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戦闘動物保護部隊CAPUt!!〜愛しい駆除対象の英雄たち〜  作者: 柴犬乃ぐんて
第1部【戦闘動物保護部隊CAPUt】
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47/105

EP13 休暇!!思い出の地へ 3/4

ローズィーを、ローズィーでもローズマリーでもなく、ローズと呼ぶ男性


ローズィーは、返事を声に出す事が出来ず、身体を強張らせ、頷く


「退院して、カプトに入隊したって聞いてさ。最近、カプトや政府軍の報道があって、ブリッツとか言うキマイラも出るし、こんなご時世だろ。心配で」


早口で話す男性


「仕事でここに来たのかい?」


男の質問に答えが遅れるローズィー


「ん…うん」


嘘だ。嘘をついてしまう


「そうなんだね。いつまで滞在してるんだい」


辛い、答えるのがツライ…

すると


「すみません。守秘義務があるので、お答え出来ませんね」


と、男とローズィーの間に、ある人物が入る

雷斗だ


「雷斗」

「ローズィーも、ちゃんと毅然としないと」

「あぁ、うん」


男は雷斗の登場に戸惑っている


「君は…?」

「同僚です。あなたこそ、ローズィーの何なんです?」

「僕は」


男が答えようとすると、ローズィーが雷斗を制止し


「この人は、私の…」


今度はローズィーの言葉を男が遮る


「僕は元夫です」


その言葉を聞いて、雷斗は怪訝な表情をする


「じゃあ、今ローズィーが困っているのは分かるだろ、愛してたんなら」


元夫の男は、返す言葉もない


「アレックス、ごめん」


ローズィーは弱々しく言うと、元夫のアレックスは、少し考え、引き下がる


「また……連絡するから」

「ごめんね、アレックス」


アレックスは、何度か振り返り地上へ上がる階段を登り、見えなくなる

ローズィーは、胸を押さえ、過呼吸気味になっている呼吸を、ゆっくりとゆっくりと意識しながら、深呼吸する


「…雷斗、どうして」

「偶然、行き先が一緒だったらしい…セントラル・パーク跡地に行くんだろ」

「うん」


セントラル・パーク跡地、そう『跡地』だ

6年前の【アムカ事案】一般には【マンハッタン紛争】と呼ばれている

マンハッタン島に現れた4匹のキマイラに対し、米軍、地球世界政府軍、カプトの合同作戦が展開された地である


地下鉄の駅から地上に出る2人

ウェスト34thストリートより北側の区画はまだ戦闘の爪痕が残り立ち入りが制限されている区画もある、南側の区画は復興が進んでいた

 ローズィーの目当てでもあった超高層ビルからなる複合施設は、その面影は無い


セントラル・パークがあった場所は未だ立ち入り禁止になっているが、そのそばまでは近寄る事が出来る。夜のパークは漆黒の闇、2人は雷斗が持っていた1つの傘を2人で使い、ザーザーと降る雨の中、パークを見ている


「雷斗は知ってるっけ?私はここでの戦闘の被害者だって事」

「…モンスターに襲われてって話は聞いてたけど、ここでだったのか」


雷斗はローズィーの脚を見て、不謹慎かもしれないとすぐに視線を外す


「近くの教会でさ…結婚式の最中だったんだ…さっきのあの男との…結婚式…」

「さっきの…」

「そう…私の親にも、相手の親にも反対されてた結婚で、子供が出来て承諾されたけど、結婚式には私の家族しか出席してなくて…私とあいつ以外は皆………奇跡的に生き残った私達を…いや…私を、あいつの家族は受け入れなかった……無理もないよ、唯一のつながりだった、子供を失い、もう次は望めない体だったし…」

「そんなの、おかしいだろ」

「おかしくないさ……アレックスの家は名家だからな」

「そんなの……」


パークの方を見ていたローズィーは、雷斗の方に向き直る


「昨日言ってた、会いたい人って近くに住んでるのか?」


努めて明るい声で言うローズィー


「いや……ここに…いたんだ」

「えっ?」


雷斗の意外な返答に、固まるローズィー

雷斗もパークの方を見ている


「…決意と覚悟を、確認しに来たってとこだな」

「雷斗も…ここで…」

「あいつは家族でも恋人でもねーよ……いや…血縁ではあるのかな。でも俺は此処で何かを無くしたわけじゃない、色んな物を貰ったよ」


色んな物を貰った、雷斗の言葉にローズィーは八咫烏の事を思い出す


「最近、ローズィー雰囲気変わったよな。カナタと副隊長の影響か??」

「そうか?」

「ここでキマイラの被害にあったって聞いたら理解はするけどさ、絶対モンスターを絶滅させるって感じだったじゃねぇか」

「今でもそうだぞ」

「基本はそうだろうけどさ」

「まぁ私もさ、任務で色んな物貰ってさ、前とは違って責任があるんだなって実感する事が多くてさ…」

「そうか」

「うん」


2人は再び今は立ち入り禁止のパークだった場所を見る


「アムカってどんなキマイラだったんだろ」


ローズィーがぼそっと言うと、雷斗はローズィーの表情を覗き見る


「アムカ、俺見たよ」

「そうなのか!?アムカの他に4体キマイラが居たっていうじゃないか、全部見たのか」


ローズィーは、自分の仇であるホアドの情報が少しでも欲しい、ヴァルバリキアとの違いが知れるチャンスだと思った


「4体?」


雷斗は不思議そうな顔をする


「私はさ、最初期に被害にあったから、被害者なのに全容は報道でしか知らないんだよ。報道では4体だって言ってたし、副隊長もそんな事言ってたぞ、隊長も副隊長もタン元司令も、ここで作戦行動中だったって」


