EP17 生まれる疑念2/3
夜が訪れ、自衛隊やアンホの救助隊が、戦闘となった現場に明かりを照らしている
変身を解除した後、アンホ軍に合流したカナタは、作業を手伝いつつも、白の居場所を探していた。通信端末で呼び出しても、応答がないのだ
あの津波に飲まれていたら?
いや、アンホの隊員が言うには、戦車隊が投入された時点で、一応の避難が完了していたと言うのだ
必ず、どこかに白は避難している
軍がキャンプ拠点にしている海岸の公園から少し外れた広場で、カナタは腕の通信端末で、ライオネルと話していた
『カナタ、江ノ島にいたのか!?』
「はい、白も一緒です。でも戦闘が始まってはぐれてしまい…レッドが現れたので…」
カナタは自分の周りやライオネルの周りで誰かが聞いているかもしれない事を考慮し、そう告げる
「俺はロンドンに隊長と出張中でな、グリーンとヴァルバリキアがやりあったって聞いている」
「隊長と一緒にいるんですか?」
「いや、俺達も戦闘が始まって別れた。俺は既に白鷺に戻っているんだけどな、隊長はまだ戻らない、もしかしたら現地で情報共有しているのかもな」
「今回の件、副隊長はどう見ます?」
「どうもこうも、本格的にブリッツ達が動き出したと見るのが妥当だろうな。もしかしたら、今後俺達のキマイラ討伐や霊獣保護の任務に、あの3人のどれかが関わってくる可能性も視野に入れなければならないかもな…まぁ、それはステーションに帰ったら、皆で話し合おう」
「はい」
「隊長が戻ったら、一度ステーションに戻り、カササギで迎えに行く。悪いが休暇は終わりだ」
「仕方がないですね」
「それまでに白を探しておいてくれ、大丈夫、強い子だ、生きてるさ」
「はい」
通信を切り、うなだれるカナタ
すると
「水族館、津波の被害大変そうだね…あのクラゲたち…大丈夫だったかな」
声のする方を振り返ると、白がいる
しかし服装が違う。グレーのニットは着ているが、アンホで支給される共通の作業服に変わっていて、ショートブーツも支給品の軍靴だ
「白…服装…」
「アンホの支給品借りて作業手伝ってたんだよ。そしたらさっき、隊員さんに、白のミニスカ履いている女性を探している隊員がいるんです、見てませんかって言われて、それきっと私ですって」
「そうか、そうだよな。着替えてるよな」
「そうだよ。あのまま作業出来ないでしょ?」
カナタは、白を引き寄せ、抱きしめる
「良かった生きてて」
「うん、カナタも」
通信を切り、端末を腕につけ直すライオネル。川に飛び込んだ事で汚れた体をシャワーで流し終わったところに、カナタの通信がきたのだった
「まったく、どういうつもりなんだ」
ヴァルバリキアの目的、あれは本意だったのか?民間人に被害を出さないと言っておきながら、津波を起こした…いや確かに直接攻撃による民間人の死傷者は出ていないと言われているが…
「それは私のセリフなんだけど、ライオネル君」
振り返ると、マルティナが戻ってきている
「おかえりなさい、隊長…何が私のセリフなんですか?」
「どういうつもりなんだ。その姿は」
「!?」
どういうことだ!?
マルティナの声は少しだけだが怒りが混じっている
その姿!?今は変身は解除している
あの姿と聞き間違えた?
変身を見られたのか!?
「シャワーを浴びたのかな?」
「はい…俺はビッグベンに向かったんですが、竜巻が起きて川に落ちてしまって…」
苦しい言い訳だ
「うんうん、それでシャワーを浴びて…考え事をしていたんだね」
「はい、そうですけど?」
マルティナはなかなか核心をつかない
川に落ちた事を疑っている?いや、もしかしてグリーンが川に逃げた事を知っていて…
「いいかいライオネル君。それは本来、私に隠さなければいけないんじゃないのかな?」
「隊長に隠すなんて…ないです…」
「いや、堂々としない」
「俺は何も隠し事なんてないですよ」
「…ライオネル君、よく聞いてくれ」
「はい」
「自分のつま先を見てごらん」
「つま先?」
ぱお~ん
ライオネルは慌ててシャワールームに戻り、扉越しに
「ごめんなさい、失礼しました、申し訳ございません、謹んでお詫び申しあげます」
「いいから早く服を着なさい…」
慌てて服を着て戻るライオネル
バタついてうまく服を着ることが出来ずもたつく
「竜巻に巻き込まれたって、どこにいたのライオネル君」
テーブルにはホットコーヒーが2つ用意されており、マルティナは席についている
ライオネルも席につくと、お礼を言い、コーヒーを自分の方に引き寄せる
「グリーンとキマイラ…なんでしたっけ、バルバルキーみたいな」
「ヴァルバリキアだね」
「そうです。2人の戦いが見えて、俺、アンホ軍に見つかると厄介だなと思って隠れて近づいて、川沿いで見てたんですよ」
「…それは本当かな?」
「本当です」
「君は極たまに、嘘つくから」
マルティナにしてみれば、近くにライオネルがいたのなら、気づいていたはずだ…と
「俺がいつ隊長に嘘を言ったんですか」
ライオネルにしてみれば、八咫烏の力を得てからは嘘のつきっぱなしだと罪悪感があった
「八咫烏の件の時」
マルティナのその言葉に、ライオネルは内心震えたが、それを表情に出さない様に努める




