EP8 僕たちはどう生きるか2/4
整備室に行くカナタとローズィー。そこにはすでにライオネルとマルティナがいる
「あれ?隊長も??」
整備班に叱られると思い込んでいるローズィーは、マルティナがいる事に驚く
「はっ、まさか隊長にまでご迷惑を!?」
慌てるローズィーをきょとんとした表情で見るマルティナ
「何か問題があったのかな?ローズィー君??」
「い、いえ、何でもないです。なぜココに?」
「カナタ君の日本刀が届いてね」
マルティナがそう言っていると、奥から雨宮が鞘に納まった日本刀を持ってくる
「立派な刀だぞ、カナタ」
と持っている日本刀をカナタに渡す
「カナタのかたな…」
ボソッとライオネルが笑いながら言うと、マルティナに胸をポンッと叩かれ、静止させられる
「さて、カナタ君。君にこの日本刀を渡す意味が分かるかな?」
「俺が剣術を使うからですよね」
「それだけじゃないさ」
マルティナが雨宮を見ると、雨宮はグローブの端末を操作し、宙にカプトイプシロンの隊員達の武器使用率、消耗率のデータを表示させる
「これは俺達がまとめた隊員のデータだ。弾薬の管理やどういう場面でどの武器を使っているか、どういう調整をすれば、使いやすいとかを調べる為に使っているデータだな。カナタ、お前。モンスターに遠慮してるだろ」
雨宮の言葉に、カナタはグッと口を結ぶ
「どう言う事だよ。手加減してるってことか」
ローズィーは、少し怒り混じりにいう
「ローズィー、俺達は一緒に戦っていてカナタが手加減していた事あるか?。カナタは、効率よく手数を出来るだけ少なく、倒そうとしてるって事だ」
ライオネルの説明に、ローズィーは?を浮かべる
「それが何で遠慮なんですか?」
「苦しまない様に…だろ?カナタ」
頷くカナタ
「でもさ、第2小隊の接近戦って、私がメインでカナタがそれに合わせて、副隊長が援護しながら、高火力で討ち取る戦法じゃない!?カナタの手数が少ないのは、戦術的に当たり前でしょ?」
それを聞いて、マルティナ、ライオネル、雨宮は頷く
「つまりカナタ君は、ローズィー君に合わせながらも、致命傷を与えられる場面以外では、発砲や攻撃していないって事だよ」
「整備のデータでもその傾向が示せた、で俺が隊長に相談したんだ。白の狙撃の様に一撃で仕留められる術があるなら、カナタはもっと活躍出来ますよってな」
ライオネルがカナタの肩を叩きながら、話す
「ごめんなさい…」
カナタは謝る
「なんで謝るんだよカナタ」
ローズィーには、カナタが謝る理由がわからない
「ごめん、ローズィー。モンスターが苦しんで死ぬのを見るのが、嫌なんだ」
カナタの言葉に、ローズィーは一瞬なにかを言おうとするが、グッとこらえ
「カナタの性格じゃ…仕方がないと…思うよ。でも…私はそんな優しくは出来ないぞ」
と、言葉を選ぶ
「いや、結局は命を奪っているんだ。結果は変わらないのに…苦しまない様にって…俺の優しさは自己満足…だよ」
申し訳なさそうにカナタ、それを見て雨宮は
「効率よく、最小限の攻撃で、相手を倒す。それは俺達は助かるさ、整備も楽になるからな」
雨宮は、データを見せる。それは他の隊員達とカナタの装備の整備時間のデータだ。明らかにカナタの装備にかかっている時間は少ない
「カナタ君の想いがどうであれ、効率的な倒し方は、酷く無惨に見える物だと理解して欲しい。この刀を君が使えば、これまで以上に成果を出せるだろう。でもモンスター…ファルベブリッツから見れば同胞を無慈悲に殺していく殺人鬼だ。特に苦しまずに死を与える攻撃を、優しさと思っているなら尚更だ。それはサイコパスに過ぎないって事を覚えておいて欲しい」
真剣な目でカナタを見るマルティナ
「隊長、カナタはそんなサイコ野郎じゃないですよ」
ローズィーはカナタをかばうが、カナタは黙ったままだ
「命と真剣に向き合ってくれカナタ君、君の……いや私達がモンスターの命を奪う行為は、自然の摂理から外れた行為だ」
カナタ、ローズィー、雨宮は先程の食堂での会話を思い出す
人間は50年前まで、食物連鎖の外にいた。そして今はモンスターが現れた事で、食物連鎖に組み込まれた
カナタはそういう認識だった
しかしマルティナは、人間がモンスターの命を奪う行為を自然の摂理から外れた行為と言った
