EP6 緊急事態コンディションブルー1/4
8月8日。日本、第17地区、AM7:46
この時代において、日本の夏は21世紀よりも過ごしやすい夏ではあった
海面上昇は、太平洋大規模災害、つまりモンスター達の転移による地殻変動が理由であったし、その時、温室効果ガスが適度に宇宙に放出された為、地球温暖化現象も落ち着いていた
何より人類の総人口も減っている事も要因の1つでもある
なので、モンスターの襲来が地球の環境を人間が過ごしやすい環境にしたというのは、皮肉が効いていた
しかし過ごしやすくなった日本の夏だが、失われた物がある
砂浜だ
温暖化が叫ばれていた頃、1m海面が上昇すれば日本の砂浜は無くなってしまうと言われていた
地殻変動により海岸線が沈降し、平均10mも海面が上昇
つまり海面が上昇したという表現よりも、日本が沈没した…と表現の方が正しいのかもしれない
日本海側には砂浜が残っている場所もあるが…その場所は少なくなってしまった
第17地区、鳥取砂丘。ここには絶滅危惧種であるイソコモリグモが生息していた
凄く小さな蜘蛛であるが、絶滅危惧種である為、近辺のモンスターの発生に、カプトが出動する事になったのだ
モンスターが銃弾に撃ち抜かれて、絶命している
銃撃によって無惨に転がるモンスターの死骸。真夏の刺さるような強い日差し。目の前には美女3人美男1人。着衣は男女共にカプトの装備品である迷彩服。女性の一人は大型のスナイパーライフルを引きずる様に持ち、もう一人はアサルトライフルのマガジンを数え、もう一人はキビキビと現場を指揮し現地の処理班と死骸の処理について話し合い、男性は、砂丘の上から辺りを警戒しているだけで絵になる
そんな光景にライオネルはため息をつく
「カナタ…どう思う?俺達の夏、これで良いのか!?」
カナタはそれを聞いて、えっ!?と驚く
「何を言ってるんですか、副隊長…って言うか、南半球に行けば冬じゃないですか……」
「1日、太陽が登って沈むまで、必死に生きたいだろ!?明日、太陽が登る時には、希望に満ちた気持ちになりたいだろ」
「いやステーションに戻れば、1日16回朝日を見ますけど…」
「俺はそういう事を言ってるんじゃあない。浪漫の話だ。この残された砂浜に、浪漫を感じないのか!!??」
「砂浜って言うか、砂丘ですし……」
カナタはライオネルの視線の先に、マルティナがいるのに気づき
「…20世紀や21世紀じゃないんですよ。まさか海水浴デートに行きたいとかじゃないですよね?」
「……浪漫だ」
ライオネルは目を閉じ、白い砂浜にビキニ姿のマルティナを想像する。それはグラビアアイドルのイメージビデオの様で……
変な妄想でもしてるんだろうなとカナタは白い目でライオネルを見ながら
「ちょっと俺から見たら隊長はお姉さん過ぎるかなって」
「カナタ、お前分かってないな」
「何をですか…それに隊長を海に行こうって誘っても、遠泳訓練になるだけですよ」
「だよなー」
ハハハと笑うライオネル
遠くのその笑い声で、ライオネルに反応するマルティナと白
「副隊長、楽しそうですね」
と、白は不思議そうにライオネルを見る
「いつも楽しそうなのは、ライオネル君の良いところだよ」
「そうですか?う~ん」
「そうだ、今日はこの後、ライオネル君とカナタ君と白君には隣の県の島根県に行ってもらう」
「えっ!?」
「せっかく近くに来たんだ。君が使っている特殊弾頭を製造している工房に挨拶をしておいで」
そう言うと、マルティナはライオネルとカナタに近づきながら、2人を呼ぶ
「苦手なんだけど…」
白はまた笑ってるライオネルを見ながら、独り言を言う
第2小隊のスペースシップ鵲が飛行、操縦はライオネル、サブ席にカナタ、いつもローズィーが座っている席に白が乗っている
「いよいよ、カナタの刀が納品か……韻を踏んでるな、カナタの刀」
ハハハっと笑うライオネル。カナタは反応無し、白は少しびっくりしている
「ねぇ副隊長、いつもこうなの?」
小声でライオネルに聞こえない様に、カナタに耳打ちする白
「ん?こうって何さ」
「なんかフザケてるって言うか」
「副隊長は真面目だぜ??」
「なんか、私が見てる時は、フザケてる事が多いんだよね」
先月の剣術の試合の時もそうだった
「同じ小隊じゃないから、いつもフザケてる様に見えるだけじゃないか?俺達といる時は、頼りになる先輩だよ。隊長に比べたら、そりゃ多少はフザケてるかもしれないけど」
「マルティナ隊長だって変な時はあるけどさ」
カナタの言葉が腑に落ちない
「…副隊長、質問いいですか?」
白はライオネルに声をかける
「どうした?改まって」
「なんで副隊長はカプトに?」
すると、操縦をしながら、うーんと困った様に首をかしげるライオネル
「それは難しい質問だな」
「難しくないでしょ」
「なんで生きてるかって言う質問と俺には一緒なんだよ…白なんで生きてるんだ?」
「何それ……私は、今は強くなりたいよ。皆よりも」
白は3月まで一般の大学生。射撃大会を総なめする程の腕前で、カプトにスカウトされていた
「訓練は辛いか?」
ライオネルは優しく尋ねる
「そりゃあね、私は全然運動らしい運動して来なかったから…誰かがやって、それを吸収してやってきたし、自分の身体を使う事には慣れてないよ」
「天才肌なんだな」
「お世辞は辞めてね」
やっぱり苦手だ
ライオネルは人を思いやる力があると言うか、気持ちを察してくれる
その優しさが白には、少しむず痒かった
「でもな白、強さって難しいぞ」
ライオネルは、なにか思うところがある含みで言う




