EP8 僕たちはどう生きるか1/4
TVのニュース番組やワイドショーは連日、暴れるギュウガとファルベキング、そしてギュウガを《《消し去った》》ファルベブリッツを報道していた
「あのファルベブリッツは、人類を絶滅させると言っているのですよ。正義の味方なわけないじゃないですか」
政府関係者を名乗るコメンテーターが、一部の界隈で言われるブリッツヒーロー説について否定をしている
「しかしファルベキングを倒し、ギュウガを止め、戦いを終わらせたのは確かです」
別のコメンテーターがそう言うと、ブリッツの映像が流れる。それを数人の出演者で見ている
「ブリッツが呼びかけていた、レッド、ブルー、グリーンこそ人類の味方になる存在なのでは??」
「映像はありませんが、ブルーの存在はオーストラリアで地球世界政府関係者によって確認されています」
「ブルーは、政府軍を手助けしたとも言われてますね」
「しかしブリッツは、カプトの報告では日本だけでしか目撃されていない。レッド、グリーンはどこにいるのかも分からないんです。直接ブリッツと戦えるわけではないのではないですか?」
「そもそも地球世界政府軍が頼りにならないのは問題だと思いますね。今回ギュウガ事案では、1つの街が壊滅しているんですよ」
「政府軍は、各国の軍隊のお下がりの兵器を使っているのが現状です。いまだ戦闘ヘリを使っているんですから、もっと増強するべきでは!?」
「政府軍はモンスターとの戦闘が目的の軍隊ですから、過剰な兵器は必要ないんです」
「ここ何年、稼働率では動物保護部隊の方が、多く稼働していますから、実戦経験が乏しいんです」
などなど、ワイドショーならではの会話が続いている
イプシロンステーションの食堂兼談話室
昼食時、その放送を見ている整備員達
「言いたい事、言いやがって、政府軍の兵士がどれだけの訓練と経験を積んで、いつ来るかもしれない戦いに備えてると思ってるんだよ」
整備員の雨宮はモニターを睨みつけながら、悪態をつく
「俺達と違って、地球で訓練の毎日だからなぁ」
と、別の整備員も話す
「なぁ、カナタ。お前はどう思うよ」
雨宮の視線の先、隊員達がいるテーブルとは別のテーブルで昼食を食べているカナタ、雷斗、ローズィー、白
「えっ俺!?何?!」
「何ってお前が一番、戦闘とか物騒な考えから離れてるだろ」
「いや、白のほうが戦闘から縁遠いだろ」
とカナタは言うが
「整備班の目を欺けるかよ。狙撃手の白は、駆除数も副隊長と並んでるし、ライフルの消耗率はローズィー並だ」
それを聞き、ローズィーは
「第1小隊の攻撃の要は白。うちの最大火力は副隊長。当たり前じゃないのか?」
と疑問を持つが、それを聞いている雷斗が
「武器をどれだけ使っているか、どれだけ駆除してるかって話じゃないだろ。モンスターの命に対しての行動の話って事だろ」
と、冷静に言う
「そうそう、そういうニュアンスの話さ」
と雨宮が雷斗の言葉にのる
「俺もそれは感じてる。モンスターに対して、カナタは他の隊員とは違うってな」
と雷斗の言葉に、カナタはうーんと考えながら、水を飲む。しばし目線が宙を仰ぐ。それを見て、ローズィーが口を出す
「カナタは、モンスターといつか共存出来るかもしれないって思ってるんだよ」
ローズィーが、そう言うと食堂にいる整備員達は「はぁ??」と言いながらカナタを見る
「いや、語弊がある語弊がある」
とカナタ
「じゃあちゃんと自分の口で説明しろよ。カナタ」
「口では説明難しいんだけどさ。うーん。ほら街の害獣駆除業者ってあるだろ…そういう感じと言うか…街に象が入って来ない様にしているレンジャーみたいな感じって言うか」
言葉を探してるカナタ
「…モンスターが日常にいる事が当たり前の世界って事?」
白がいう
「そんな感じかな。自然のままに生きるなら、今はまだ数が適正ではないんだよ。そりゃ50年前に比べれば圧倒的に少ないけど、まだ地球の環境で共存して行くには、数が多いと思うんだ」
カナタは考えながら言うが
「ほら、モンスターと共存しようとしてるだろ?」
