EP3 ようこそ!!カプトイプシロンへ!! 2/2
グリニッジ標準時 午後2:00
カプト本部メイン宇宙ステーションの見学を終えた小学生達がやってくる
月の修学旅行の一環で、選択肢にカプト見学がプログラムされていた
小学生は10人ほど、担当の女性の先生に連れられて、イプシロンステーションにやってきた
「みなさーん、注目です」
先生が言うと、生徒達は整列し注目する
「えー今日、皆さんにカプトの活動を説明してくれる。カナタ・マテラスさんです。拍手〜」
ワーッと拍手される中、カナタは一礼する
「カナタです。皆さん、何か疑問に思ったり、気になった事がある人は、遠慮しないで聞いて下さいね」
「はーい」
「カナタさんは、何でカプトに入ったんですか」
少年がハキハキと、子供特有のイントネーションで質問する
「私は、皆さんと同じ小学生の頃に祖父が買い与えてくれた動物図鑑で、動物の事が大好きになりました。動物も私達と同じ様に食事をするけど、お肉しか食べられない動物、草しか食べられない動物など、色んな動物がいる事を知りました。食物連鎖といって動物達や植物は「食べる」「食べられる」という関係で、地球上の生き物の生存を支える基本的な仕組みですね。それぞれの生き物が、悲しい思いをしない様に平和に暮らしていけたらと思いました。その為には生態系を壊してしまうモンスターから生き物を守る必要があると考え、このカプトに志願しました。みんな動物や植物、生き物は好きかな?」
と小学生達とコミュニケーションをとるカナタ
元気な生徒達、その中に1人気になる子供がいる。その子はアジア系でなく、白人の様な顔立ちの少女だ
格納庫を安全な位置から案内すると、男の子達はスペースシップに熱狂し、武器を整備する整備員達をキラキラした目で見たり
隊員室に案内すると、隊員一同は作業を一旦止め、子供達の話相手になる、女の子達は雷斗のイケメンぶりに熱狂し、やはりライオネルを見て泣いてしまう子もいたり
しかしその子だけは、ずっと下を向いているのだ
カナタがその少女を目で追っている事に、先生が気づく
「エイミアさん、先月まで外国に住んで居まして」
「あっ言葉が分からなかったですか!?」
「いえ、日本語は話せますし、理解は出来るんですけど、モンスター被害で、こちらに転校されて…その時にペットのオウムを亡くしたそうで」
カナタに思い当たる事があった、確かカプトアルファの担当区域の住宅地で地球世界政府軍と熊型キマイラと交戦。住人の避難は軍が率先してやったが、カプトの到着が遅れ、ペットの避難や回収が間に合わなかった
戦闘は激化し、街が焦土と化したほどだ
この件は、全カプトで情報が共有されたし、改善策も模索中だ
ただ地球世界政府軍も街を守れなかった為、その国に激しく非難されたと聞いている
少女が隊員室の隅に置いてある鳥籠に気づく
その中には、昨日保護したすっかり見た目はただのカラスになった八咫烏がいる
「…ジェミー」
エイミアはそう呟くと、泣き出してしまい、男の子は「またエイミアが泣いた〜」と囃し立て、数人の女の子がエイミアにハンカチを渡したり、撫でたりしている
「エイミアちゃん、このカラス、触ってみるかい?」
しゃがみ泣いているエイミアに顔の高さを合わせると、カナタは優しく言う
「カナタ君、それは…昨日まで野生だったカラスだよ」
「大丈夫です」
マルティナの心配をよそに、ローズィーに鳥籠を持ってきてもらう様に頼むカナタ
ローズィーは鳥籠を取ると、中の八咫烏がカナタ、ローズィー、ライオネルの3人しか聞こえない念を使って話す
『この子は何を泣いている?』
八咫烏の問いにカナタが同じく念を使う
『ペットのオウム…いや違うな。兄か姉か種族は違うが家族を亡くしたんだ。撫でさせてくれない?』
『もちろん』
八咫烏は承諾し、カナタが籠の出入り口を開けると、八咫烏は泣いているエイミアの肩に乗り、頬ずりをする
「ジェミー!?」
エイミアは顔を上げ、八咫烏を見ると、八咫烏はくちばしをカチカチと鳴らし、自分から鳥籠に戻る
「かわいいー」と口々にいう子供達、僕にもして欲しいとか、撫でさせてとか、ワイワイと騒ぎ始める
「あのカラスね。お兄さん達を助けてくれたんだ」
「えっ??」
エイミアがカナタを見上げる
「エイミアちゃんの大切な家族、助けられなくて、ごめんなさい」
カナタは深々とエイミアにお辞儀をする
「お兄さん達はまだまだ未熟で、動物達をモンスターから守りたくて戦っているのに、助けられなくて…逆に動物たちに助けられる事もよくあるんだ」
「うん」
「お兄さん達、もっと頑張るから、エイミアちゃん応援してくれるかな?」
「うん……わたし。わたしが生まれる前からジェミーがいて、いなくなって凄くさびしいの…でもね、世界のみんなもいっぱい大切な人を亡くして悲しいんだよってママが教えてくれて…わたしも、動物さんを守る人になりたくて、今日、ここに来たの。機械を触ってる人もすごくて、隊員さん達もカッコよくて…わたし、皆さんみたいな動物さんを守れる人になりたいです。ジェミーみたいな子がいなくならない世界にしたい」
そう訴えるエイミアの目は、涙がまだこぼれ落ちながらも真剣で、カナタもそれを見ている隊員達も、心が温まり、身が引き締まる思いだった
子供達は帰り、騒がしかったイプシロンステーションはいつもの【音と匂い】に戻っていた
またデスクワークに戻っている6人の隊員達
午前中とは打って変わって、真剣に取り組んでいる。一足先に資料をまとめ上げたマルティナはそんな様子を見ながら
「やはり適材適所だったね。カナタ君」
と、カナタを褒める
「カナタが子供の扱い上手いなんてね」
ローズィーは仕事の手を休めずに、カナタの案内役に感心する
「保護したカラスのおかげですよ」
「カナタ君、仕事って言うのは出来るから与えられるんじゃないんだ。最初は出来ない方が当たり前だし、与えられた仕事をどうやるかを見られているもんなんだよ。失敗するからやらない、出来ないからやれないじゃ話にならないし、何なら失敗してもいいんだ。結果がどうであれ経験を積んで次に活かせばいい。今日もカナタ君はよくやったよ…司令も喜んでたよ」
褒められたカナタは、照れを隠す様に頭を掻く
「司令に褒めて貰えるなんて、ありがたいです」
と、カナタは返すが
「いや、元はといえば、このバタバタは司令が今日の社会科見学を私達に伝え忘れたのが原因だから、褒めてもらっただけじゃ足りないと思うよ」
と、マルティナの発言に、一同が固まる
「昨日の作戦で頭が一杯で忘れていたってさ」
またワイワイと騒ぎ出す一同
これが彼らの日常でー
この日の資料と報告書の制作のお陰で、努力目標に留まっていた霊獣の発見や霊獣とモンスターが遭遇した時の対処などは、状況に応じての対応策が練られる事となった




