EP10 解散!!イプシロン隊3/5
第2小隊の3人はお互い背中合わせになり、辺りを警戒する。レーザーは目視出来るが、どこから撃たれるか分からないが、木々を融解させ貫通する際のタイムラグを見逃さない為だ
「敵は、おそらく1人」
ライオネルも、マルティナと同じ推測をしている
「なぜ、そう思うんです」
「このレーザーライフルは、発射すればしばらく通信が使えない、今みたいに目視からの回避が容易である事…その為レーザーライフル使用時は多人数が横一列に整列して、号令役の合図で発射する方法を用いる。1本の火線の有効範囲が狭く、射程は精々200m…昔の火縄銃みたいな戦い方だと思えばいい」
ライオネルの推測と対策に納得は出来るが、納得出来ない事もある
「なんで私たちを狙うんだよ」
レーザーライフルを持っている人間が自分達を狙う意味がどこにあるか、ローズィーの疑問はもっともだ
「罠…なのかもな…政府軍からの情報での出動だったんだぞ…」
ライオネルの言葉に絶句する2人
「変身すれば、敵探知は容易です」
カナタが提案するが
「ダメだ。上空から隊長達がサーモで見てるはずだ」
「じゃあ敵の位置が分かるんじゃ!?」
ローズィーの言葉に、ライオネルは首を振る
「白の狙撃もない。捉えてないとみるのが妥当だろう」
森が静かになる。レーザーで焼かれた木々は延焼はしていないが、熱は持っている様だ
「俺達がサーモを使っても、相手を見つけるのは困難だろうな」
「敵もそうでしょ!?なら近くにいるって事じゃないか」
「レーザーライフルを持ってるんだ。熱を逃さない光学迷彩くらい持ってるだろ」
「くそって誰なのか、絶対とっ捕まえてやる」
「相手は俺たちを殺す気だけどな」
冷静に状況分析するライオネルと熱くなるローズィー、カナタはじっと森を見ている
「レーザーライフルって、生物だけを焼く兵器というコンセプトで開発されたんですよね?」
カナタはライオネルに確認する
「あぁ、レーザーが金属を通さないからな、建築物に致命的な損傷を出さない兵器として開発されたらしいが…」
「文明は焼かずに、自然を焼く兵器か」
カナタは、静かに言う
その様子をみて、ローズィーは
「カナタ…怒ってる」
「そりゃ、そうだよ」
歩き出すカナタ
「おい、待て、敵はどこにいるか!!」
ローズィーがカナタを止めようとした時、カナタに光の線が重なる
「カナタ!!」
ローズィー叫ぶ。カナタはレーザーに焼かれたと思ったが
カナタはその光の線を、鞘から少し抜いた刀で受けている
刀は、光を受けても融解しない
「なるほどな。銃ではレーザーは受けられない」
ライオネルは感心する。銃で使用されるステンレスやアルミ合金では、レーザーは防げないが、高温で鍛え上げられた日本刀は、理論値では防げるのだ
「いきなり試す度胸は無いがな」
そしてそんな洞察力もないだろう
レーザーの光の線の方向に進むカナタ
カナタ達の襲撃者は急速に動けば位置を特定されるので、ジリジリと動く事しか出来ない。カナタの視界から外れた場所まで動くと、レーザーを発射、しかし再び刀に防がれる
であれば、ライオネルとローズィーを先に撃つ方がいいか?カナタの表情が分かる距離まで詰められている…が、まだ位置は特定されていない、そんな事を考えていると、カナタが刀を納めた状態で、ゆっくりと目を閉じ、刀の柄に手を当てて、腰を落とし、止まる
…なんだ、あいつは何をやっている
自分に向けられる殺意でも察知してるのか?刀の間合いには、まだ入っていない…なら
襲撃者は、サーモスコープの照準をローズィーに合わせると、引き金に指を置く
お前の事は嫌いではないが、サヨナラだ
引き金を引くと、光の線がローズィーの胸に当たる
殺った、そう思ったその時、カナタが射線に入り、光の線をまたしても鞘から少し抜いた状態の刀で受けている
次の瞬間、目の前が真っ暗になる、サーモスコープがエラーを起こし、ブラックアウトしたのだ
そう思った時には、ライフルを支えていた腕が、跳ね上がる。ライフルの重さは無くなり、自分の持っていたはずのライフルが地面に落ちている…いや、ライフルだけではない、見慣れたグローブをつけた手が、2つ
「くそ、でめぇ、なんで、くそぉおぉ」
やっと声になった言葉を吐くと、レインコートの様な光学迷彩が解けた身体は、カナタに蹴り飛ばされる
起き上がろうにも、両手が無い
なんとか頭と膝を使い起き上がろうとするが、今度はローズィーに、踏みつけられる
「動くな、止血しないと死ぬぞ」
カナタは、冷たい口調で言うと、ライオネルが襲撃者のヘルメットマスクを外す
「…茶部さん」
驚愕する3人、それは地球世界政府軍の日本方面部隊隊長の茶部少尉だ、そして彼は…
「何やってんだ、あんた!!」
ローズィーは踏みつけから、馬乗りになる
「やめろ、ローズィー」
カナタが制止する
「どうせ、俺への恨みとか、そういうのでしょ?」
カナタがそう言うと、茶部が罵声をあげる
「ああそうだよ!!分かってんじゃないか!!ギュウガ事案で指揮を執っていたのは俺だ!!!お前らがモンスターのキマイラ化を止められなかったから、あれだけの被害が出たんだよ!!!」
ローズィーが茶部を殴る
「またあんたは人のせいにするのか!!!!またカナタのせいにするのか!!!あの時と同じ、この場所で!!!!!」
ローズィーは、泣き始めている
「お前らのせいで、俺はカプトにも行けない!!軍にも残れないんだ!!!しかも俺の両手を奪いやがって、あの時の熊はダメで、俺はこんな大怪我させて良いのかよ!!舐めやがって!!俺は畜生以下の扱いしやがって!!」
暴れる茶部を馬乗りで押さえながら泣いているローズィー、ライオネルは応急処置用の医療キットを使い、茶部の両手の止血をする
「俺たちの命を奪おうとした人が言う事じゃない」
「ライオネル、こいつはなぁ、俺の人生よりも、動物の方が大切なんだよな。動物を愛してしょうがないんだ。やりたくてしょうがないんだよ」
茶部は罵声を止めない、自分は悪くない、カナタが自分の人生を奪ったのだという主張を繰り返す
「こいつ…狂ってるよ」
ローズィーが涙を拭い、気合を入れ直す
ライオネルは、茶部の足を縛り、話し始める
「茶部さん、あなたは自分の承認欲求でやっただけかもしれないが、政府軍に嘘の情報を流させた事、俺達の命を奪おうとした事、そしてこのレーザーライフルを調達した事、あなたの想像以上の罪だと言うこと、理解して下さい」
ライオネルが時計を見る
「5分もすれば、無線は使えるはずだ。隊長を呼んで、今後の相談をしよう」