ローズィーが言うと


「俺が見たのは、鳥と…」


鳥、八咫烏の事だとローズィーは思う


「アムカが、人間の魔女で」

「人間!?魔女!!!???」

「あぁ、それから手が鎌になってる獣人みたいな奴」


ローズィーの家族を奪ったキマイラだろう


「その獣人も女性的だったか?」

「カワウソと言うか、イタチみたいな感じで、性別を感じるシルエットじゃなかったぞ」

「そうか」

「あとは…」


雷斗の言葉が一瞬詰まる


「あとは……形容の言葉が見つからない……醜い、生き物としか言えない何かがいたよ」

「なにそれ」

「動物の身体が裏返ったと言うか、吐瀉物が動いてると言うか」

「それ生き物なのか」

「…あぁ、そしてあと1体…それがさ、今にして思えば…4体目のあれはファルベブリッツだったんじゃないかな」

「えっ!?」

「そんな気がするんだ」


傘の柄を持つ雷斗の手が、少しだけ握る力が強くなる


「なぁローズィー、ローズィーはブリッツの事、どう思ってるんだ?」

「どうって…」


雷斗に問われて、ローズィーは改めてブリッツの事を考えてみる


「人類の敵と言う割には、全然現れないし、意外と仕事が遅いよな。普段はサラリーマンしてて時間がないとか」


とジョークを言うローズィー。雷斗も笑う


「6月だったよな。私たちの前にブリッツが現れたのは、来月で半年だ。モンスターも一枚岩じゃないとかなのかな」


ローズィーは、先日のカナタの説明から、ブリッツとアムカが敵対し、モンスターの派閥争いをしている事を聞いていた。あのヴァルバリキアが本当の事を言っているか、真偽は分からないが、人類絶滅を謳っているブリッツが現れて半年経っても、表立って動いていないのは事実だ

 ブリッツを6年前に見たかもしれない雷斗に、その情報に基づく考えを言えば、新たな発見があるかもしれないとローズィーは思ったのだ



「モンスターは一枚岩じゃない、か…6年、裏で動いていて…半年前、ブリッツがモンスターを統治出来る算段が整ったからこそ、人類の前に【敵】として現れたのかもしれないぞ、ローズィー」


冷たく淡々と雷斗は答える


「…確かに、あり得る話かもしれないけど」

「なぁ、ローズィー。人間もそうじゃないか、モンスターの頂点と名乗るブリッツを倒せば、モンスターとの長い戦いが終わる、その後の事を考え始めただろ。ブリッツもモンスターの統治が終わったから、その後の行動に移したのかもしれないって事さ」


「あーーーーーー」


ローズィーが突然叫ぶ。隣にいる雷斗は、驚き目を丸くする


「難しい事は私にはやっぱり分かんない。カナタや隊長に考えてもらって、動く方がイイ!!」

「おいおい、お前の意志はないのかよ」

「モンスターをぶっ倒したい!!!それでモンスターの脅威に怯えない世界が来れば、私はそれでいい!!政治は分かんない!!」

「なんだよそれ」


雷斗は呆れるが、ハハハっと笑う


「ブリッツぶっ倒して、モンスターもぶっ倒せたらさ、またここに一緒に来てくれるか雷斗」

「えっ」

「今度はこんな雨の日じゃなくてさ、もっと太陽の光をたくさん浴びながら、ここに来たい」

「まったく」


すると雷斗が握る傘の柄を、ローズィーも握り少し雷斗側に押す。相傘だった為、雷斗の肩が濡れていたが、ローズィーが押した事で、今度はローズィーの肩が少しだけ雨に打たれる


「私に気を使ってくれてありがとうな、雷斗」

「俺は濡れてもいいよ」

「傘の事だけじゃないさ、さっき…アレックスに怒ってくれただろ」


ローズィーは、はにかんだ笑顔で雷斗を見る


「だからって、他の女みたいに簡単に落ちると思うなよ」


雷斗は、ローズィーの笑顔に見惚れる

雨が次第に降り注ぐ速度を遅め、ゆっくりと落ち始める。真っすぐ落ちるのではなく、ゆらゆらと落ち、白い結晶へと変化していく


「冷えると思ったら、雪になってきたな」


ローズィーは少しだけ身体が寒さで震える


「もっとあったかい場所に行こうぜ」


雷斗の提案にローズィーは


「食事だけだぞ」


と、また笑顔で答える

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