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戦闘動物保護部隊CAPUt!!〜愛しい駆除対象の英雄たち〜  作者: 柴犬乃ぐんて
第2部【異世界転移は、悪夢の始まり】
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73/102

EP20 カプトとして、人間として3/6

中国海南島三亜市、現在地球世界政府では、イプシロン地区第303地区に区分けされている。太平洋大災害での津波被害も海底隆起もあり、「東洋のハワイ」と言われ、人気のリゾート地で観光産業も盛んだったこの地も、今では木々が高層ビルやリゾートホテルの廃墟を飲み込んでしまっている

 なぜ復興がされなかったか?

理由は3つある。1つは先も説明した様に、中国が地球世界政府の加盟国ではない事、2つ目は大災害初期から海南島にある中国人民解放軍海軍が駐留しており、外国の支援は断られていた事、そして3つ目にして最大の理由が


大蛇エルドキナが占領した事だ


先日、カナタが提唱した「キマイラの五界説」


モンスターと地球上の生物が融合し、基となった生物の能力で戦う『通常キマイラ』(例、ガルイラ)


伝説上の生き物『霊獣』(例、八咫烏、ビックフッド、鎌鼬)


モンスターと霊獣が融合し霊獣の能力を使って戦う『霊獣キマイラ』(例、ファルベカラーズ、神音《カノン》)


モンスターと霊獣が融合しているが、理性無くただ暴れ戦う『暴走霊獣キマイラ』(例、ギュウガ)


通常キマイラ、霊獣キマイラ、どちらかに限らず魔法陣の能力を使う『魔法型キマイラ』(例、ファルベブリッツ、ヴァルバリキア、オルトロ)


大蛇エルドキナは、見た目はモンスター特有の触手が存在しない20mを超える大蛇。人知を超えた特別な能力は無く、魔法陣で攻撃もしないし、理性はあり、知性があり、人の言葉を操る事から『通常キマイラ』『霊獣』のどちらかと思われる

 エルドキナがこれまでどの勢力にも倒されなかったのは、広範囲に毒霧を吐くエルドキナに近づくことが出来ず、感知能力が高く、1km離れた敵を察知し、ミサイルやドローンによる遠距離攻撃も、察知された時点で毒を弾丸の様に撃ち出す事で撃ち落とされてしまう、一度攻撃を避けられると、毒の弾丸で毒を周囲に散布されてしまうので、エルドキナの正確な位置がわからなくなってしまう


1km以上離れた場所から、なるべく小さな音で、一撃で仕留める攻撃をする必要があった


エルドキナ討伐作戦は、白の狙撃に懸かっている



衛星軌道上、アンホ・イプシロンステーションから発進するスペースシップ、その中にマルティナと、中国方面部隊長ヴァン・リー、その他数人のイプシロン方面の兵が搭乗している


「貴様のところの隊員が提唱した『キマイラの五界説』。先の報告会議からあまり変わってない様に見えるが?」


作戦書に目を通しているヴァンは、近くに座るマルティナに、意地悪く言う


「改めて、考えをまとめた物を提出させただけですけど、政府のお偉方は気に入ったみたいですよ」

「将軍連中の入れ知恵だろ、特にタン・フェイフォン中将のな」

「プレゼンしてもらったのは、確かですけどね、決めたのは上ですよ」


あくまでも自分の意志ではなく、上層部が決定した事だと言うマルティナに、ヴァンは苛立つ


「…この際、本心を聞かせろ。兵たちの前でな」

「あなたが本心を語ってくれるのなら、いくらでも」

「口の減らないやつだ」

「お互い様でしょ」


ヴァンは、マルティナにそう言われると、席を立ち、マルティナの前の席に移動する


「何年かかるかわからないが、カプトがこのまま世界中の禁足地のキマイラを駆除していけば、いつかキマイラの脅威は不運な事故並の出来事に変わるだろう」

「いけない事ですか?」

「人類にとってはそれがいい。しかし地球世界政府が存続する為には、キマイラやモンスターの脅威があった方がいいと考える人間もいる。特に利権を握る人間や俺達みたいな軍人はな、稼ぐ術が無くなってしまう」

「…それについては、同意ですかね」


確かにそれはそうだ。地球世界政府がなくなってしまっては、経済形態は変わるだろうし、多くの失業者を生む事は確かだ


「お前はどっちなんだ」

「?」

「新たな平和を望んで世界の秩序を壊すか。秩序を守る為に戦いを選ぶか」

「それって、どっちも同じなのでは?」

「そう思うか?」

「えぇ、秩序なんて、結局個々の価値観ですから、正義と悪が表裏一体であり、ものの見方で変わる事と同じでしょ」

「ならば俺とお前、目的は同じだと思うが?」

「どういう意味ですか」

「モンスター災害から人類の為だけに動いてきた実績があるアンホが、このまま軍事力を維持し、国家間の戦争に介入出来る組織になれば、本当の平和が来るのだぞ、国家を超えた人類の為の軍隊が作れるかもしれないんだ。秩序を守り、平和を維持する為に、それを壊す奴らに唯一立ち向かえる軍隊になりえるんだ。モントゴメリー派閥のタン中将はなぜそれを理解しない」

「目的が同じであるもんか!!私たちは命を守る為に戦っている!!カプトは命を守る為の部隊だ!!たとえ武力を使っても命を守る為だ。理想を手に入れる為に、理想を押し付ける為に、誰かの理念や命を殺す部隊ではない!!!私は私の部隊を人殺しの道具にするつもりはない…特に私の部隊は、動物であれ、人間であれ、モンスターであれ、生ある物の命を守る為の部隊だ」

「聞き捨てならんな、キマイラの駆除はお前達の仕事だろ」

「私は心積もりの話をしている。任務は任務だ…今は命を守る為に、命の選別をするしかないと…思っている」

「気持ちだけで一体何が守れる、命の選別をするだと?人間は神じゃない…お前は傲慢だ…」

「ええ…自分でもそう思います」

「さすがは戦乙女《ワルキューレ》だな」


戦乙女《ワルキューレ》、北欧神話において、戦場で死ぬ者と生き残る者を選別する者。古ノルド語で『死せる英雄を選ぶ者』という意味がある


「大気圏に突入します。席に戻り、シートベルトで体の固定をお願いします」


スペースシップの操縦士がそう言うと、ヴァンはマルティナを睨みつけながら、元の席に戻る


そうマルティナの目的は、命を守る事だ

そして目的は同じだと言ってくれるライオネルの目的も、命を守る事だと信じている


例え、方法が違っても…だ


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