EP17 生まれる疑念1/3
ロンドン、ウェストミンスター橋の上、中央部で対峙しているグリーンとヴァルバリキア。グリーンがバッキンガム宮殿、ビッグベン側に立っている
グリーンの攻撃によって、体位が変わり、ヴァルバリキアは後退した形になっている
ビッグベン側で銃声がいくつも聞こえ、戦車の砲撃ではなく、マシンガンの類の銃声だ
「…モンスターは、歩兵隊に駆除されていってるみたいだぞ。お前の目的がブリッツと違うって言うなら、なんでこんな市街地の真ん中で襲ってきた!?人類を滅ぼすって言ってる奴が、こんな場所でモンスターを放ってる…行動とお前の言動は一致してない……お前を排除出来れば、この戦いは終わりだ」
「私の立ち居振る舞いには理由があるんだ。よく見てくれると嬉しいな…軍隊はわからないが、民間人の被害者は出ていないはずだ」
「何!?」
「…今、私たちはここロンドン、マンハッタン、江ノ島で同時襲撃を行っている。ここと江ノ島では、民間人の被害は出ていないはず…いや、それに努めている…ニューヨークは約束は出来ない…なんせブリッツの担当だからね」
「ブリッツ…待て、じゃあもう一人、お前には仲間がいるのか」
「一匹じゃなくて、一人と言ってくれるのは嬉しいね。そう、江ノ島には神音というキマイラがいる…そのキマイラには…アムカが封印されている」
アムカが封印されている!?
グリーンは驚きを隠せない。あのアムカが復活すると、ヴァルバリキアが言っていたと、レッドから聞いてはいたが、どう復活するのかが疑問だった。復活させる為に霊獣を集めているのではないかとも予測はしていたが、アムカが封印されている、しかもキマイラの中にと言うのは、想像し難いことだった
「お前、何を言っている。キマイラに封印だと!?」
「ブリッツ、私、神音は、あのセントラルパークでの戦い、アムカ事案…その場所にいた…あの時、私の戦いが始まったんだ…グリーン…グリーン様……私には、あなたの助けが必要なんだ…全ての生物が生きるこの世界を救う為に」
ビックベンが4時20分を示す
「すまない。もう行かなきゃいけない…また会えると嬉しい…アムカ復活の前に…会いたい…」
ヴァルバリキアが、バッと両手を広げると、左右の手の前に魔法陣が展開される
「竜巻魔法陣!!」
魔法陣から風が起こったかと思うと、すぐに天まで届く竜巻が形成され、ヴァルバリキアはその中心にいる。竜巻の影響で川の水が巻き上がり、車など周辺に放置されていた物が舞い、グリーンは橋を殴る事で拳を埋め、オーラシールドを展開。竜巻を必死で耐える
風が治まると、ヴァルバリキアの姿は消えていた
「どういう事だ。まったく…こんな巨大な力を使わなかった…本当に本気じゃなかったって事なのか…本当に…ブリッツと目的が違うのか?」
橋の両岸に戦車数台と歩兵隊がやってくる
「俺も、まずは退散だな」
拳を引き抜くと、グリーンはジャンプし、川に身を投げる
タイムズスクエア。モニターの中に投げ込まれていたブルーはビルの中まで貫通していた。起き上がるとその投げ込まれた穴の前で、ブリッツが別方向を見て翼を羽ばたかせ、呆然としている
「くそ!!私たちよりもTV番組の方が気になるのか!!」
走り出しジャンプすると、ブルーは足にスーパーオーラを発生させ、必殺の蹴りを放つ!!
まさにその蹴りがブリッツに当たろうとした時、転移魔法陣が展開され、ブリッツはいなくなる
「なんだよ!!」
ブルーの蹴りは空振りになり、クルクルと回転し、歩兵隊の前に着地する
ブリッツを警戒し、沈黙する一同
しかし一向にブリッツは現れない
「勝ったのか…」
「ブリッツを撃退したぞ」
歩兵隊から、徐々にそんな声が聞こえ始める
歩兵隊の部隊長らしき男が、ブルーに近寄ってくる。銃などは構えられていない
「ありがとう…なんて呼べばいいかなヒーロー。あなたのおかげで、我々は救われた」
握手を求められる
しかしブルーは、大きくジャンプ、バク宙をして距離をとる
「私に握手を求める暇があるなら、民間人の救助をしろ。モンスターもまだいるだろ」
ブルーがそう言うと、部隊長は差し出していた手をバツが悪そうに引っ込め
「了解だ、ヒーロー。その通りだな」
ブルーはその言葉を聞くと、さらに大きくジャンプし、夜の景色の中に消えて行く
海面で数回跳ね沈む神音を確認するレッド。しかし触手によって防がれた感触があり、決定的なダメージを与えられた実感はない
レッドは浜辺でアンホ隊の被害などを確認する。レッドの後方、つまり市街地側の被害は戦車隊が目立つが、建物にモンスターや神音の直接的な攻撃による被害はなさそうだ。だが戦闘ヘリが少なくとも5機、攻撃により海上に墜落している
「このまま引いてくれ」
レッドが願っていると、海の中が光る。それは転移の魔法陣が展開されている時の光だ
光が収まると、大爆発が起こり、津波が押し寄せる
「みんな!!逃げろ!!」
レッドは叫ぶ。範囲は限定的だが爆発で起こった約10mの津波は、戦車や歩兵隊、そして境川を上り近隣の街まで被害を及ぼした
レッドは水族館の屋根に退避するが、もちろん水族館にも津波が押し寄せている、館内の被害は、相当なものだろう
爆発が起こった海面を見る。すでに海面は落ち着いているが、海上で羽ばたき飛んでいるブリッツが神音を抱きかかえた姿が見える
「ブリッツ…」
意識が遠のいている神音は、自分が抱きかかえられている事に気づきはじめる
「大丈夫か?」
ブリッツの問いかけに、ハッとし体勢を起こそうとする
「動くな…結構なダメージだ、全部の触手が折れている…金色のオーラでの攻撃か!?」
「ううん、赤いオーラ」
「通常のオーラでこの破壊力か…ブルーとは攻撃力が大きく違うんだな…今すぐ隊長のところへ飛ぶ、治してもらわなくては」
「でも…私、今日、カナタとここに来たの、カナタを置いていく事になっちゃう…」
「…お前のこの怪我を放っておくわけにはいかない。一度、隊長と合流だ。治療したらすぐに送る」
「うん、わかった」
ブリッツは、水族館の屋根の上にいるレッドに声をかける
「レッド!!今度会った時は俺が相手になる!!必ずお前を倒す!!!!」
レッドは答えないが、ブリッツと視線と視線が合い、お互いの気迫を感じ合う
ブリッツは、今度は小さな転移魔法陣を作ると、その中に吸い込まれ、魔法陣はポンっと小さな音と光を放ち消える
破壊された戦車や戦闘ヘリが津波で住宅地まで打ち上げられ、それに巻き込まれている兵士たちがお互いを助け合いながら、現状を確認している姿が見える
足元の屋根の下にあるイルカショー用の水槽も、一部が壊れ、色んな物が入り込み、水はすっかり茶色く濁っている
その惨状を見て、自分の無力さに、レッドは打ちひしがれていた




