EP13 休暇!!思い出の地へ 4/4
日本時間11月26日午前10時過ぎ
世界最多の利用者数の【新宿駅】の改札。朝のラッシュが過ぎた事もあり、人は疎らだが、それでも他の駅に比べれば利用者は多い
カナタは、いつもの隊員服ではなく、私服を着ている。ニットにジャケットとかなりラフな服装で、腕時計を見ていると、視界の隅に透き通る様な金髪が目に入る
ウェーブのロングの金髪が白い肌によく合い、ひざ丈の黒のロングコートを前開けにし、グレーのニットに白のミニスカ、ストッキングにショートブーツ、大きな瞳の女性が目の前に立っている
「…は…く」
カナタは目を丸くしている
「半に集合って言ってたのに、やっぱりカナタも早く来たんだね」
髪をシニヨンヘアにしていない白を見る機会が少ないカナタは、白に見惚れる
「あぁ」
カナタが自分の髪を見ている事に気付いた白は、指で髪をとかす
「今日はまとめてないからね。結構長いでしょ?マルティナ隊長と同じくらいかな」
「隊長は黒だから、印象が全然違うよ」
「カナタはどっちが好きなの?私と隊長」
「!?!?」
「髪の話だよ」
「あっ…あぁ、俺は赤毛だからな。どっちにも憧れるさ」
「そこは私って言ってよ。同じ癖っ毛でしょー」
白が笑うと、カナタは照れくさそうに歩き始める
2人が向かうのは、江の島にある水族館
白がクラゲの展示をカナタと見たいと言ったので、カナタは了承し、時間を合わせたのだ
「やっぱり早く来れば、一本早い電車に乗れると思ったんだよね。カナタはいつも集合早いから」
走る電車の中でウキウキと話す白、子供のように感情が表に出ている。長旅で疲れてると思ったのだが、気分が良さそうだなと、白を見るカナタ
「昨日は何時に家に着いたんだ?」
ステーションから日本まで、スペースシップや飛行機を乗り継いで25時間の旅、2人は一緒に過ごしており、昨日の夜19時に新宿駅で別れたのだ
「新宿から1時間くらいだったけど、なんだかんだで22時前だったかな、家に着いたのは」
「親御さんせっかく白が帰ってきたのに、今日すぐ出かけて寂しがらなかったのか?」
寝て、起きて、すぐにまた新宿に向かったであろう白。家族はどう思っただろうとカナタは心配する
「あっ私、1人暮らしなんだよ…言ってなかったね」
「ごめん」
「謝らないでよ。隊のみんなも色々と家族の不幸はあるんだから」
「俺の家に泊まれば良かったじゃないか」
「それこそ、家族に迷惑でしょ」
「そんな事ないよ」
「カナタが、お嫁さん連れてきたーって言われちゃうよ」
白は笑いながら言うと、カナタは微笑んでいる
「白を連れて帰ったら、確かにそう言われちゃうかもな」
白は顔を真っ赤にしている
「自分で言い出して照れるなよ」
「変な事しない約束ね」
「お前なぁ」
昨日の移動から他愛もない会話を繰り返すが2人の会話は尽きない
白はほんの一瞬、与えられている任務の事を思い出す
目の前にいるカナタや他の第2小隊の2人も知らない任務
カプトに入る前からの、生きる目的になっている任務
あぁ、カナタなら…
江ノ島の水族館に展示してあるクラゲ達を観ながら、白は思いを馳せる
この脳も血も心臓もない奇妙な生き物、クラゲ
奇妙な分裂と変態をする生き物。嫌われる存在ではあるが、こうやってライトアップされた水槽の中では、神秘的だが内臓を丸出しにした様で、よく見ればグロい
何十本と長い触手を伸ばしている種類もいれば、平たいカサだけのシンプルな形の種類もいる
この世の常識から外れたとも思える生き物
それはまるで…自分の様で…
クラゲに目を奪われている白
カナタはそんな白を見て、連れてきて良かったと満足していた
時計があと5分ほどで、13時を示そうとしている
「カナタ」
クラゲが泳ぐ水槽を見たまま、白はカナタを呼ぶ
「なに?」
「もし、私がいなくなっても、悲しまないでね」
白のその言葉は、カナタに死を連想させた
「カプトを辞めるって話じゃ、なさそうだな」
カナタがそう言うと、白は
「カプトは辞めないよ。もちろん死ぬつもりもない。でも危険な任務があるじゃない?私たちはいつ死に別れてしまうか…やっぱり分からないし、お互い生きていても、離れる日がいつか…来ると思うの…たぶん私はクラゲと同じ、死ねば身体も残らないから」
「いつ白と離れ離れになったとしても、悲しまないのは無理だよ。ずっと一緒にいる方法も…あるけどさ」
白は水槽の方を見たまま、顔をうつむかせ、首を振る
「恋人になって欲しいとか、そういう事じゃないの…私は…ダメなんだよ」
「どうしたんだよ。白」
「私はいつかカナタと離れてしまう。絶対の必然なの…その時が来た時、カナタに悲しんで欲しくないの…大好きだから」
「…白」
背中越しだが、泣いているのが分かる
カナタの方を向く事が出来ない。カナタは自分の涙を見てしまったら、情が移ってしまう。振り向いたら…ダメだ
不意に太く力強い腕が、白の身体を包み込む
「どんなに愛し合っても、みんないつか別れる時が来るんだ。それは自然の摂理だし、必然の事だよ。白が不安になってしまう事があるなら、一緒に悩んで、不安になってあげる事も出来るんだよ」
カナタの言葉に、カナタ以外の2人を思い出す白
雷斗とマルティナ
…カナタと先に出会っていたら
心のなかで、そうつぶやく白
時計は13時を示そうとしている




