EP20 カプトとして、人間として6/6
その頃、雷斗は唖然としていた
「なんなんだ」
脱ぎっぱなしの隊員服、まるで高校生の部室の様な乱雑とした部屋。シャワーホースは床に置いてあり、会議の前に使ったのであろう、水滴が滴り落ちている。トイレは、用を足す為だけの場所という感じであり、殺風景である
床に落ちていた服をバサバサッと振りさばき、何事もなかった様に、椅子にかけるライオネル
「まーくつろいでくれよ」
「まだ来てそんな経ってないのに、散らかりすぎでしょ」
「雷斗、何を言ってる整理整頓は軍人の基礎だぞ」
「その言葉、そのまま返します」
「ガハハ、貴重な男だけの空間だからな。たまには良いだろ。気を使わなくても」
ステーションでも、スペースシップでも男女混合での共同生活、確かにライオネルが言う様に貴重な空間ではあるが…
「おい、カナタも副隊長になんか言えよ」
雷斗がカナタを呼ぶと、パンイチのカナタが奥から顔を出す
「いいだろ、たまには」
「はぁ〜、お前らって本当に」
雷斗は観念し、荷物を降ろすと、椅子に腰掛ける
すると雷斗は、ジッとカナタをみる。その眼光は鋭く、カナタの肌に突き刺さるようだ
「なーカナタ。お前、白の事どうしたいんだ?」
雷斗の突然の質問に、カナタは思わず硬直する
「どうって!?」
カナタは、その質問の意図を測る
もし叶うなら、将来、一緒に生きたい
そう思った時、江ノ島での白の発言を思い出す
「もし、私がいなくなっても、悲しまないでね」
「カプトは辞めないよ。もちろん死ぬつもりもない。でも危険な任務があるじゃない?私たちはいつ死に別れてしまうか…やっぱり分からないし、お互い生きていても、離れる日がいつか…来ると思うの…たぶん私はクラゲと同じ、死ねば身体も残らないから」
「恋人になって欲しいとか、そういう事じゃないの…私は…ダメなんだよ」
「私はいつかカナタと離れてしまう。絶対の必然なの…その時が来た時、カナタに悲しんで欲しくないの…大好きだから」
白は、何かを隠している。いつも明るくしている白だが、時折、深い悲しみを背負った表情をしている事がある事を、カナタは知っている
「白ってさ、たまに悲しそうな表情するよな、雷斗はその理由を知ってるのか?」
「すぐ質問を質問で返すよな…」
雷斗はそう言うと、少し間をおき
「白は、6年前家族で交通事故に遭って、それより前の記憶が無いらしい…」
それを聞いて、ライオネルは
「隊長も言ってたな。スカウト時に聞いたらしいが」
それにショックを受けているのは、カナタだ
「俺は…知らなかった」
「昔は早く記憶を取り戻したがってた…けどな、ここに来てからは、記憶が戻って別の自分になるのを怖がっている」
「そうなんだ…」
「それこそ男同士の時にしか聞けねーからな。カナタ、白をどうしたい。一線引いていないと、辛いのはお前かもしれないんだぞ」
そういう雷斗の胸はざわつく
嘘をついている
俺は早くあいつを取り戻したい
カナタは関係ない
一線引いて、白との距離をあけて、遠ざけているのは、自分だ
「なぁ、カナタ」
カナタは、じっと考える
脳裏には、白の笑顔や騒いでいる時の表情、色んな白の事を思う
「想いが離れない様に、努力するさ。それにまずはこの任務で、白を守り、狙撃を成功させ、生きて帰る、俺だけじゃなくて、全員な。まずは生きて、生きて、その時、白が、皆がそばにいてくれたら、俺は満足だよ」
笑顔を作るカナタ
それを見て、フッと笑う雷斗
「叶えばいいな」
雷斗はそう言うが、カナタはそれは何処となく、叶わぬ想いに対して言ってる様な、拒絶の様な気がしてしまう




