EP4限定メニュー争奪戦2/3
メイン宇宙ステーションの訓練施設内の武術場
カプトイプシロンの面々が防具に身を包み、竹刀を手に並んでいる
ルールは剣術であれば、何でもOK。使用するのは一般的な竹刀の長さ3尺9寸約120cm。これより長い物は使用禁止だが、60cmを2本、30cmを4本など、長さの合計が120cmを越えなければ使用可能。
例えばマルティナは80cmを右手、40cmを左手に持つ二刀流スタイル、ローズィーは同じ二刀流でも60cmを逆手持ちスタイル。ローズィーの場合は拳闘や蹴り技有りの格闘技が得意な為、それに合わせて二刀流にしているだけで、マルティナの二刀流とは雲泥の差があった
総当たり戦の初戦一組目は、ライオネルvs白
「我こそは、タン司令の酒の友にして、珍しく二日酔いの戦士、ライオネルだ!!」
まるで歌舞伎のような見栄をきるライオネル
「どういう事かな、これは」
眉間にシワを寄せ、ライオネルから司令に目線を移すマルティナ
「酒は飲んでも、飲まれるな!だな」
「あのライオネル君が飲まれるとは、どんな飲み方したんですか」
「...冗談だよ。昨日は深酒してない」
「本当ですね?」
「妖怪よっぱらいめ!!いつもふざけて、やる気ないの!!??この元橋 白が成敗してくれる!!!!」
白はまるでヒーローポーズの様な見栄をきる
マルティナたちは、2人のヒーローショーの様な立ち回りを見て、深いため息をつく
勝負は妖怪よっぱらい、ライオネルの勝ち
「あれだけ立ち回れるなら、二日酔いではないね」
と、マルティナが言うと、タン司令はホッとする
続いて初戦2組目、ローズィーvsカナタ
先も言った通り二本の竹刀を逆手で持つローズィー
カナタは、基本的な構えといえる「中段の構え」
「いくぞ!」
ローズィーがジャブの様に左の逆手持ちの竹刀を振る
カナタはそれを見切り、バックステップする
そのカナタの右足に踏み込むようにローズィーは足を合わせ、右の大振りする
カナタはそれにポンっと小手打ちを合わせる
右の竹刀を落としてしまうローズィー
「っく、さすが」
ローズィーの表情を確認するカナタは、面を打ち込む
勝者、カナタ
二人の立ち回りを見るマルティナとタン指令
「カナタは腕をあげたようだね」
ローズィーとカナタが握手する様子を嬉しそうに見るタン指令
「モンスターとの戦いは銃撃戦がメインですが、モンスターがいる場での動物保護では接近戦になりますし、動物の生態に詳しく、誰よりも動物を愛してくれているカナタ君が居てくれると助かります」
「隊の編成をマルティナに一任して良かった」
第1小隊の編成は、狙撃を得意とする白が援護、最前衛にマルティナ、オールラウンダーの雷斗が状況に応じて立ち回る
例えば前回の八咫烏の件など索敵の場合など、マルティナと白が一緒に行動し、雷斗は単独で動いて索敵。目標発見や戦闘する危険がある地域に入る場合、まずスニーキング能力の高いマルティナが先行し、白と雷斗はマルティナの合図の後に合流、白の特殊弾を用いた意識の外からの狙撃する事を定石としていた
第2小隊の編成は、これよりも戦闘特化型だ
まずローズィーは雷斗には及ばないものの何でもこなすオールラウンダーだ。特に銃火器に関して言えば、雷斗以上に精通しているし、白の様に狙撃に特化しているのでなく、サブマシンガンやショットガンで前衛もこなし、銃火器が使えない場面でも拳闘やキックボクシングなど格闘技が使える
そしてそれを援護するカナタは、銃火器は並みの扱いだが、マルティナが評価した様に動物保護の場合、カナタの能力は大いに役立った
ライオネルは体格を活かした重火器を扱え、接近戦でも2人を援護し、守るような戦いが出来る
共にこれ以上ない編成と言えた
雷斗が試合場に出ると
「きゃーーーー雷斗くーーーん」
と黄色い歓声があがる
「なんだ、あれ」
カナタが呆気にとられていると、白が説明してくれる
「あれは雷斗親衛隊...主にイプシロン整備員と本部およびイプシロン事務員の女の子で構成された非公認ファンクラブだよ」
「非公認ファンクラブ!?」
「...娯楽がないからねぇ、雷斗さんをアイドルとして見てるんだよね」
