EP3 ようこそ!!カプトイプシロンへ!! 1/2
「いきなりだけど、今日は皆の中から1名に、これからカプトの宇宙ステーションの社会科見学に来る日本の小学校の生徒さん達の案内役をやってもらいます」
昨日の「霊獣八咫烏及び正体不明の鳥人間《《4匹》》及びモンスター大量発生」の件、隊員達は「八咫烏の件」と略し、資料や報告書の作成に追われている中、午前の会議を終えて隊員室に戻り、席についたマルティナが、カナタ達5人に向かってそう言う
隊員室には、筋トレスペースや簡易的なキッチン、それと6人のデスクがあり、小隊と小隊で向かい合って並んでいる状態だ
マルティナの対面にライオネル
その次の列は、雷斗とローズィー
その次が白とカナタだ
白が手を挙げる
「私やってもいいですよ。子供好きですし」
「残念だけど、人には向き不向きがある。この膨大な資料と報告書と論文を白君のデスクワークで使えるスキル無しでは成り立たないのが、今の我々の現状だよ。白君には引き続き、この作業をお願いしたい」
マルティナは冷静に答えると、白は少ししゅんとし、また資料に目を向ける
その一方で、ライオネルは資料から目を背ける
「報告書はともかく、他のデスクワークは事務に任せればいいじゃないですか。せっかく居るんだから」
「ライオネル君、うちの事務員はオペレーター業務や電話対応などやってくれている民間の外部委託業者だという事を忘れないで欲しい、それに私達が作成した報告書をちゃんとデータ化して残してくれているのは、事務員さん達のおかげだよ」
マルティナが指摘すると、雷斗が淡々と資料作りをやりながら
「現場の報告は、現場にあたった俺達がやるのは当たり前でしょ」
と、続いて白が
「報告書作りがイヤなら、副隊長が社会科見学の案内役やればいいんですよ!!」
と提案するが
「白君、人には向き不向きがあるって言ったでしょ?ライオネル君の様な強面でガタイが良くて、熊と人のキマイラみたいな男性が、小学生の社会科見学の案内役に相応しいわけないだろう」
マルティナはさも当然の様に、平然と言う
「隊長、言葉を選んで下さい。コンプライアンスとか多様性って知ってますか?」
ライオネルは、俺も傷つくんですよと訴える様に言うが
「私はコンプライアンスと多様性を重視しているからこそ言っている。子供達がライオネル君を見てどう思うか、恐怖を感じるのではないか、カプトに対してトラウマを与えてしまうのではないかと心配なんだよ…それを事務仕事が苦手だからとか、大柄の強面でも案内役が出来ると示したいとかそういう理由で、こちらの一方的な言い分の押し付けで、子供たちや先生方に不快な思いをさせて良いと思っているのかな、ライオネル君」
「…いえ、もういいです」
ガクッとうなだれるライオネル
「副隊長は顔が怖いだけで、良い人だって知ってますから」
隣の席のローズィーがぽんっと肩を叩く
「ありがとうローズィー、今夜飲みに付き合ってくれるか?」
「…ヤダ」
またガクッとし、デスクにうずくまるライオネル。それを見て、フッと笑うマルティナは話を続ける
「さて、と言う事は雷斗君、ローズィー君、カナタ君が候補に残った訳だが」
「隊長は?自分は候補に入れないんですか?」
「カナタ君、良い質問だね。自慢じゃないが私は子供が好きだが、子供には好かれないんだよ」
自信満々に言い切るマルティナ
そんなマルティナを見ながら、ローズィーとカナタが小声で話す
「確かに美人だけど、クールと言うか怖いと言うか、怖いのに美人と言うか」
マルティナを見ながらカナタが言うとローズィーはハッとして
「…あれだ…夜の教会の女神の銅像みたいな…あんな穏やかで優しくて美しいのに怖い感じ」
二人は妙に納得する
「それに八咫烏の件で、霊獣を保護する事は努力目標になっているけど、もし霊獣とモンスターが交戦したら、もし霊獣とモンスターが融合したら…など、想定し対策するべきだと上申する意味のある報告書だ。私が熟読、熟考するべきだろう」
すると、雷斗が
「俺、やってもいいですよ。誰かがやらなきゃいけないんだから」
本人は何気なく言ってるだけだが、その美声とルックスと綺麗な黄色の瞳が、まるで少女漫画の空気感というか、キラキラした青春ドラマの1シーンにも見える
「隊長、雷斗の案内役は女児の性癖が歪むと思います」
「私もそう思います」
白が挙手発言すると、ローズィーも同意する
「広報としては、優秀だと思うが…2人の意見も一理あるな。そういう理由だ、雷斗君」
「了解」
「となると、カナタ君とローズィー君の…」
「私は辞退します!!」
ローズィーは勢いよく言う
それを見て、マルティナは何かを察し…
「そう言う事だ、カナタ君。頑張ってくれ」
マルティナは真っ直ぐカナタを見る
「俺の意思は?なんでローズィーは辞退を許されるんですか」
「カナタ君、女性を詮索するのは良くないな」
「いや、俺の意思を聞いてくれても」
「ローズィー君は、小学生くらいの子供の相手が出来ない深い理由があるんだ。分かってくれ」
マルティナの言葉を不信に思いながらローズィーを見ると、ローズィーが泣いているフリをしている
「納得いかないなぁ」
カナタがそう言うと、マルティナは立ち上がり、カナタに近づくと、肩をガシッと掴み
「カナタ君、人には向き不向きがあってな」
「それはさっき聞きました」
「いや、ここからが重要だ」
肩を掴んだまま、マルティナは目を見つめてくる
「人には向き不向きがある。しかし仕事と言うのは、向いていなくても、経験がなくても任される事がある、見なさい我々を」
バッと手を広げ、カナタの目線を皆に注目させる
「仕事を与える方は全体を見て、他の不適合者達と君を見比べて、君に任せる可能性もあるんだ。みんながやりたくない仕事を押し付けられたんじゃあないんだよ。経験がなくても、自信がなくても、他の不適合者に任せられない仕事が君に回ってきただけなんだ」
マルティナは力説する
「誰が不適合者だー」
「言葉を選べー」
と、皆はブーイングをする
そんなやり取りを見ながら、カナタはハァとため息をつき
「了解しました。俺がやりますから、詳細をお願いします」




