EP13 休暇!!思い出の地へ 1/4
オルトロとの戦闘から20日後
11月23日AM5:03
『ニュース速報です』
朝のニュースを読んでいた男性ニュースキャスターが手渡された紙に書いてあるニュースを読み上げる
『先ほど、スペイン政府と地球世界政府、合同で40年以上64地区を支配していたキマイラの消滅を確認したとの発表がありました。立入禁止地区の解放は初めての事です。アンホの報告によると、絶滅したと思われていた、イベリアオオカミの群れも確認されたとの事です』
隊員室のテレビモニターを隊員全員で見ている
「と、いう事になりました」
マルティナが、皆の前で報告をする
あれから第1小隊と合流し、ライオネルはカナタから聞いた状況を精査し、マルティナに「クロ助が飛ぶ方について行ったら、レッドとブリッツともう1体人型の何者かを確認。すぐにレッド以外は居なくなったが、レッドは自分に気付いてから居なくなった」と、報告した
それを聞いて、マルティナはレッドとブリッツの接触が、【協力の為の接触なのか】、【戦闘中だったのか】、状況が分からないのなら、その情報を上に上げるべきかを悩んでいた
オオカミの死体、そしてオルトロの捜索に関しては、1週間カプトのみ捜索を継続、その間にオオカミの遺伝子を解析。解析した結果、イベリアオオカミとモンスターの遺伝子を持っていると報告を得た為、スペイン軍も加わって64地区を捜査、その時にイベリアオオカミの群れを発見。オルトロは発見できなかった事から、あのオオカミの死体はオルトロの物だろうと結論付けられた
マルティナは、レッドとブリッツの接触と、もう1体の何者かは、カプトとアンホの上層部だけで共有出来ていればいいと言う判断をした
「結局、ライオネル君しか見ていない、レッドとブリッツの情報は混乱を招くだけと判断された。一般にはもちろんブリッツがまた現れた事なんかは世間の人を不安にさせるだけだから…だそうだよ」
それは仕方がない事だと、全員が理解していた
「さて、私達の20日間の働きが、ようやく1つの結果が出て、任務達成となった。初の任務お疲れ様」
マルティナが皆を労う
しかし出動からの帰還後、報告の為の事務仕事の20日間連続でほぼ休みなく働いていた隊員達は服が乱れ、髪も乱れ、寝不足の目に、やつれた頬、マルティナの報告を誰もちゃんとした姿勢で聞けていない
「ほら、やっと終わったんだ。今のカプトは緊急出動は無くなったんだ。休みだよ、休んでいいんだよ」
マルティナだけは、しっかりとしており、皆の気力を奮い立たせようとするが、気力も限界に来ている隊員達
カナタは
「休み……って、本当に…休んでいいんですか」
と言いながら、資料の山に埋もれ
白は
「このまま……寝かせて下さい」
と、大きな瞳の重いまぶたを、必死に指で開けながら言うが、ガクッと頭を支える筋力が力を失う。ローズィーも疲労困憊だが机の整理を始め、雷斗は大あくびをしながら、整備室に資料を返しに行くため、隊員室を後にする
「隊長、ブリッツと共にいた人型の捜索は、どうしますか?」
ライオネルがマルティナに尋ねると、マルティナは渋い表情をしながら
「そうだね…やはり人手不足だね」
マルティナが再び隊員達に目をやる
「地球世界政府は、カプトに成果を求めるけど、短い期間での成果は求めてないって事かな」
マルティナがそう言うと、ライオネルはその真意を汲み取ろうと、考える。そんなライオネルに、小さく手招きをするマルティナ
「?」
ライオネルは席を立ち、マルティナの横に立つ
マルティナは、指でしゃがむ様に指示をし、ライオネルがしゃがむと、耳打ちをする
ライオネルは耳に全神経を集中させる、吐息が耳の産毛を揺らす、こそばゆいが心地良い小声が鼓膜を揺らす
「明日からの休暇は隊員を休ませる目的もあるけど、私は出張する、ライオネル君も一緒に来てくれるかい?」
「えっ」
と声にならない声をあげ、音を発していない言葉さえも、皆に聞かれない様にと、ライオネルは自分の口を思わず押さえる
「俺で良いんですか…」
戸惑うライオネルを不思議そうに見るマルティナ。そして意地悪そうに微笑む
「他の男性に頼もうかな?雷斗君かカナタ君でも」
「あっいや、そうじゃなくて」
慌てるライオネルのおでこに指を当てるマルティナ。ハードな仕事をしていると思えない指の柔らかさを感じる
「アーガスハイインダストリーの重役と会う約束がある。君が居てくれると嬉しい」
それを聞き、ライオネルの緩んだ表情が変わる
「…了解です。隊長」
スクっと立ち上がるライオネル
「じゃあ、ライオネル君は後でミーティングだ。残るように」
マルティナが普段の声量で話すと、カナタと白は目を覚ます
「副隊長、私手伝わないですよ」
とローズィーは、そそくさと隊員室を後にする
「ほら、カナタ君、白君、1週間の休暇が始まるよ。寝るなら部屋に帰って寝なさい」
マルティナが2人を追い出す様に、隊員室から退出を促す
「お疲れ様でしたー」
カナタは半分寝ながら一礼し、ほとんど寝ている白を背負って退出する
それをドア前まで見送るマルティナ。ドアを閉めるとしばし沈黙がある
「アーガスハイインダストリーから新型のスペースシップを受領する」
マルティナが話し始める
「…見返りは?」
ライオネルが真剣な顔つきで質問すると、マルティナは振り返り、ライオネルの目を見る
「有事が起こった時の即戦力としてカプトを使うって事でしょ」
「カプトは、モントゴメリー派の駒になれって事ですか」
「そういう事だね」
「ブリッツを排除出来れば、次の相手は人間だってあの連中は言うんでしょ。モンスターの駆除が終わったら、資源や覇権の為に戦争を起こそうって言うんですか」
「軍人と武器商人は、争う相手がいないと生きていけないからね」
「ふざけやがって」
「タン司令…タン中将の情報だよ。アーガスハイインダストリーは、50年前の太平洋大災害の頃から秘密裏に何かしらの動きをしていたらしい。6年前のアムカ事案の時も、8年前の合同演習にも関わっていたと私は見ている」
ライオネルがあからさまに不機嫌な顔つきになる
「合同演習の暴動も、アムカ事案も、仕組まれていた可能性があるって言うんですか。何人…死んだと思っているんだ…」
「気持ちは分かるよライオネル君、私もブリッツが、モンスターがいなくなった後の世界を平和にしたい、どんな手を使ってもね」
「俺も、隊長となら、地獄でも、どこでも行きますよ」
「ありがとう、ライオネル君」




