EP11 軍と軍事産業と新任務4/4
…2日後
グリニッジ標準時、11月3日AM6時
スペースシップ白鷺、カササギが待機する格納庫の待機所
出撃前のスペースシップの最後の点検をする整備員達を横目に、隊員達も最後の打ち合わせを行う
「昨日のブリーフィングでも言ったが、キマイラがいる現地に行けば通信は出来ない。各小隊の独自の行動に任せる事になる」
隊員達の前でマルティナは、いつもより一段と気合いを入れた声で指揮する
「今回の目標となるキマイラは、発見から45年以上放置されている双頭の狼【オルトロ】だ。伝説上の双頭の犬【オルトロス】に似すぎている事からそう呼ばれているのは、皆も知っているだろう。霊獣か、キマイラか、攻撃は小隊の判断になるが、責任は私が取る、存分に戦って欲しい…時にカナタ君」
「はい」
「本当にクロ助を連れて行くのかい?」
カナタの肩には、クロ助、もとい八咫烏だった小烏が留まっている
「クロ助は、八咫烏の件の、あのブリッツと初めて会敵した時、導いてくれたんです。今回もし頼りになるのであれば、非常に頼もしい戦力になります」
「確かにそうだが……生き物を大切にするカナタ君にしては、思い切った行動だね」
「キマイラが相手です。使える術は使わないと」
「君の意志は理解した」
マルティナは、カナタから視線を皆に向ける
「だが、生きて帰る事を前提にして欲しい」
「了解(一同)」
「新生カプトとしては初任務になるが、今までの様に緊急出動し、その場対応をする様な任務ではない、今回ダメでも次回駆除を出来れば良い、そのくらい余裕を持って、自身と仲間の命を優先して欲しい」
「元々駆除出来ないで、生息地を禁足地にして隔離しているキマイラだから無理してもしょうがないしな」
と、ライオネルが一言付け加える
「それって消極的ではないですか?昨日のブリーフィングでも言いましたが、ファルベレッド、ブルー、グリーンの意図は掴めていない、ブリッツがいつまた何処かの都市を攻撃するかも分からない…なら現存のキマイラだけでも、早急に処理しなければならないと、俺は思います」
雷斗がそう言うと、白が
「でも私達だけで出来る?」
と不安な声で言う
「それこそ緊急出動じゃないんだし、何日かけてもいいんでしょ?じっくりやろう」
ローズィーが言う
「ローズィーにしては、楽観的だな。もっと速攻で殺りたいと言うかと思った」
雷斗がローズィーに嫌味混じりに言うと、ローズィーはそれをいなす様に
「絶対に勝つ。だからじっくりやるんだろ」
と手のひらを拳で叩くローズィー
『カプト、スペースシップ発進シークエンスに入る』
これまでと同じ出撃、しかし新たな体制としての初出撃
『気密ロック解除、昇降機ダウン』
格納庫の床がゆっくりと下がり、宇宙空間へ出る
『1番機、どうぞ』
「了解、こちら1番機SUN099「白鷺」ギアロック解除」
マルティナがギアロックを解除すると、タイヤが機体に格納される
「白鷺、出ます」
発進する1番機白鷺
『2番機、どうぞ』
「2番機SUN105鵲。ギアロック解除する」
同じくギアロックを解除するライオネル
「カササギ、発進する」
発進する2番機カササギ
ステーションを飛び出すと、2機は大気圏を突破すると、眼下にはイベリア半島が見えている
アルファ区第64地区はイベリア半島のシエラモレナ山脈より南部に位置する
ここは絶滅危惧種スペインオオヤマネコの最後の棲息地とされていたが、モンスター発生以降確認されていない為、絶滅してしまったと言われている
なぜ言われていると曖昧な表現をしているかと言うと、まさにこの場所が確認出来ない禁足地となってしまったからだ
同じく絶滅危惧種イベリアオオカミがキマイラ化し、オルトロになり、この場に定住したとされている
64地区を5週間かけてオルトロの捜索をする。相手は体長2mしかない、捜索だけでも困難だ
だから第1小隊は北側から、第2小隊は南から、スペースシップを使いながらポイントを変え捜索する
カナタは、今一度オルトロの資料に目を通している
「副隊長…本当にカナタ1人で行かせるんですか?」
ローズィーは、装備を整えながら尋ねる
「3人とも変身して索敵すれば第1小隊がオルトロを見つける前に発見出来るだろうが、もし北側で尚且つ第1小隊に近い場所だったら、どうする?」
「無線も使えないんだ。私達は会わないんだから、言い訳は出来るじゃないか」
「しかしファルベ3人全員が第1小隊の前に出るのは、避けた方が良いと思わないか?」
「どうして?」
「隊長の洞察力を甘く見ない方がいい。今隊長の中では、ブリッツと3人が敵対していると思っているし、ブリッツ、レッド、ブルー、グリーンは単独で行動していると認識しているんだ。オーストラリアで確認されたブルー、島根で巨大化したグリーン、レッドは未確認。隊長が初めて見た時、4人集まっていたのは、極々稀なケースだろうって言ってたぞ」
