EP1 戦闘動物保護部隊CAPUt(カプト)3/4
この時代の日本の多くの都市は海に沈んでいた
モンスター襲来時の謎の爆発による津波被害と海面上昇の影響は大きく、平均的に大災害前より10m海面上昇し沿岸部の多くは海のそこになっていた
50年前の世界を知らない世代の隊員たちには、それが当たり前の景色だった
2番機「カササギ」は疑似重力システムを使ったホバリングで、上空から34地区を索敵している
モンスター、キマイラ共にレーダーに映らない性質がある為、肉眼で探すしかないのだ
「タン司令ってさ、50年前、日本にいたんだろ?米軍に所属していて、日本の為に戦って、今でも東アジアを担当してるって縁があるよな」
自身も日本にルーツがあるカナタが感慨深くなる
「まぁ、米軍だったって言っても、元々アジア系アメリカ人だし、今の奥さまを助ける為に戦ったって聞いてるぞ」
ライオネルが情報を追加する
「へぇー純愛だねぇ」
ローズィーが銃火器の確認をしながら感心する。ローズィーが手に取った火器の情報が右手につけているグローブから宙に表示される。グローブはこの時代において一般的な装置であり、手に取った物の使用方法などの説明文が表示される道具だ
「俺の祖父が言ってたよ。日本は元々民間人が武器を持っていなかったから、モンスターに対抗できなくて、本当にヤバかったって」
「でもさ、民間人が武器を持っていなくても治安を維持できるほど、平和だったって事でしょう」
ローズィーの視線は持っているサブマシンガンの状態ウインドウを見つめている
「俺もそう思うぞ」
ライオネルもローズィーに賛同、確かに銃社会ではなかった昔の日本では、武器を持って街を歩いているほうが異質だったのだろう
「そうなんだけどさ、今は武器を持つことが当たり前だけど、もしも未来にモンスターやキマイラがいなくなった時、昔の日本みたく平和になるのかな?」
「人同士の争いが無くなれば…な」
今度はスナイパーライフルの照準器の点検をするローズィー
「俺さ、ずっと思ってる事があるんだけど...人間と野生動物だってさ、干渉して力で従えて、共存している訳じゃないだろ?」
「でも管理は必要でしょ。相手は畜生なのよ」
ローズィーは、動物は人間が管理してこそ、共存できると思っていた
「カナタの言いたいのは、お互い必要以上に干渉したり、支配や従えたりではなく、リスペクトし合えば、動物とだって生きていける。相手が人間ならもっと簡単だろうって事だろ」
ライオネルが、カナタの思いを代弁するが
「バカだな。羊の牧場に狼が共存出来ると思うか?人間だってそうさ、重武装で侵攻してきた敵軍に、戦争反対って歌って抗議するのか?理想がすぎるよ、カナタ」
ローズィーは手を止め、カナタを見る
「…甘いのは、わかってるけどさ…いつか、モンスターとも共存出来るかも」
「ふざけるなよ、カナタ」
ローズィーは、カナタを睨み凄む
「私の前で、そんな事、よく言えるな」
「…ごめん」
カナタは、声が小さくなる
2人の空気が重くなり、ライオネルが話し始める
「共存出来るかどうかは分からないが、50年前からの因縁を考えれば、民意は決まっているだろうな。だが一時は人の数より多いと言われたモンスター達も、この50年で広大な俺達のイプシロン地域でさえ、月に3件のモンスター目撃の緊急出動、キマイラに至っては、年に1件。奴らが絶滅する方が早いだろうな」
「最後の一匹は私が殺りたいくらいさ」
息巻くローズィーに、カナタは黙ってしまう
白鷺は34地区の廃墟ビルの近くに着陸しており、その廃墟ビルの屋上に雷斗がいる
「なるほどね、間違いない…探していたヤツかもしれないな」
雷斗は視線を山に向ける
「生き残るのは、俺たちだ」
カササギの真下を黒い影のような鳥が通り過ぎる
「あいつか!!」
ライオネルはすぐさま操縦桿を握り、鳥型のキマイラを追うカササギ
「でも副隊長、報告では20mって言ってなかった!?」
ローズィーの言うように、その黒い鳥は全長10mも無い
「確かに」
「ただの大きなカラスじゃないですよね」
カナタが目を凝らす
「いや、翼が4枚、足が3本ある」
「あぁ、キマイラだな」
その黒いキマイラは追って来るカナタ達の乗るカササギに気づくと、グルンっと宙返りし、真上に位置する
ズガン!!!!
キマイラは3本の足を機体に押し付け、全体重を圧し掛ける
「なんて力だ!!!」
カプトイプシロンが使うSUNシリーズのスペースシップは、疑似重力システムを標準装備した機体で、その疑似重力システムと少量の推進剤によるロケット噴射で大気圏を離脱出来るほどの推力をもっている。その推力を持っているスペースシップを押さえつける
徐々に降下し、森の木々をかすめ始める
「副隊長、上部ハッチ開けます!!」
「無茶言うな!お前が吹っ飛ぶぞ!!!!」
「しかし!!」
その時
「この先に開けた場所がある、そこに降りろ。人間」
3人が絶句する
「言葉は通じているはずだ」
キマイラが体重をかけながら、コックピットの窓に顔を近づける
「キマイラが、話しているのか!?」
カナタが発すると同時にローズィーがサブマシンガンを乱射、窓が割れ、内気圧が外に飛び出し、気流が乱れ、ライオネルとカナタが必死にシートベルトが外れないように、しがみつく。サブマシンガンの弾はキマイラに当たるが、かすり傷にもなっていない
それどころか、ローズィーが気圧差の暴風で外に飛ばされてしまう
が、外に飛び出てしまったローズィーをキマイラが3本の足の1つで掴む
「安心してくれ、人間。殺しはしない、私が願いを、話を聞いて欲しいだけだ」
ローズィーは激しく抵抗するが、ビクともせず、ライオネルは観念する
「わかった…その子を殺すな」
「約束する。この先の大鳥居のある広場だ」
ライオネルは、その鳥が言う広場を見つけた
高さ30m以上、幅40m以上あるであろう、大鳥居
その近くにカササギをゆっくりと降下させる
町の人に聞き込みをしている白とマルティナ
「あの鳥は、神様の使いなんです」
そう言うのは、80歳を越えるであろう老婆だ
「神様?」
白とマルティナは顔を見合わせる
「大津波の後、モンスターの群れがこの町の多くの人間を...私の娘も...夫...」
老婆はその時をいつも思いだしては、泣いているのだろう。その光景を鮮明に
思い出している事がわかる
「あのヒトデの化け物が...」
グッと悲しみを抑え、老婆は続ける
「あいつらが、夫を...食い散らかし、私は生きる希望を失い、その場で泣き叫び、動けないでいると、神様が使わされたとしか思えない金色の八咫烏様がモンスターを退けて、私たちを守ってくれたのです」
「...ヤタガラス」
「...神の使い」
白は、すぐに無線でライオネルたちを呼ぶ




