EP21 対エルドキナ!!毒霧の中の死闘2/4
南側、大東海側に上陸しているマルティナとローズィー。2人もカナタ達と同じ防護服を着ている
「さぁ、エルドキナはどちらに喰い付くかな」
マルティナはヘルメットのバイザーに地図を表示させ、カナタ雷斗班、ライオネル白班の位置を確認する
2人は、マシンガンを構え、徐々に北へ移動する
「…おかしい」
マルティナは立ち止まり、ローズィーを止める
ローズィーは不安そうな顔で、質問をする
「どうしたんです」
「静かすぎる…この狭い隔離区画で、エルドキナに誰も遭遇しないなんて…相当確率は低いはず」
「でも、私たちに毒弾が飛んできていないし、どこも戦闘が起こってないですし、偶然そうなってるんじゃ?」
「いや…何も気配を感じない…」
マルティナは、鎌鼬のホワドの力を受け継いでいる。変身していなくても感知能力は一般の人間よりも高く鋭敏だ
「確かに」
ローズィーもそう答える。ローズィーも八咫烏の力を継いでいる、同じく感知能力は高い
しかしマルティナは《《一般の人間として》》ローズィーがそう感じていないのは当たり前だと思っているので、それに疑問を思う事は無い
「もしかしたら、カナタ雷斗班と合流した方が良いかもしれない」
「なぜです?」
「エルドキナは臆病だ。臆病だから探し出して駆除が必要だとしていた…でも、捕食者として襲うなら、遠距離からの毒弾で攻撃はしないでしょ?」
「確かに…」
「そしてこちらは、全くエルドキナを感じない…狙いは男性陣かもしれない」
ピンっと張り詰める空気
「カナタ」
「あぁ、雷斗も感じたか?」
「毒弾ではなく」
「直接、俺達を食べにきた…みたいだな」
廃墟が並ぶリゾート地のビル群の中、ズルリズルリと、這う音が聞こえる
それは建物の中を這い回っているようである
『食事が向こうからやってきた』
頭の中に直接声が聞こえる
「なんだこれ!?」
「テレパシーか」
「…エルドキナが人語を話すって、こういう事なのか」
カナタは、どこか嬉しそうだ
それを見ながら雷斗は
「感心してる場合か…」
「なるほど、確かにエルドキナと知らずに、森の中で突然この声が頭に響いて来たら…最悪だ…だからエキドナとルドラを合わせてエルドキナだったんだ」
「ルとドしか要素ないが…ルドラ、叫ぶ者って意味があるんだったな。しかしカナタ、直接頭に響いてくるから、距離も方角も分かんねぇぞ」
頭の中に直接響く、エルドキナと思われる声、「餌が来た」「どう殺そうか」「毒を注入するか、散布するか」など物騒な言葉を投げ掛けてくる
「くっ気持ちわりい」
完全にその声に参っている雷斗
しかしカナタには、エルドキナの潜伏している方向と距離を掴めていた、それは八咫烏の力を受け継いでいるからだ
雷斗には分からない。雷斗が八咫烏から奪った力の中には、この感知能力は無いのだ
「なんとなく、行動は予測が出来る」
カナタはそう嘘をつくと、マシンガンを前方の廃墟ビルの3階部分に乱射する
乱射された銃弾は着弾すると、コンクリートの壁を撒き散らし、その塵は砂埃のように巻き上がる
『ギャーーーー』
甲高い声が2人の頭に響く。めまいがする様な声だ
「くぅ…って事は、当たったのか!?」
雷斗が爆煙が舞う廃墟ビルを見ていると、大蛇が飛び出してくる
「デカい、30mはあるぞ!!」
雷斗が飛び出してきた大蛇をビルの高さなどから瞬時に目測する。報告よりも大きい
3階から飛び出したかと思うと、着地してすぐに別の廃墟ビルの裏手へ逃げる、すると辺りが黄色のガスで覆われる、毒霧だ
「毒、やっぱりあれがエルドキナなんだ」
カナタは先程の大蛇がエルドキナだと確信する
『いきなり殺そうとするなんて、野蛮な人間め!!!』
エルドキナの叫びが絶えず頭の中に響く
雷斗は、響く言葉を振り払うように、頭を振る
「ちくしょー、不快な声だ」
「想定より大きい、あれじゃ白の狙撃じゃ表皮を貫通しないかもしれない」
大きいと言うことは、それだけ表皮が厚い可能性がある。想定している狙撃距離では、表皮を貫通しないかもしれない
「白にその事を伝える術はないぞ。無線は使えない」
モンスター発生時の特殊磁場による通信障害は、この隔離区画では常に発生している
エルドキナは、この毒霧を森の中や林、この三亜市の廃墟の様な入り組んだ場所、毒が霧散しない状況で使用し、逃げや狩りを有利にしていた
そもそもこの毒弾の発射位置が初見殺しなのだ
エルドキナの基礎となったヤマカガシは、毒牙の他に首の背部には頸腺と呼ばれる毒を分泌する腺を持っており、これは敵に攻撃された際に毒を噴射する事が出来る。その毒はハブやマムシより強力なのだ
カナタがエルドキナは、ヤマカガシの仲間のキマイラ化ではないかと言ったのは、その生態を知っていたからであり、この戦闘もその事を知らなければ、頭が向いていない背部からの毒液に殺られていた可能性もある
毒霧の中は防護服の厚いバイザーで視界が悪く1m先も見えない。呼吸も装備されているマスクでは3分しか保たない
すぐに範囲外に退避する2人、しかしそこに毒弾が飛んで来ると、毒は地面に着弾すると拡散、霧状になる。逃げれば逃げる程に毒の範囲が広がっていく
「これじゃ、ずっと毒の中にいるのと変わらねぇ」
動き回る状態で、息が上がると、3分も保たないかもしれない。たまにある毒霧と毒霧の間で深呼吸し、次の毒霧に入り、移動するが、建物や木々など障害物もあり、2人はうまく逃げる事が出来ない、近くにいる事はわかるが、連携がとれず、個々に動く事しか出来ないのだ
たまらず毒弾が飛んできた方向にマシンガンを撃つ雷斗
『どこを狙っている、我はそんな場所にはいない…貴様の方が勘が悪いな、貴様から頂くか』
「…!!?」
雷斗はハッとして振り返る
目の前に広がる虚空、それはエルドキナの口の中であり、顔の真横にある牙から、毒液が滴り落ちる
丸呑みされるか、毒牙にやられるか
変身し、ブリッツになれば簡単に倒せる相手だが、この毒の霧の中、1m先にカナタがいるかもしれない
それにマルティナが言っていた、《《人間として》》任務を全うしなければならないという条件から外れてしまう。カプトの存在意義が失われてしまっては、エグゼとしての活動に支障が出る…それはダメだ




