EP23 義足の少年と一角獣2/5
鵲は、ブリストル空港内の地球世界政府軍格納庫に格納されてる
輸送スペースシップであるSUNシリーズは、2階構造になっており、搭乗口から階段を上がると談話スペース、そのそばに仮眠スペースとシャワールームとトイレ、その先のコックピットの背部には銃火器の保管場所、そしてその1階部分となる下部の後部にドローンバイクなどの輸送庫がある
ローズィーはドローンバイクで、ブリストルのアシュトン・ゲート・スタジアム近くを通り、信号待ちをしていると、歩いている12歳くらいの少年が目につく。なぜ少年に目が止まったのか、それは歩き方だ。ぎこちない歩き方で、必死にバランスを取っており、少年の周りには、母親であろう女性がついている
バタ!
ローズィーが見ているその時、少年は倒れてしまい、母親が起こそうとするも、母親の手を払い、悔しそうにしている
「大丈夫ですか?」
ローズィーはバイクを止め、その少年と母親に声をかける
「ごめんなさい」
少年はそう言いながら、スタジアムを恨めしそうに見上げる
少年の服装にローズィーは見覚えがあった。ライオネルが読んでいるラグビー雑誌に載っていた…気がする
「ラグビー好きなの?」
ローズィーがそう言うと、少年の頬に涙がつたう
「なんで……」
少年は自分の右足を叩く、その右足の太ももよりも下は義足であり、ローズィーのサイボーグ化した足とは違い、一般的な外付けする作りだ
母親と一緒に少年を起き上がらせ、立たせると母親はローズィーに礼を言いながら
「ありがとうございます。半年前に事故で足を失いまして、今はリハビリを兼ねて散歩をしているんですが、どうしてもラグビーに戻りたいって言ってましてね」
「そうなんですね」
この時代の義肢は筋肉と連動するAIシートを使った義肢だ。少年が付けている外付けタイプの義足は、ローズィーのサイボーグ化した足の様な性能は無いが、現在の義肢よりも性能は良い
だから少年がつけている義足でも歩行には支障はないはずだ
「義足で歩くのも難しそうなのに、ラグビーなんて出来るわけないんですけど」
母親の言葉にローズィーは引っかかる
「アドル。体も大きくないのだから、ラグビーなんて危険なスポーツは辞めましょう。大人になったら良いサイバーレッグに変えて、その時に考えればいいじゃない」
サイバーレッグとは、サイボーグ化した義足で、同じようにサイボーグ化した義手は、サイバーアームという
「僕は今、ラグビーをやりたいんだ。みんなと一緒に」
アドルと呼ばれた少年は、母親にそう言うと、またぎこちなく歩き始める
「病院まで、今日は歩いていく」
「はいはい、好きにしなさい」
やれやれと、その行動は無駄だと言わんばかりの母親の態度に、ローズィーはムッとする
ただ他所様の家の話だ。これ以上ツッコんで話しても、余計なお世話になってしまう
でもローズィーは一言だけ
「アドル君の努力する姿勢は、素晴らしいと思います。応援してあげて下さい」
そう言いローズィーはドローンバイクに乗り去る
「足が無い人の気持ちなんて分からないのに…アドル、気にしないでいいわ。いつでも車で送りますからね」
母はそう言うが、アドルはローズィーの言葉が耳に残った
ブリストルは古い建物が所々に残っている町並みと大きな大学施設が目に止まる
その大学はロボット工学部が盛んであり、ロボット工学から派生した、医療用サイバネティクスが発展したのだ
ローズィーの下半身のメンテナンスを行なっている【ブリストル・サイバネティクス・アフィリエイテッド・ホスピタル】は、その医療用サイバネティクスの先端技術と軍用ロボット技術開発も行なっており、それを民間の医療としても提供している
ローズィーはまず主治医の問診を受け、意識との脚部の連動などの数値を確認したり、去年とのデータ比較など簡単な動作確認をする
その後、アタッチメントの部分から人工肢を外す。ローズィーの場合、大腿部から臀部、つまり太ももの付け根から、お尻の下がアタッチメント部分になっている
ローズィーがホワドに襲われ、両足の太ももの付け根を切り裂かれたのだが、鎌鼬の能力の特性により傷口からは出血はなかった
鎌鼬は三位一体で、最初の一匹目が人を転ばせ、二匹目が斬りつけ、三匹目が薬を塗り出血を無くすと言われている妖怪で、ホワドは一匹でその全てを行なっていると考えられていた
切断面が綺麗だった事が幸いし、大腿骨からサイボーグ化する事が比較的容易だった。とはいえ、前にも話した通り、骨盤から改造する為、消化器や排泄機能など生命活動を優先した結果、女性としての機能は失われている
簡単にそのビジュアルを言うのなら、プラモデルや人形の股関節を思い起こしてくれればいい




