EP22 いつか帰る場所4/5
マルティナは、夢を見ていた
自室に戻り、少しでも報告書用の資料をまとめようとデスクに向かうのだが、思考を巡らせ、目を閉じると、いつの間にかまどろみに落ちている
今回のエルドキナ戦、カプトはこれで良かったのか?
人間として、カプトの隊長として…やれる事はやった
しかし自分の出来る政治的なアプローチは、あくまで地球世界政府内の軍属としてだけだ。世界各国の政府を動かす事は、今の立場では出来ない
この20年、モンスター災害の規模が縮小していく度に、紛争は各地で増えていった。それもまたモンスター災害が無くなれば、国の戦争が活発化するのではないかという懸念材料にも繋がっている
軍属の家系の第四子として生まれ、初めての女子。上の兄たちは皆、米兵として各国に派兵していた
兄たちは、マルティナが18歳になるまでに派兵された先で戦死していた
家族は、父は、それを名誉だと言った
死ぬことが名誉な事?
「そんなわけあるはずないだろ!!私は生きていて欲しかった!!!お兄ちゃんに死んで欲しくなかった!!!!」
雨が降る墓地で、兄の棺が墓に納められる中、父に浴びせるその言葉は、平手打ちとして、マルティナに返される
「兄の死を愚弄するな」
「愚弄なんてしてない、お兄ちゃん達を殺したのは、パパだ!!」
マルティナはまた平手打ちを喰らう
「お前の兄たちは、国の為、世界の為に死んだんだ」
「お兄ちゃん達が死んでも、何も変わってない…何も変わってないじゃない…世界は平和になんてなってない。パパの教育に殺されたんだ!!」
「子供の様なことを言うんじゃない!!」
「子供でいい!!同じ生命の使い方なら、私の命で世界を救ってみせる。みんなが生きて、帰れる世界にしてやる」
「お前は私の娘ではない!!」
思い出のフラッシュバックか、当時の夢を見ているのか
ふらふらになりながら、訓練に喰らいつき
戦場で傷つき
多くの仲間の死体に埋もれるマルティナ
走馬灯の様に色々な場面を思い出す
「お前の覚悟は、そんなものか」
父親の声が聞こえる
多くの犠牲を出しながら、マルティナは瀕死のホワドに近づく
「アムカを止められる者はいない、世界は終わる!!ならアムカに従うのが、自然の摂理だろ!!人間!!!!」
「神にも等しいアナタ達がこの世界を見限ってどうする」
「!!」
「その神の様な力があるのなら、私にその力をくれよ!同じ世界の仲間を殺す為に力を使うなら、その力を救う為に使わせてよ!!」
「…ならば、私の力を持ってでも、この世界を救えないと絶望しろ。アムカには太刀打ち出来ない、次元の違う悪魔だと思い知れ」
ホワドはドロドロになると、マルティナの口の中に飛び込み…マルティナはヴァルバリキアに変化している
人間ではなくなってしまった
もう自分は人間ではない
目の前には、同じく人間ではなくなってしまった未成年の男女がいる
この子達を守りたい
この子達は、世界を変えるほどの力を持っている
この子達を利用している
心まで、人間じゃなくなってしまったのか
ああっ
モンスターが襲ってくる
持っているショットガンを放つが、一匹仕留めきれず、モンスターの爪がマルティナに突き刺さろうとする
「大丈夫か、人間」
自分を包み込む優しい緑色の光
ファルベグリーンが左腕に光のシールドを展開し、マルティナを抱きしめる
強く太い腕
最後に守るべき対象だと思われたのは、何年前だろう
力強い腕の感触を思い出す
あぁ
まだ私は、守ってもらえる存在なのだろうか
人間なのだろうか
「ん…はぁ」
目を開けると、涙がこぼれ落ちる
「はぁ〜寝ちゃってた…か」
夢の内容を覚えているわけではないが、マルティナは流れる涙の理由は、起きた時にあくびでもしたのだろうと、気にもしていない、ただ嫌な夢を見たような気もするが、少し嬉しかった様な気もする
時計を見ると、AM6時。デスクに突っ伏し変な体勢で寝ていたので、体が軋む
「…ちゃんと寝ようかな」
マルティナはベッドに移動すると、横になり目を閉じる




