、装備らしい装備もしていない為それがカプトの隊員服だと知らなければ目立つ物ではない
雑踏から離れれば一般人と同じに見える
「副隊長は、あのロボット兵器…どう思いましたか」
「あの着地の仕方…アレはスペースシップに搭載している疑似重力システムと同じシステムだろうな…ローズィーはアレにパイロットが乗っているかもしれないって言ってたな、根拠は?」
「…アレの動き、サイバー義肢と同じ技術だと思いました」
「なるほどな、機体も戦車のようでもあったが、今にして思えば、ステーションの船外活動用のロボットスーツ補助重機に似ている。あれもサイバー義肢の技術も使われているからか」
「はい」
ロボットスーツ補助重機とは
もともと介護用から発達した体の動きで自分の手が増えた様に使えるアームが付いている補助装置があった
これは画期的なシステムだったが、重力下では重すぎて人では支えられず、着るのではなく、下半身が固定された乗り物になり、補助重機と呼ばれる
補助重機は重機と人力との間の選択肢として使用される事が多い。力は人よりもあるが重機以下。上半身は人と同じ動きが出来るが、それもメリットとデメリットが出る為、地上では圧倒的に重機の方が使用数は多い。宇宙では重さが関係なく使用できる為、補助重機を宇宙服に取り付けたものをロボットスーツ補助重機と呼び、船外活動など宇宙空間での使用が行われていた
「大きさはアレの方がデカいが、補助重機や補助ロボットスーツを軍用に改造すれば、ああなるかもしれない。それに正直に言えば…あれの情報を外に出さない為の規制線であり、ジャミングだと俺は思っている…」
「どうして?」
「対キマイラ、対エグゼ用の軍用ロボットスーツの開発は極秘にするべきなんだよ…今回は国境を越えて活動する俺たちカプトがたまたま目撃しただけで、本来アンホU.K.方面軍が黙っていれば、外には出ない技術だ。モンスターが居なくなった後の世界で、アレを歩兵と戦車の間の選択肢に使う為にな」
「そんな…アレが」
ローズィーは、自分の下半身を見つめる
「この技術が、データが…人を殺す為の道具になるんですか!?」
「使いようって事さ。補助重機にもサイバー義肢のデータは使われているんだ。一般的には、補助重機の軍事利用と言った方がイメージに近いと思うぞ」
「そうですけど」
「サイバー義肢も補助重機も、もちろんエンジンは無い。あくまで人が動かす力を利用している。補助重機には駆動系を動かすバッテリーが積まれている程度だ。飛んで、動いて、レーザーライフルを撃てるアレは全くの別物と言っていい。ゲーム機と戦闘機にも同じ技術はあるだろ?サイバー義肢の技術が使われていても、ローズィーが人を殺す道具を育てているわけじゃない、安心しろ」




