EP22 いつか帰る場所3/5
現地時間、24日午前8時
明け方まで、アジア連合の指揮のもと引き継ぎ作業を行い、アンホに現場を託すと、スペースシップ白鷺と鵲は、静止軌道衛星上にあるカプトステーションに戻る事になる
三亜市から出立する為、鵲に入るローズィーは叫ぶ
「なんだよ!!この散らかりようは!!!!」
入口に立ち尽くすローズィーに対し、ライオネルは
「いつも通り…だろ?」
と言ってはいるが、表情は硬い
カナタは、そそくさと片付けながら、言葉はゆっくりと
「うーん、確かにいつもよりは少し散らかっているかも…」
「いや、少しじゃないから…白鷺はあんなに綺麗だったのに…」
同じく白鷺に戻る雷斗は、入口に入ると
「…」
言葉を無くす
その様子を見て、白は
「どうしたの?」
「いや…少し散らかっているくらいが、平穏無事ってあるかもな…」
「なんの話?」
「どちらか1つが良い悪いって対立よりさ」
それを聞いてマルティナは
「君がそう言うとは、珍しいね」
「今回は、世界も白鷺と鵲みたいなもんだなって思ったんだよ。どちらかが居心地の良い世界を作ると、別の世界を否定する事になる。隊長が言う戦争が無く、均衡を保つ世界って…難しいなってな」
「君はいつも、バーメアを取り戻せれば良いって言ってたのに、何があったのかな」
「別に…それは変わんねぇよ。ただ整っている白鷺も良いが、鵲も居心地は悪くなかったなってさ」
雷斗の言葉に、マルティナも白も頭に?マークを浮かべる
その頃、カプトステーション
グリニッジ標準時、24日午前0時31分
隊員室には事務でオペレーターであるキムと、同じく事務の経理である山田、そして整備員大岡がおり、焦っていた
「どうします?予定より4時間早く向こうを立つ事になるみたいです」
大岡は手に大きな星や雪の結晶を象った装飾品を両手に抱え、焦って声が裏返っている
「そろそろ向こうを立つって事だね。1時間半…さすがに我々だけでは…」
山田は、電飾の並んだケーブルを部屋のいたる所に配線しながら、そう言うと、キムが
「そもそもこれを提案した副隊長はいないし、雨宮はどこに行ったの」
っと怒りながらも、椅子に乗り高い部分にベルの装飾を貼り付けている作業の手を止めない
3人は隊員室にクリスマスの飾り付けをしているのだ
「雨宮さんは、小隊と同じ時間で動いてますから、起きていると思いますけど…」
バンっと隊員室の扉が開くと、そこには雨宮、そしてその後ろにアサクラ、ヨウマオなど小隊と同じ時間で動いている整備員が、まるで戦隊ヒーローの様なポーズで並んでいる
「えっ何!?」
キムがひたいに青筋を立てながら聞く
すると、雨宮が
「フッ…ヒーローの手を借りたいだろうと思ってな!!駆けつけたぜ☆」
サムズアップで格好つける雨宮
すると、大岡の持っていた星の形の装飾を、キムは力任せに雨宮に投げつける
星は雨宮のひたいに突き刺さり、ぴゅーっと血が噴き出し倒れる
「お前が言い出したんだろ!!何が駆けつけたぜ☆だーーーーーーーー!!!!」
大岡が雨宮のひたいに大きな絆創膏を貼ると、雨宮は起き上がり
「俺はクリスマスやりたいなって、副隊長に言っただけだぞ、そしたら妙にノリ気でさ、俺も引くくらい」
「変態のお前が人様の行動に引くなーーーーー!!!!」
今度は山田の持っていた電飾ケーブルを、投げ縄のように回し、投げると雨宮をあれよあれよと縛り上げる
「…それはそう…だけど、さすがにヒドイ…」
大岡から見ても、雨宮は可哀想な状態になっていく
「黙って手伝え、早くしろ!!」
ビシバシと整備員をこき使い始めるキム
「いやーカプトの女性陣は、みんな強いよねぇ」
山田は、ホホホっと笑いながら、作業を再開する
「待て!」
電飾ケーブルに縛られたままの雨宮がそう言うと、整備員はパッと作業を止め、雨宮に注目する
「悪いがキム、それじゃあダメだ…アサクラ、隊員室のコンセントの数じゃ口が足りない。各コンセントで使用している機器のアンペアを確認し、必要であれば別の部屋から延長、または配電盤から直接配線。ヨウマオは整備室から延長タップとコード、6フィートステップラダー(6尺脚立)を持ってこい、椅子に乗るのは危ない、2脚あるとありがたい。ノエル、北条はそこの大きな箱の中にツリーが入っているはずだ、組み立てをよろしく。ローラン、大岡、お前達はー」
雨宮はバシバシと整備員に指示を出すと、整備員達は連携を取り、次々と作業を進める
事務の2人はその様にびっくりして、驚愕している
「…凄い」
「整備班の底力をみた様な気がするわ」
三亜市の出発が少し遅れたカプト隊員を乗せる2機のスペースシップは、グリニッジ標準時、午前3時30分頃にカプトステーションに戻り、格納庫に収容される
スペースシップ白鷺と鵲を隊員達と同じ時間軸で動いている整備員、主任雨宮、整備長フブキが迎える
「おかえりなさい。ご苦労さまです」
フブキが敬礼すると降機したマルティナは、ため息交じりに報告をする
「作戦通り、無事にエルドキナを討伐し、海南島の禁足地は解放…したけど」
「アジア連合ですか」
フブキも事前情報で、アジア連合の動きを懸念していた
「えぇ、こちらとしては結果も成果も変わらないけど、元イプシロン地区担当としては、あの状況は…」
「仕方がないです…あとは組織と国家間の問題だ。俺たちに出来る事は少ないさ」
「アンホはどうなっているか、タン中将に連絡してみるつもりですよ」
2人が話している横で、雨宮が何やら手をバタつかせ、マルティナの後ろにいるカナタ達にブロックサインを送っている
ジュンビハ、8ワリ、オワッテル
と言っているが、その姿がバレバレで異様だ
「何…あれ」
白が、嫌そうにジトッとした目でそれを見ている
「無視しろ…」
ライオネル、カナタ達5人は雨宮を見ない様にすると、雨宮の動きが更に激しくなる
一所懸命にブロックサインを送る雨宮を、マルティナは黙って見ている
「雨宮」
フブキが冷たく抑揚のない言い方で、雨宮を呼ぶと、雨宮はサインを止め、ゆっくりと体勢を戻し
「なんでもないです」
と、フブキの後ろに下がる
それを見届けマルティナは皆に指示を出す
「とりあえず時差もあるから、隊員は正午まで自由行動、いつも通り整備の邪魔にならない様に、自室待機が原則だよ。朝食がいる人は部屋に戻る前に食堂に申請だね。集合は昼食済み、13時に隊員室とする」
「了解(一同)」
「あっあの隊長、隊長はこれから予定は?」
ライオネルが何故か恐る恐る尋ねる
「現地で仮眠して、まだ眠たくはないから少し資料をまとめようかなって思ってるけど?何か頼み事かな?」
「いえ…その」
するとフブキが
「隊長ちゃんと寝て下さい。隊員室のサーバーの点検もするので、隊員室は使用を控えて下さい。13時までには終わらせます」
「そんな予定あったっけ?」
「…ごめんなさい、うちの奴らがちょっと」
「しょうがないね」
マルティナからは見えていないが、カプト隊員、整備員が羨望の眼差しで、フブキを見ている
それにフブキも気づき、マルティナに見えない様に、サムズアップを見せる




