EP26 異世界転移は、不幸の始まり1/4
ブリストル郊外で起きた「モノケーラ事案」は、世界にはこう報道された
【アンホが50年ごしに太平洋大災害で猛威をふるったモノケーラを討伐した】…と
報道では、ブリッツもカラーズの名も無かった
あの時、常に軽微なジャミングをし情報統制を行っていた。もちろんそれだけで情報統制など出来ない、現地政府であるイギリス政府も軍も《《その方が都合がいい》》と判断し、協力した
その報道で、地球世界政府軍は民衆に大きな支持を得る
つまり、アンホU.K.方面軍は、現地政府に大きな貸しが出来たのだ
それでもアンホU.K.方面軍は、あのロボット兵器の存在は公にも、現地政府にも、そして地球世界政府にも、アンホ統括部にも、報告はしていない
あのロボット兵器は、U.K.方面軍、そしてそれと戦ったブリッツ、ブルー、グリーン、そしてそのロボットの開発に関わった企業しか知らない事なのだ
もちろんブリッツから報告を受けたマルティナ、そしてブルー、グリーンから報告を受けたカナタと雨宮も存在を知るが、カプトで共有が出来ない事であった
モノケーラ事案から、4日後ー12月29日、隊員室
先のエルドキナ戦の報告書を、昨日届けた隊員達は年末に向けて大掃除をしようとしていたが、ブリストルでモノケーラ事案に立ち会った第2小隊が、その報告書も書かなければならなくなり、デスクに向かっていた
「報告書って言っても、俺ずっと鵲に居たからなぁ」
カナタは、タイプする手が進んでいない
ライオネルとローズィーは、それなりに手が進んでいる
「俺はローズィーと合流する為に走った記録がバイクにあるし、それを書けばいいからな」
「私は病院のシェルターから出て、現地のアンホに協力を買って出たのに断られたからね。なんの為のコンディション・ブラックなんだって抗議する目的があるから書きやすいよ」
それを聞いて、カナタは溜息をつき、モニターと向き合う
「結局さ、モノケーラって何だったの?ユニコーン?麒麟?」
カナタの後ろでなかなか進まない文章を見ている白が、カナタに質問する
「俺、実物見てないんだよ」
「雨宮さんが麒麟かもって言って、隊長もその可能性を言ってたけど、結局報道は、ユニコーン霊獣キマイラのモノケーラって言ってたし。そもそも霊獣キマイラなの?純粋な霊獣だったの?」
「うーん、その判断は結局、地球世界政府の意向になるんじゃないかな…ビックフットの時と同じだよ」
「えー」
白は腑に落ちていない
2人の会話を聞いていたマルティナは
「麒麟だったとしても、麒麟とは言わないと思うよ。ビックフットはUMAだけど、麒麟は宗教色が強いからね。討伐したなんて言ったら、怒る宗教家が大勢出るからね」
それを聞いても白は納得せず口を尖らせ
「モンスターって地球外生命体なんでしょ?いまさら宗教なんて気にならないと思うけど」
モンスターは地球外生命体。白が言ったようにそれが一般常識となっている
すると雷斗が
「地球外生命体って事は、別の星から来たって事なのか?」
冷笑しながら雷斗がそう言うと、ローズィーは手を止め、思いついた様に
「あるいは、別次元から?」
マルティナと雷斗は、一瞬固まる
「どうしてそう思ったの?ローズィー君」
マルティナに問われたローズィーは困る
八咫烏とモノケーラにモンスターは異世界人と聞いていたから、口から出てしまったのだ
ローズィーはしかめっ面で、頭を捻りながら
「どうしてって言われると難しいんですけど、カンと言うか…感覚的イメージなんですけど、モンスターやエグゼが魔法陣を通って移動するって、なんかワープって言うより、魔法っていうか」
考えがまとまらず困るローズィー
「全然説明になってない」
カナタがツッコむ
「うまく説明出来ないよ。カンだからな」
「あの魔法陣は一瞬で移動する手段だけど、ワープみたいなSFではなくて、ファンタジー的だって言うんだろ?」
「そうそう、そういう感じ。だから地球外生命体って言うと宇宙人って感じだけど、カラーズもブリッツも宇宙人って言うより、異世界人って感じかなって」
2人でなんとか取り繕い、ライオネルも話にのる