ローズィーは、ため息混じりに呆れた声を出す
しかし雨宮は、うんうんと頷いて
「やっぱりそういう考えだろ。俺が言いたかったのはそれ。戦闘とか物騒な考え方じゃないよな」
「まぁ、そういう意味ではな」
「だから俺はお前に聞いたんだよカナタ。お前はこのワイドショーをどう見てるかって」
「そもそも議題が違うかな。モンスターに対して、キマイラに対して、政府軍の武装がどうだとか、俺達の稼働日数とか、そんな事を議題にしても、モンスターのいる世界では生きていけない…考え方が、殺す、殺されるだけじゃ、平和なんて来ないのにさ」
「カナタ、お前はそう言うけどさ。私の様に家族を失った人の感情は、どうする。無視出来ないだろ?」
「うん。難しいよな」
ローズィーの言葉に、カナタは俯く、すると雷斗はカナタの様子を見て
「カナタ。50年前まで、人間は食物連鎖の頂点…いや外だったと思わないか?」
「俺はそう思っている…」
「モンスターが…ブリッツが人間を絶滅させるって宣言してる、相手は共存なんて考えてないっつう事だぞ?」
雷斗は、そういうとローズィーは
「私も言ったんだよ。羊の牧場に狼が共存出来ると思うか?重武装で侵攻してきた敵軍に、戦争反対って歌って抗議するのか?って」
と前に話した事を雷斗や雨宮、整備員達に言う
「私も雷斗が言う様に人間は食物連鎖から外れていたと思う。そもそも肉は養殖したり、植物は遺伝子組み換えて栽培したり、人間に合わせて品種改良をしていただろ?。それで人間の生活が成り立っていたんだからさ、人を襲う動物がいるなら管理していかなきゃ」
ローズィーの言葉は否定出来ない。50年前まで人の生活とはそういう物だった、そのシステムが無意識に文化圏の人間には根付いている
「せめてモンスターが、なぜ動物と融合して、人を襲うのか理由が分かればなぁ」
と、カナタは考え込むとローズィーが
「理由がわかって納得出来ても変わんないよ。体調不良で医者に行って風邪ですねって理由だけ言われても薬をもらわなきゃ治らないのと同じだ。相手が生きていると、こちらを蝕むんだ」
それを聞いて、雨宮は
「ローズィー、カナタが言ってるのは、それさ」
「はぁ?」
「薬をもらって風邪を治して、次また風邪にならない様に対処し行動する、病気と付き合って生きていくって事だよな?モンスターも同じく付き合って生きていくしかないが、致死率が高いから問題になっているって事さ」
すると雷斗が
「致死率が高い病気は根絶するか、感染媒体が絶滅するかだろ?」
それを聞いて、全員がうなだれる
「議論が堂々巡りすぎる」
「自然の摂理だな」
「結局この世は、どちらかが滅ぶか、どちらかに管理されるかしかないのか?」
など話に参加していた者達は口々に喋る
「って事は、モンスターの問題は、ありふれた凄くシンプルな問題だって事だと思うんだけどなぁ」
と、カナタ
昼食休憩の終わりを告げるチャイムが流れると、ガヤガヤと食堂を後にする整備員達
「あっ第2小隊は整備室に来てくれ。プレゼントと説教があるぞー」
雨宮が食堂を出ながら、ついでの様に言うと、ローズィーとカナタの顔が曇る
「説教ってあれか?最近備品壊しすぎとか…」
「ローズィーのカササギの中のお菓子の備蓄がバレたんじゃないのか?」
「あれは副隊長のおつまみが大半だぞ」
反論をするが、反論してもしょうがないと言いながら理解しているローズィーの肩が下がっていく
食堂を出る雷斗と白
雷斗の背中を追うように歩く白の目線は、雷斗の背を見たり、廊下に落としたりと落ち着きがない
「何か言いたい事でも?」
雷斗は歩きながら、振り返らず白を見ずに尋ねる
「カナタに話してみたら…分かってくれるかもしれないよ……雷斗がやろうとしている事」
白は小さな声で、オドオドとしながら言う
すると急に立ち止まる雷斗。急に立ち止まったので、ビクッと反応する白
ゆっくり顔だけ振り返る雷斗の目は鋭く、怒りにあふれている様だ
「あっいや、私は…」
と、白は取り繕うとするが、雷斗はまた歩き出し
「…すまない」
と一言、白に謝罪する




