EP8 僕たちはどう生きるか3/4
隊員室に戻るカナタとローズィー
雷斗はクロ助に餌を与えており、戻ったカナタに白がデスクからトトトっと駆け寄ってくる
「プレゼントって何だったの?」
キラキラした目でカナタを見る白
「日本刀だよ。日本刀は玉鋼で作られているからね。接近戦で使いなさいって」
「えっ見せて見せて」
「武器だから整備室の武器庫に保管されてるよ」
「あっそうか」
ローズィーは席に着き、カナタもクロ助の鳥カゴの方へ
「…副隊長は?」
出入り口から廊下を見たりし、キョロキョロとする白
「副隊長なら、格納庫でカササギの掃除の手伝い。罰だってさ」
「えっ…叱られたのって副隊長だったんだ…じゃあ」
と、デスクに戻り、引き出しから何かを取り出す白
「じゃーん」
手に持っているのは、わたあめだ
「さっきキムがくれたんだー。2つしかないから、副隊長がいない隙に分けて食べよー」
クロ助の鳥カゴの前で、受け取るカナタと雷斗
ローズィーと白はデスクで袋に入ったわたあめを取り出し、一口サイズにちぎりながら、食べる
「わぁ、ふわふわ♪」
と、喜ぶ白
それを見ながら、笑みを浮かべる雷斗と共に、カナタも雷斗とわたあめを食べる
「あのさ、雷斗」
「ん?」
「昼に食堂で話してた事」
「あぁ」
「雷斗は言ってたよな。モンスターの命に対しての話って」
「あぁ」
「俺は、モンスターと共存と言ってたのに、結局どう管理するかとか、食物連鎖とか、人間とモンスターどちらが上か下かで判断してたみたいだ」
「…あぁ」
「隊長に叱られたよ。もっと対等にモンスターに敬意を持って接しなさいって…俺の戦い方でバレてたんだな」
「…」
「雷斗はどう思う?よく考えたら、さっき食堂では雷斗の意見は聞いてないからさ」
白は、カナタの雷斗への質問が聞こえ、2人を見る
「雷斗はモンスターとどうすれば良いと思う?共存出来ると思うか?」
すると、雷斗はしばし目を閉じ考え、目を閉じたまま話始める
「確かに昼食の時、皆はモンスターをどう管理するか、それともモンスターに人類が絶滅させられるか、もしくはその逆か…みてぇな議論だったな」
「うん」
「確かに隊長の言うように、人間はモンスターに敬意はねえだろう。当たり前だ。モンスターに人類は多く殺されたんだから」
「うん」
ローズィーも雷斗の発言に集中する
「じゃあ…とっくの昔にモンスターが…ファルベブリッツが共存なんて無理だと、人類を見限って、そういう行動を取っているとしたら?絶滅させると宣言したとしたら?」
「そんな勝手に判断されてたまるか!!」
ローズィーは思わず、声を荒げ立ち上がる
「例えばだよ、ローズィー」
雷斗はローズィーをなだめる様に優しく言う
ローズィーはそれを聞き、口を尖らせながら着席する
「先に、見限られた可能性…か。確かになぁ」
カナタは、可能性を否定はしない
「俺、ファルベブリッツと話してみたいよ。本当に敵対する必要があるのか、ブリッツがモンスターの頂点だったら、和平交渉とか出来るじゃないか」
その言葉を聞き、雷斗はフフフっと笑い
「どうなんだろうな。人間だって地球世界政府があるのに、一枚岩じゃねぇからな」
と、カナタの持っているわたあめの袋から最後の一口を食べる
確かに雷斗の言うように人間も一枚岩ではなかった
ギュウガから街を守れなかった地球世界政府管轄の軍は、各国から非難を受け、軍縮が議論される事になる
モンスターやキマイラから都市を守る役割は軍が担っているが、在来生物を守る動物保護の観点からキマイラを生み出さない取り組みは現在、地球世界政府管轄でカプトが行っている。これには一定の世間の評価と理解があるが、稼働が少なく、戦闘経験もカプトより劣るが、人員と兵器はカプトの10倍以上の都市を守るだけの軍は本当に必要なのか?都市を守るのは各国に任せ、カプトを多くした方が効率的ではないか?と議論されているのだ
太平洋大規模災害から50年経過し、地球世界政府の存在意義も揺らいでいた
太平洋爆発は、先日のカプトイプシロンの報告でモンスターの転移だと解明。地球世界政府管轄の大爆発調査チームは、多くの予算をかけていたのにも関わらず手柄をカプトに取られた形となった
海面上昇と地殻変動による人道支援は、それこそ50年経過し、形骸化していた
地球世界政府の改変、巨大な組織の改変は容易に行う事は出来ない
世論の地球世界政府の改変、軍隊不要論、カプトの増強の声は日々大きくなっていった
報道は過熱するが、イプシロン地区よりも他の地区の方が熱心だった
「こればかりは、一隊員の私達は何も出来ないよ」
マルティナは気にせず任務に集中しなさいと日々言うが
「でも基本、暇なんだよなぁ」
約1か月後、9月20日AM9:45
白はデスクでダレていた
「暇だと、どうしても考えちゃう。増強されたって、暇人が増えるだけなのに」
デスクに突っ伏している白は、横にいるはずの雷斗が居ない事に気付く
「あれ?雷斗!?」
と、上体を起こす。向かいにいるはずのカナタもいないし、その隣のローズィーもいない
「あれ?皆いない!?」
気づくと隊員室には、白とライオネルと2人きり
「う…」
恐る恐るライオネルの顔を見る。ライオネルは白の視線に気づき
「ん?どうした?」
「みんなどこ行ったんですか?」
「隊長は午前の会議、ローズィーは汗を流してくるってさ、カナタはそれに付き合って、雷斗は…どこに行ったんだ?」
「…副隊長は、何を?」
「ん?俺か?…資料整理だよ」
挙動不審に応えるライオネル
「副隊長が?」
信じられないという感じで驚く白
「…おう」
白からは見えないが、イプシロン地区の地酒の紹介サイトがPCには表示されている
「白は、何もやる事ないのか?」
「…私だって…やる事あるし」
不貞腐れる様にまたデスクに突っ伏す白
そこに事務員でオペレーターを務めているキムが隊員室に入ってくる
「失礼します…あっ白。ちょっといい?」
「えっ、私?」
「うんうん。お菓子あるよ」
「はーい」
と、キムは白を隊員室から連れ出していく
「最近、キムに餌付けされてんな」
と、ライオネルは気にしながらも、地酒の紹介サイトを熟視する