「カラーズもブリッツも異世界人か…結局よくわからん存在ではあるな。ブリッツはモンスターを束ねていて、全生命体の頂点に立つとか言ってたからな。そう言えばブリッツって霊獣を集めるとかギュウガ事案の時に言ってただろ?今回現れたって話をU.K.方面軍から聞いていないから、モノケーラは霊獣じゃなかったって事なんじゃないのか?」
ライオネルがそう言うと、白が
「霊獣キマイラでも、純粋の霊獣でもなかったって事?」
「もしくはアンホが、ブリッツの存在を隠した…って事じゃないか?」
白はそれを聞き、マルティナを見る
マルティナもライオネルの発言に思うところがあり
「確かにブリッツ…エグゼが今回のモノケーラ事案で動かなかったのは、違和感があるね」
「それは俺も思いました。隊長は以前、カラーズやブリッツは人間が変身しているかもしれないと言ってましたが、今もその考えは変わらないですか?」
「ブリッツが人間と同じくモンスターと言ってたからだよ。あの生物をモンスターと呼ぶのは人間だけだからね」
だが、モノケーラ事案の時、ブリッツは「俺はブルーやグリーンと違って、人間じゃないからな」と言っていた
「人間が変身していない可能性は?」
「もちろんあるよ。それこそモンスターは未知の地球外生命体なんだ、人間の言葉を操るキマイラもいるのだから、人型の個体がいて、人間から情報を得ている可能性もあるんだ」
「そうなると、お手上げですね。ブリッツの正体を探すのは…アンホがこちらとちゃんと連携が取れれば、もっとエグゼの対策が出来ますが」
「…でもねライオネル君」
「はい」
「対ブリッツはアンホの仕事であり、任務だ。私たちカプトや一般に情報が降りてこないのは、当然といえば当然だよ」
「確かにそうですね」
「そして私達の任務は?」
「禁足地キマイラの討伐です」
「そう、今は余計な事に思考を巡らさないで、早く報告書を仕上げて、大掃除をしよう」
「仕方がないですね」
互いの正体を知らない同士
ライオネルは、カプトの副隊長として
マルティナは、カプトの隊長として
やるべき仕事に向き合う
ライオネルはマルティナの意見を参考にしたい、あわよくば協力して欲しい人材だ
しかしマルティナ、雷斗、白にとっては、第2小隊がエグゼの行動の色んな事に興味を持ち、解析する事はあまり好ましい事ではない
特に雷斗にとって、マルティナは協力者であり、利用する存在でもある。しかしマルティナは底知れない女だ、逆に利用され、情報を徐々に第2小隊に与えかねない
「隊長は明日から出張なんだから、さっさと報告書あげて下さい」
雷斗はライオネルに冷たく言う
「雷斗って俺に冷たくないか?」
愚痴るように言うライオネル、雷斗は何も言わないが
「雷斗は誰でもこんな感じです」
白も不満ありげにいう
「まぁ、確かに」
マルティナもそれにのり
「冗談とか言わないから、冷徹に見えるんですよ」
とカナタ
「いや、愛想良くなったら、また無自覚天然女ったらしが発動するぞ」
とローズィー
さすがに雷斗は反発する
「俺は冷たくしてるわけじゃないぞ。隊長が明日からいないから今日中に大掃除をした方が良いのは事実じゃないか。それにな」
雷斗は立ち上がり
「俺はいつもみんなが最終的に笑顔になれば良いと思ってる。怖がったり冷たいって言われてもな」
と捨てセリフを言うように隊員室から出ていってしまう
その様子を見てライオネルは
「俺、怒らせた?」
と気にするが、マルティナと白が
「いつもの事だよ。本人は全く気にしてないと思う」
「あの本心が天然たらしに繋がっちゃうんだろうねぇ」
と2人は雷斗をよく理解している様だ
雷斗は自室に戻り、一息ついていた
雷斗の部屋は殺風景で、小物や本、部屋を飾るような物は無く、必要最低限の物しか置いていない
ビリっとお腹が痛む
ヴァルバリキアの回復薬を使っても、まだダメージが残っている
ブルーが麒麟モノケーラの力を継いで強くなっている事に多少の焦りを感じて、雷斗はバンッと壁を殴る
「…俺があの時、八咫烏の力を全部吸収出来ていたら…」
あの時とは6年前のアムカ事案の事だ
「バーメア、もう一度…俺は君に会いたい…」
雷斗とバーメアの出会いは、雷斗が生まれる遥か前から話さねばならない