「そういうもんか?」
次にマルティナが試合場に現れる
「ふ☆よ☆う!!、ふ☆よ☆う!!」
今度はステーションがビリビリと唸り揺れる雄叫びにも似た歓声があがる
「あれは、マルティナ隊長を戦乙女として崇拝し、イプシロンのみならず、全ステーションに支部があるって噂がある。フヨウ教の信者だね」
「えっフヨウ教!?」
「宗教の自由は保証されているからね。誰も強く言えないまま、どこで発注したのか隊長の銅像を祀ってるらしいよ」
白が苦笑しながら説明する
「隊長も雷斗さんも人気過ぎて、あれに毎日追われる、わたしの苦労がわかる?」
と苦労話をする白だが、カナタもローズィーも愛想笑いになる
「(ヒソヒソ)カナタこの間のこと、白に言った?」
「(ヒソヒソ)言うわけないだろ」
先日、第2小隊のスペースシップ「鵲」の整備中、ライオネルを含めた3人でコックピット周りを整理している時に、それは起こった
ライオネルがサブカメラの動作確認をすると、整備員がプロ技術を使い、自作の白のフィギュアを売買している姿が映し出され、ライオネルはそのままカササギを飛び出し、厳重に注意をしていた
「(ヒソヒソ)あれはさすがに引いたわ。隊長だけじゃなく、白までフィギュア化しているなんて」
「(ヒソヒソ)あいつら、雷斗のフィギュアも作って売ってるらしい」
「(ヒソヒソ)良かったわ、私たち第2小隊は、第1小隊みたいに隊長みたいな美しさとカッコ良さないし、白みたいな美少女じゃないし、雷斗みたいなカリスマ性ないし」
と、ローズィーは言うが、カナタは、確かに自分はごく普通で、ライオネル副隊長はマッチョ過ぎて女性受けは無いかもしれないけど、ローズィーが一番イプシロンの女性の中で、女性らしいスタイルで男受けは良いと思っていた
「さて、隊長頼みますよ!!」
マルティナと雷斗が始まると、ローズィーは目をギラギラさせている
この性格じゃなきゃ、隊長や白と同じくらい人気だろうに...とカナタはため息をつく
ただ言葉にはしない。ローズィーはそういう事を全く望んでいない、ローズィーは誰かの恋愛対象になる事、誰かに好かれる事をひどく嫌がっている
カナタは詳しくは知らない...いや、聞けなかった
イプシロンにお互い配属され、自己紹介をした時、ローズィーはこう言った
「ローズマリー・タケハヤです。父方が日系だという事もあり、イプシロンに配属になりました。私は家族をキマイラに殺され、モンスターを絶滅させる事が目的で、カプトに入りました。ローズマリーと呼ばれると、家族を思い出し怒りが沸きますので、ローズィーと呼んでください。宜しく」
家族を殺された
言葉として、その結果だけを報告したに過ぎない。ローズィーの愛称は学友など家族以外も呼んでいたので慣れているが、ローズマリーと言われると、家族を、特に父を思い出すらしい
そしてローズィーの両足、いや下半身はサイボーグ化されている
義手や義足から派生したサイボーグ技術は、内臓機能、脊髄以外ならば全てがサイボーグ化で応用、代用がきく時代になっていた
ローズィーが家族を亡くした時、ローズィーも瀕死の傷を負った
その結果、ローズィーの腰から下はサイボーグ化している
生きる為に必要な臓器で回復の見込みの無い臓器は、移植や人工の物で補った
しかし女性としての機能は失ったと聞いている
それを気にしてスタイルや性的な話題を極端に嫌がる傾向にあった
サイボーグ化の辛いリハビリを耐え、人並み以上に体を酷使する戦闘動物保護部隊になぜ入ったのか、モンスターを絶滅させる為...それだけとはカナタには思えなかった
ワーーーーと、キャーーーが混じる歓声が上がり、カナタを思考の世界から現実に戻す
「隊長!!さすがです!!」
ローズィーも声を上げて喜んでいる
カナタが試合場を見ると、肩で息をするマルティナと、両手を床につけ、這いつくばう雷斗
マルティナが勝ったのだ
「カナタ、隊長に負けてくれ!!」
「八百長はやんないんじゃなかったのかよ」
ローズィーの懇願に、カナタは笑いながらつっこむ
マルティナは、這いつくばる雷斗に手を伸ばし、雷斗を優しく立たせる
その行動に、雷斗非公認ファンクラブもフヨウ信者も、また歓声を上げる