「なんでそう思ったんだろ?」
「隊長は会話や仕草から言葉以上に情報を得る事に優れている。「私が見た時、ブリッツは3人を初めて見た感じだったし、島根の時も3人がどこにいるのか分からない様子でメッセージを送っていたから」だとさ」
「だからカナタ1人って、どうなんだよ」
2人の会話を聞くカナタは、ローズィーに
「あれから変身してないし、心配してくれるのは、有り難いよ。スーパーオーラの発生条件で試してみたい事もあるんだ」
「スーパーオーラの発生条件は、怒りだろ?」
「そうかもしれないけど、キマイラとの接触がキーになってるかもしれないなって思ってさ」
ブルーとガルイラ。グリーンとギュウガ。確かにキマイラに対峙した時にスーパーオーラは覚醒している
「なんでも感情に起因していると思うのは、ローズィーらしい考え方だけどさ」
「私が感情をコントロール出来ないって言ってるみたいなんだけど!!」
と怒るローズィーに、カナタは笑ってしまう
64地区の南側の辺りが一望出来る展望台の近くに着陸するスペースシップ カササギ
「とにかくカナタには変身し、オルトロの索敵をしてもらう。俺達はクロ助と一緒にカナタを追う」
スペースシップを操縦していたライオネルは、装備を整えながら話す
「すっかりクロ助だな」
ローズィーが八咫烏を撫でる
『私は気に入っているよ。それに見た目はただのカラスと変わりないから、仕方が無いと思ってる』
「本当に変身したカナタの位置が分かるのか?ブリッツは分かんないのに」
『ブリッツは純粋な私の力を持った人間じゃないからだ。何か別の力も持っている』
「そりゃそうだ。八咫烏の力を自力で奪ったんだろ?」
3人とも装備が終わる
カナタのみ帯刀している
その刀を抜き、胸の前で祈るように両手で持つと、胸の前に小さな赤色の炎の様な煌めくオーラが出る
「変身!!!」
オーラに刀を振り下ろすと
前方にオーラの魔法陣が現れる
魔法陣がカナタを包み込む
肩に力が加わり、肩甲骨に意識を集中させる
すると、光の翼が背に生え、翼が3度羽ばたくと、カナタの身体を包み、首から下にかけて変身していき、頭が光るとフルフェイスヘルメットの様な鳥を模した形に変型。
翼は最後に光の粒子となって、首にまとわり付き、長いスカーフになる
外からは魔法陣がカナタを通り過ぎただけだが、カナタはファルベレッドに変身している
そして刀も、打刀から大太刀に変わっている
「なんか1人だけズルくないか、専用装備みたいで」
ローズィーが嫉妬する
「よく考えたらさ、ローズィーの両足も一緒に変身出来るんだから、身体の一部と思い込めば一緒に変身するんじゃないかなって思ってさ。そういう意味では、ローズィーの脚も専用装備じゃないか」
レッドは久しぶりの変身で、色々身体を動かし、確認しながら答える
「デリカシーのない奴。私以外にそんな事言うなよカナタ」
「ローズィーだから言えるに決まってるじゃないか、それに刀にスーパーオーラを纏わせる事が出来たら、ローズィーの蹴りみたいに必殺技になりそうだろ」
大太刀を納めるレッド、2人と八咫烏を見る
「では、行ってきます」
レッドは、スペースシップから飛び出すと、走り去る
それを見ながらローズィーはドローンバイクにまたがり
「その理屈なら、ドローンバイクを試せよな…カナタって、やっぱりどっか抜けてる」
「ローズィーは、バイクに乗って変身したんだろ?それを知ってたから試さなかったんじゃないのか?あっ」
ライオネルは何かを思いつき、声を出す
「副隊長?」
「次ならギュウガに勝てるかもしれない案を思いついた」
「霊獣がキマイラ化したギュウガは確かに強いと思ったけど、ガルイラは変身すれば大した相手じゃなかった…副隊長はオルトロの強さ、どう見てるの?」
「うーん、モンスターがRで、普通の動物のキマイラがSRで、霊獣キマイラがURだったら、SSRくらいじゃないか?」
「ごめん、全く意味が分かんない、どこの言葉使ったんだよ。じゃあ変身したカナタの実力はどう見る?」
「カナタなぁー…マルティナ隊長は、普通の人間なのにキマイラとタイマン出来る実力がある。白とカナタは、自分専用の武器を使えれば可能だ。そんなカナタが変身して、大太刀持ってるんだぞ?俺たちよりも優れてるに決まってるだろ」
クロ助がライオネルの肩に乗る
「じゃあ、行くか。オルトロが霊獣じゃなきゃカナタなら余裕だよ」
ライオネルはそう言うと、ドローンバイクを発進させる
ローズィーもそれに続く
「…速攻で終わらせる」
両手に刃を持つ何者かの影
その刃は、過去ローズィーの身体を引き裂いた刃に似ている…




