EP26 異世界転移は、不幸の始まり2/4
第三次世界大戦とは、直接的な戦争では無かった
各国がイデオロギーをぶつかり合わせたネット上での情報戦やサイバー攻撃による企業テロ、銀行のハッキングやドローンを用いた自爆テロの応酬を第三次世界大戦と言っているのだ
ここから実際の武力を持って世界の覇権を争った物を第四次世界大戦と言う
西暦で言うと、2X50年代後半の話だ
その頃、1人の天才科学者が新たなエネルギーの研究を行っており、実験の日々を送っていた
その研究とは、重力とは加速運動と同じという一般相対性理論の原理を用いたエネルギーの開発だ
そもそも発電とは、タービンを回して発電する事であり、何でタービンを回すかで、水力、風力は、そのままの力でタービンを回し、火力、原子力は、熱で水を沸かした蒸気の力でタービンを回す
つまり重力の力でタービンを回すという事だ
例えば軌道エレベーターがあれば、話は早い。重力と自転を利用し、上下するエレベーターの力でタービンを回し発電すればいい
しかし軌道エレベーター自体の建設も、利権が絡み、国家予算を超えた協力が必要な為、第三次から派生した第四次世界大戦中の世界に建設は難しい
もっと簡単に地球の重力で発電出来れば、さらに言えば自転や公転をエネルギーに変える事が出来れば、究極のエコであり、永久機関とも呼べる夢の発電機関を手に入れられるのだ
夢物語ではある
しかしその科学者は、本気で研究を行った
一般相対性理論では、重力とは質量を持った物体、あるいはエネルギーが周囲の時空を歪める、そのものである事に注目し、時空を歪ませる実験を絶えず行っていた
その科学者の名は、アイザック・スミスと言う
アイザックは自分の名前が嫌いだった
子供の頃から彼の口癖は「なぜ?」だった
夜が暗いのは、なぜ?
朝に明るくなるのは、なぜ?
神がそう作ったから
納得出来ない
地球が自転をしているから
なぜ自転するの?
そういうものだ
納得出来ない
好奇心旺盛だったアイザックにとって、この世の自然現象全てが不思議な物であり
知りたかった
だから物理学を専攻する
しかし物理学を専攻すると、「アイザック・ニュートン」と同じ名前だから物理を選んだんだと学友に笑われた
自分は本当に、心の底から物理学が好きなだけだ。それなのにニュートンと同じ名前だからと言う理由で笑われる、不条理だ
しかもアイザックという名前の由来は、ヘブライ語の「笑う人」を意味している。それをアイザックは自身においては「笑われる人」と解釈した
「またザックが変な理論を唱えてるぜ」
同級生からは、よくそう言われ笑われたのだ
「しかしこれが証明されれば、エネルギー問題を解決出来るだろ」
「時空を歪ませて擬似重力を得る為に、まずはワープを立証するなんて…ブラックホールを作るって言ってるようなもんだろ?」
「やらない理由には、ならない」
幼少期から物理に興味を持ち、学生時代に目標を決め、それが一応の形を成したのは、アイザックが40歳になった頃だった
それは今から51年前…太平洋大災害の約1年前になる
膨大なエネルギーで時空を歪め、点と点を繋げば、ワープは可能
理屈ではそうだが、そもそもその膨大なエネルギーを生む段階で、エネルギー問題は解決する
例えばウラン235の核分裂は、1グラムで石油約2000リットル相当だ。だから火力発電よりも原子力発電の方がエコだという主張があるわけだ
アイザックは確かに最初は膨大なエネルギーが必要だと言ったが、それが出来ればその時空を歪めるほどの重力の一部を地球でエネルギーとして使えると言うのだ
その実験の為に当時のアメリカ宇宙軍がやろうとしていた「地球上では出来ない規模の宇宙での核実験」に協力し、膨大なエネルギーを得る
宇宙での核実験自体が極秘の実験であり、このワープ実験もまた極秘だった
アリゾナ州の砂漠地帯にその施設はあった
「そろそろ核実験の時刻か。アイザック博士、今一度説明を頼む」
アイザックに軍服の男性が話しかける
アイザックとその他に20人ほどの科学者と技術者、そして軍関係者が大型のカプセルの前に立っている
「核爆発のエネルギーで、時空を歪ませる事が出来れば、核爆弾に搭載したシステムと、このカプセルのシステムが連動、座標と座標を繋げ、このカプセルの内部に核爆弾に搭載した私の万年筆が転送されます」
「…万年筆…ですか」
「はい。このワープ実験はあくまで、時空を歪めるほどの重力を得られればワープが可能だという逆説的な実験です」
「何度聞いても理解出来ませんが…」
「つまりですね。この規模の核分裂でワープが可能であれば、地球の重力に頼らなくても、重力で発電が可能だという事で」
「理屈はいい。結果で見せてくれればな」
別の軍服の男が話を割る
「時間です」
突然、カプセルは眩い光を放ち、ガタガタ震え、施設はまるで地震が起きたかの様に揺れる
その場にいた者たちは、叫ぶ者も居れば、物陰に隠れる者もいる
しかしアイザックは、四つん這いになりながらも、カプセルを見つめる
カプセルの光が収まると湯気をあげ、静まり返る
放射線量の計測など安全確認をする前に、アイザックはカプセルに飛びつく
「博士!!まずは安全確認を!!!」
と助手が言うがアイザックが叫ぶ
「何かある!!転送されているんだ!!」
興奮を抑えられないアイザックは一心不乱にカプセルの扉を開ける
成功していれば、愛用の万年筆がそこにはあるはずだ
…しかしそこにあったのは、全くの別の物だった
とても小さく20cmほどの子供の遊ぶぬいぐるみくらいの大きさ
玩具のスライムの様にツルツルの体、目や口は無いが、タコの様に枝分かれした足の様な触手を持っている、何かがそこにいる
…生き物?
「なんだあれは?」
この日、人類は初めて、その後モンスターと呼ばれる事となる生物と接触したのだ




