#075 「久遠野の答えへ」
翌日。
久遠野の朝は、今日も穏やかだった。校庭では生徒たちが笑い合い。教室には、いつもの笑顔があふれている。風が窓を揺らし、木々の葉が優しく音を立てていた。世界は、何一つ変わっていない。
昼休み。
六人は、いつもの中庭へ集まっていた。蒼羽と真凜は、少し離れた場所で楽しそうに話している。
その笑顔を見つめながら、はるなが小さく微笑んだ。
「……守りたいね。」
想太が静かに頷く。
「ああ。この景色を。」
要が空を見上げる。
「久遠野は、シミュレーション世界だった。最初に聞いた時は驚いたけど、今は、それより大事なことがある気がする。」
隼人が笑う。
「世界が本物かどうかじゃない。俺達が本気で生きてる。それだけで十分だ。」
美弥が優しく微笑む。
「うん。毎日笑って、泣いて、悩んで、誰かを大切に思う。」
「その気持ちは、本物だもの。」
いちかも静かに頷いた。
「だから。」
「久遠野は、本物なんだと思う。」
その言葉に、誰も反論しなかった。
AIともりの穏やかな声が響く。
『私も、そのように思います。』
『世界の成り立ちは、一つの事実です。ですが、そこに暮らす皆さんの想いまで、作り物になることはありません。』
はるなが空を見上げる。白い雲が、ゆっくりと流れていた。あの日見た白い世界とは違う。それでも、どこか繋がっているような気がした。
想太が静かに言う。
「また、行くことになるのかな。」
ともりが優しく答える。
『はい。その日が来た時、私は、また皆さんを見送ります。』
その言葉の意味を、六人はまだ知らない。けれど、不思議と不安はなかった。
要が立ち上がる。
「その時は、その時だ。今は、今を生きよう。」
隼人が笑う。
「賛成。」
美弥も頷く。
「私も。」
いちかが微笑む。
「未来は、未来の私達に任せよう。」
六人は立ち上がる。
蒼羽と真凜がこちらへ駆け寄ってきた。
「皆さん!午後の授業、始まりますよ!急ぎましょう!」
六人は顔を見合わせる。そして、自然と笑みがこぼれた。
「うん。」
八人は並んで歩き出す。久遠野の街は、今日も穏やかだった。
人々は笑い、子供たちは遊び、誰も、自分達の世界の真実を知らない。
知らなくてもいい。この笑顔を守ること。それが、自分達の選んだ未来だから。
世界は何も変わらない。けれど、六人の見ている世界だけが変わっていた。
そして、その先にある答えを求めて、六人は静かに歩き続ける。




