EP9 特殊性癖!?カナタの秘密1/3
ファルベブリッツがベータ地区で、地球世界政府軍相手に暴れた事は、世論の思考の天秤を大きく傾けるには、決定的な出来事となった
州兵と地球世界政府軍の対応に業を煮やした最新鋭の軍備を誇るベータ地区最大の米国軍が、首都で市街地戦を展開しようとしたが、ファルベブリッツは姿を消す
これに世論は『地球世界政府軍は必要無い』という答えを出す
そこから地球世界政府の動きは早かった、1ヶ月後には軍縮を発表、そして同時にカプトの増強を決定した
軍の切り捨ては、政府自身の存続を守る為には、やむを得ないと判断されたのだ
カプト増強の発表から1週間後
ギュウガ事案より…約2ヶ月後
グリニッジ標準時
10月26日 AM11:44
「でも何も変わらない…暇…」
白は自分のデスクに突っ伏している
モンスターの目撃報告は増えた。たぶん今までは無視されていた様な事も、通報があるのだろう
それだけファルベブリッツが暴れた事は、民衆に恐怖を与えた
モンスターの目撃が増えても、カプトに出動が回ってくる事は無かった。街に近い場合は政府軍が躍起になり出撃し、カプトが出動する事は稀になっている。それはそうだ軍縮が決まったとは言え、まだ施行されてはいない。軍も存在意義を示したいのだ
それでもさすがに国立公園内や動物保護区にはカプトに出動要請があったが、あれから3回、中国、オーストラリア、インドの動物保護区での出動で、モンスター駆除であり、キマイラ化はしていない事案であった為、比較的楽な出動だったと言える
霊獣と思われる獣の目撃もない。そもそも霊獣は伝説上の生き物、人目につく事なんてあるわけなかった
白のほかに、隊員室には雷斗、ローズィーがいる
「ったく、隣りで愚痴ばっかり言うんじゃねぇよ。あの怪しいお茶会は今日は無いのか?」
雷斗が言う怪しいお茶会とは、事務室に整備員や白が集まって、お菓子を食べている、あのお茶会だ
「今日は整備班が忙しいらしくって…って、あのお茶会、私大変なんだから、雷斗が出ればいいんだよ」
「…俺、嫌われてるのかもしれなくてさ…」
「えっ!?」
白は大きな目をさらに大きく丸くし驚く
ローズィーは眉間にしわが寄っている
「ローズィーに注意されてから、ちゃんと周りを気にする様にしてたらさ。この間、隊員室の前で中を覗いてる整備員の子がいて」
白は非公認雷斗ファンクラブの面々を思い出す
「どんな子?」
「金髪ショートで…」
「あっ大岡ミオかな?」
「俺が部屋に入ろうとしても、中を気にしてて、俺に気づかなくてさ。声かけたら、悲鳴を上げて、逃げて行ってさ」
それは、好きすぎての悲鳴なのに、と白は思うが口にはしない
ローズィーはさらに眉間にしわを寄せている
「そのミオちゃんもいるだろ。あのお茶会さ」
「うん、いるよ」
「この前、事務室に白を迎えに行った時、見えたんだけど、俺の顔見るなり隠れたんだよ……でも隊員の皆と居るときは、普通に話してくれるんだけど…一対一だと、目を合わせてくれないし、逃げようとしてるみたいに、話をすぐ終わらせようとするし」
白は、完全にシラケている
ローズィーは、青筋を立てて震えている
「…避けてる理由、今度2人だけになったら、それとなく聞いてみようかな」
「なんて聞くの」
「俺の事、どう思ってるのってさ」
するとローズィーが、ガバっと席を立ち、雷斗を指差しながら
「何もしなくてイイ!!」
怒り混じり、呆れ混じり、なんとも言えない声でローズィーは怒鳴る
「雷斗はあれか!?ステーションで恋愛シミュレーションゲームでもしてるのか??それともハーレムでも作るつもりなのか!!お前は何もするなあぁぁぁ!!!!」
すると、雷斗は悲哀の表情で
「みんなに笑って仕事してて欲しいだけだってのに…」
その表情はかなり美しく儚げでー
「こいつ!!!!やってんな!!!!やってるよな白!!??」
と、デスクの上で怒りだすローズィー
「こういう鈍感なところも雷斗の良いところだから」
と、やや棒読みでローズィーを制止する白
「こいつの鈍感さは、女の敵だ」
「さすがにそれは言い過ぎだよ」
雷斗は意味が分からず、少しムッとし食ってかかる
「副隊長とカナタと何が違うって言うんだ」
「ゴリマッチョの副隊長と雷斗が同じなのは、性別だけだろ!!」
「それもさすがに言いすぎかな」
ローズィーは怒鳴り、白はめんどくさそうにツッコむ
「じゃあカナタと俺、何が違うんだよ。背格好はだいたい一緒だろ」
「カナタは、雷斗と違って…」
「俺と違って?」
「…………」
さっきまで勢いよく喋っていたローズィーが固まる
「ほら、違いがねぇじゃねぇか」
「いや…違うんだ」
ローズィーは、ゆっくりと席に座り、俯いてしまう
「どうしたの?」
白がローズィーのデスクに行き、俯いてる顔を覗く
「白は、今年の春からだもんな、入隊は…カナタとの付き合いは半年か」
「そうだよ」
「雷斗と私は1年前、イプシロン地区に配属されてからの付き合いで……白、怖がらずに聞いて欲しいんだが」
「何よ、改まって」
白は、ローズィーの隣りのカナタのデスクの椅子に座る
「今は軍縮が話題だけどさ、ステーションが出来る前は、カプトイプシロンは20箇所、それぞれに2小隊いたんだよ」
「今よりだいぶ多いね」
「軌道衛星上に宇宙ステーションを作って、そこから出動すれば、理論上全ての地域に派遣出来るからという理由でカプトは縮小されて、カプト隊員の大多数が軍に移籍、あとはそれを機に引退。カプト縮小と見せかけて、軍を増強したって感じだよ。で、その年の新人とベテラン数人でステーション行きに選抜されたんだ」
「そうだったんだ…あれ?」
白は、口に指を当て、上を見て考える
「イプシロンステーションは、今年の1月に運用開始だったんでしょ?その時にみんなは宇宙に上がったんだよね?でも私以外、今の小隊を組んだのはステーションが出来る前?」
「あぁ、去年の10月1日…1年経つ。私達は日本担当だったんだよ…」
「そうなんだぁ」
「白は、補充要員で隊長のスカウトだっただろ?」
「うん。11月の大会を隊長が見てって…ん?補充!?」
まさかという表情をする白
「殉職!?」
白の発言に、顔を上げるローズィー
「いや…生きてる……人間関係で辞めた」
「びっくりした、なら普通なんじゃないの?部活でもあったし」
「部活と一緒にするなよ…って問題はそこじゃない」
「何?」
白の問いにまた顔を下に向けてしまうローズィー
雷斗はそんなローズィーの様子をみて話し始める
「その頃は、カナタと隊長と、その辞めた男性隊員が同じ小隊だったんだ」
「ふーん」
「カナタとその男が合わなくてさ」
ローズィーは俯いたまま
「私も、もう少し早く気づけば良かったんだけどね」




