EP6 緊急事態コンディションブルー2/4
地球から各カプトのステーションまでの所要時間は1時間半。2020年代では約4時間から6時間かかっていた時間は大幅に短くなった。技術の進歩というのは、人間の想像を軽く越える…いや人は可能な事しか想像出来ないのかもしれない
50年前の太平洋大災害後、地球世界政府では、宇宙移住や火星移住計画も立案されたが、コストと時間がかかる事、そして火星をテラフォーミングすると言う事は、新たな環境破壊をすると言う事であり、人類はモンスターと同じ事をしてはならない、と計画は見送られた
結果、スペースシップやカプトのステーションに使われている疑似重力システムが開発、発展し、テラフォーミングを必要としない宇宙進出が行われている
砂丘から隣の県、山間にあるカプトの特殊弾頭の材料を作っている工房に行くには、スペースシップが駐められる場所からドローンバイクで2時間半ほどかかる
それよりも軌道衛星上のステーションの方が時間的には近い
隊員室で飼われている八咫烏
「こうやって見ると普通のカラスにしか見えないね」
とローズィーは、餌を与え、鳥籠を掃除しながら話しかける
『ありがとう』
と八咫烏は礼を言うと
「礼を言うのは、私達の方だよ。ガルイラの時も、あなたの情報のおかげで対処が上手くいったし、何よりあの力のおかげで皆を守れた」
ガチャっと隊員室の扉が開く音がし、ローズィーは平静を装う。入室したのは雷斗だ
「ローズィー1人か?誰かと話してなかった?」
「クロ助と話してたんだよ。なぁ〜クロ助」
ローズィーが呼びかけると、カァ〜と八咫烏は鳴く
「…安易な名前だよなぁ」
「じゃあ雷斗は、副隊長の案【烏田カラ右衛門】か。白の案、暗黒丿翼って書いて【ダークネス フリューゲル】が良かったか?」
「ありえねー」
「だろー。隊長の案が1番まとも」
その言葉を聞いて、しばし考え込む雷斗
「ローズィー、最近隊長が少し変だと思わないか?」
「そう?私にはいつも通りに見えるけど」
「俺はいつも一緒にいるからそう思うのかもしれねぇけど、時々心がここに無い感じがするんだ」
「いつからさ」
「あの鳥人間と遭遇したくらいか、その後だと…」
「鳥人間に関係があるのか?」
鳥人間…つまり自分達に原因があるのかと、ローズィーは警戒する
「それが…見ちゃったんだよな」
「何を?」
「先月のオーストラリアのガルイラの件の後、軍から報告があった時」
先月、ガルイラ戦後ー
地球世界政府軍のハドソン曹長の下に行くマルティナ。その表情は高揚的であり、少女の様であるが、指揮官としての責務がニヤける顔を抑えつけている様に雷斗からは見えた
「ガルイラと鳥人間は!?」
「ガルイラは、その鳥人間が撃破したよ」
「何色の鳥人間ですか!!」
「青だ」
「…そうですか」
ハドソンから青と聞いた瞬間にその表情は、はっきりと真顔になる
「急に興味なくしたんだ。心が無いみたいな感じになって」
「見間違えじゃないの?」
「確かに表情が消えた様に見えた…変な宗教にハマってんじゃないだろうな」
「…いやぁ本人が変な宗教の女神様だろ」
マルティナに熱狂するフヨウ教徒を思い出すローズィー
「何だそれ」
「ほら、隊長の……」
そう言いながら、ローズィーはハッとする
「雷斗あんたさ、親衛隊の非公認ファンクラブに心当たりある?」
「ん?……あぁ、もしかして白のフィギュアを作って整備班長に怒られたって奴らのこと?」
「ヤバ!!やっぱりそうじゃないか」
「何がだよ」
マルティナは普段仕事以外は我関せずという感じだし、白はマルティナと雷斗の人気で自分は苦労していると嘆いていて自分の人気に気づいていなかった
「あんた、試合の時の黄色い歓声が自分に向いてた自覚ないだろ!!」
「はぁ?試合の時はいつも応援するし、されるもんだろ」
「無自覚すぎる!!第1小隊、全員無自覚すぎる!!!!あれか?モテる人はそうなのか?あれが通常なのか!!??天然のたらしはキモいわ」
「????」
「安心しろ雷斗、隊長どころか、第1小隊全員、人の心が無いわ。はぁ〜怖い〜」
そそくさと鳥籠を元に戻し、掃除道具を片付ける
「……雷斗、天然たらしの男子は女の敵だからな」
そう言い残し、ローズィーは部屋を後にする
残された雷斗は、八咫烏の鳥籠を覗き込み
「隊長には、おかしくなってもらうのは困るんだよな。なぁクロ助。あの金色を探してもらわないと」
八咫烏はビクッとなる
『金色…私を探しているのか?それとも私の力を奪ったあの人型キマイラの事か?』




