EP20 カプトとして、人間として2/6
マルティナは、隊員室の自席で、ふーっと長いため息をつく。隊員室にはマルティナ以外は誰もいない
ガチャっと音を立てて、扉が開くと大きな箱が揺れながら入ってくる。箱が揺れ、持っている人の目が見える、大岡ミオだ
「あっ」
大岡とマルティナの目が合う
「失礼…します」
そこに大岡が、そう言いながら入室してくる
その箱は一人で持てないほどの大きさではないが、視界が悪く前があまり見えていない様でふらついている
マルティナは席を立ち、大岡を手伝い、トレーニングマシンのそばに置く。箱に宛先などは書かれていない
「これは?」
マルティナが聞くと、大岡は少し間をおき
「…ライオネル副隊長宛の荷物です」
何故か白々しい態度の大岡に、マルティナは不信な表情を隠せない
ライオネルがなにか…自分の知らないところで、動いている事があるのか…
ライオネルがもし、地球世界政府の利権を得ようとしている勢力の下で働いているとしたら…
私を裏切っているとしたら
そう思うと、マルティナの胸には小さなトゲが刺さった様な痛みを覚える
『目的は同じはずです』
ライオネルの言葉を思い出す
そう目的は同じはずだ…方法は違っても…
今まで一緒にやってきたライオネルを信じなくてどうする…
誰かの気持ちを裏切って、目的を達成しようとしているのは、《《私も同じ》》じゃないか
「またお酒かな。隊員室で預かる。で良いのかな?」
マルティナは努めて明るい口調で言うと、大岡は何やらあたふたしながら
「そうですね。でも絶対に開けないでくれって副隊長から言付けられてまして」
「へー…そうなんだ」
何か少し違和感のある空気が流れる
すると大岡が取り繕うように話す
「隊長はなぜ、こちらに?」
今日は12月22日。23日の中国海南島のエルドキナ討伐作戦の為に今朝、カプト隊員達はスペースシップ白鷺と鵲にそれぞれ搭乗して出立したはずだった
「出発前に急遽会議が入る事になってね。アンホのイプシロンステーションで会議に参加して、終わったらそのままアンホのイプシロン隊に送ってもらう事になったんだよ」
「そうだったんですね」
また妙な間と違和感のある空気が流れる
「あっ私は…これで…」
何度もお辞儀をしながら、部屋を出ていく大岡
「……」
マルティナは、荷物を見る
「絶対開けるな…か」
中国、海南島南部の国際空港跡地に駐機しているスペースシップ白鷺と鵲
中国は国際連合常任理事国であるが、地球世界政府の加盟国ではない、だから軍の空港など施設は使えない。しかし国としては、安全保障理事会の決議であるカプトの派遣には対応しなければならない。民間の空港に駐機は認め、エルドキナ討伐作戦も認めるが、国軍の協力は無く、アンホ・イプシロン地区中国方面部隊のみがカプトに協力する
2機のスペースシップの前に並んでいるカナタ達5人
その向かいに、アンホ・イプシロン地区中国方面部隊、副隊長の男性マー・シンユーとその部下達が並んでいる
「マルティナ隊長は、会議後ヴァン・リー部隊長とお越しになると連絡がありました」
マーがそう言うと、ライオネルとカナタは小声で
「そのシップには同乗したくないなぁ」
「空気…地獄ですよ、きっと」
すると、雷斗が
「うるさいぞ」
と2人を睨む。ライオネルとカナタは、背筋を伸ばし、黙る
「最近、機嫌悪いのな」
ローズィーが白に同意を求める様に言うが、白は下を向いたまま「うん」と小さな声で答える
2人の間に何かあったのか…ローズィーは心配していた。カナタも白の様子が気がかりではあったが、小隊も違うし、今回の作戦でも一緒に行動する事が無い為、詳しくは話せていない
「カプトの皆さんはここ、三亜鳳凰国際空港跡の我々の野営地を拠点にしていただき、エルドキナ討伐作戦を実行して下さい。我々はエルドキナが禁足地外に出ない様に対処します…その辺りは隊長達が来たら、また話しましょうか」
マーは人当たりが良い喋り方で、カナタ達を迎え入れる