「ローズィー君もライオネル君も、もちろん雨宮君達も、私達は駆除という言葉を使って、人間の都合でモンスターの命を奪っているって事を忘れないで欲しい」
マルティナがそう言うと
「でもモンスターも私達の命を理不尽に奪う、それを許せって事ですか!?あいつらは私達の命なんて何とも思ってないから、管理するか、絶滅させるしかない」
とローズィーが訴えるが、マルティナは静かに
「この世界で理不尽に人間の命を奪うのは、人間だけだよ。モンスターもなにか理由があって、キマイラ化し、人類を襲っているのかもしれない」
マルティナがそう言うが、カナタ達3人は八咫烏からの情報で、モンスターは最強の種になる、この世界の最強の人間以上の種になる為に霊獣を探し、人間を越えようとしている事を知っていた
「隊長、自然の摂理と言うか、本能のままにモンスターは人間を超える、この世界の最強種になりたくて、キマイラ化しているとしたら…」
と、ライオネルがその情報をマルティナに考察させる様に、あくまでも自分の考えとして言う
「面白い考えだね、ライオネル君。では本能では無いとしたら?なぜ人間を超えたい?なぜモンスターは最強の種になりたがる?」
逆に問われるライオネル
なぜモンスターは最強種を目指しているか3人は考えた事もなかった。その過程で霊獣をキマイラ化から守らなければいけないという使命感で、失念していた
「ブリッツは、我々の前に現れた時、2度同じ事を言っていた。人類を絶滅させ、モンスターの頂点に立つ者…と、おかしいと思わないかい?」
マルティナの問いに一同は首を傾げる
「ブリッツは、モンスターと言ったんだ。モンスターとは人間がそう名付け、人間だけがそう呼んでいるんだよ」
ハッとする一同
「つまりファルベブリッツは、人間の可能性が高い」
マルティナの考察に驚愕する一同
八咫烏も力を奪ったブリッツは、人間だと言ってた
「もしかしたら、ファルベの4人全員が人間という可能性もある。しかしレッド、ブルー、グリーンとブリッツは敵対している。つまりモンスターと融合した人間が複数いると言う事、そしてモンスターには、群れと言う概念、或いは文化がある。もしかしたら人間と変わらない位の文化があるかもしれないんだ。例えばあの魔法陣が科学の力だったら…」
マルティナは、もう一度カナタを見る
「もしそうだとしたら、例えば優しさだと言い、苦しんで死ぬのを見たくないから、確実に簡単に効率よく家族の命を奪った殺人鬼が同じ事を言ったらどうかな?それはサイコパス的な考えだと理解出来るだろう?」
「…はい、理解出来ます」
「私達は害獣としてではなく、対等な相手としてもっとモンスターを知る必要がある。管理する為や絶滅させる為にモンスターを駆除しているんじゃないんだ。私たちの目的は、動物や人をモンスターから守る事、それこそが我々の仕事だ。だから駆除という仕事は、仕事としてやらなきゃいけない。でも相手の生命を奪うのだから、仕事だからと考える事を止めるのではなく、効率だけを考えるのでは無く、敬意を持って欲しい…私達はモンスターと戦争をしているんじゃないんだ」
モンスターと戦争をしているわけじゃない。それはカナタの心に響く。そしてローズィーの認識も変える
「はい」
「カナタ君、もう一度聞く。君にこの日本刀を渡す意味が分かるかな?」
「はい、ちゃんと命と向き合います。敬意を持って戦います。俺は無意識に、モンスターを人間よりも下の存在だと決めつけていた様です」
カナタの目は真剣そのもので、マルティナの目を見つめる
「カナタ君、刀は銃と違って、直接相手を倒す感覚が自分に伝わる武器だ。これまで以上に覚悟が必要だよ」
「はい」
マルティナはローズィーに視線を移す
「ローズィー君もだ。君がモンスターから与えられた痛みを、モンスターにぶつけたい気持ちは、よく分かる。分かるからこそ、同じ事をしてはいけないよ」
「…はい」
「今は納得出来なくても、そう努めてくれ。そしてライオネル君」
「はい」
「カササギに備蓄している、おつまみは没収しました」
「ほえ?!」
マルティナは変わらず真剣な目で話し続ける
「自室に置いていると、タン司令に勝手に持っていかれるからって、スペースシップの中に置くのはどうかと思うよ」
「いや、なんか俺だけ叱られてる方向性が違う…」




