↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
66/91

#066 「七人の約束」

 白い世界。どこまでも続く静寂の中、ともりは二人を優しく見つめていたその表情は、長い間待ち続けていた誰かにようやく会えた少女のようだった。


 想太が小さく息を吐く。

「……あなたは。」


 少女は静かに微笑む。

「私は、ともり。」


 はるなが首をかしげる。

「ともり……。」

「はい。」

「AIのともりとは違うんですか?」


 その問いに、ともりは少しだけ考えるように目を閉じ、ゆっくりと頷いた。

「違います。AIともりとは、別の存在です。」


 想太とはるなは顔を見合わせた。その意味は、まだ理解できなかった。


 ともりは申し訳なさそうに笑う。

「ごめんなさい。きっと、今はわからなくて当然なんです。だから、焦らなくて大丈夫ですよ。」

 その優しい声に、不思議と心が落ち着いていく。まるで昔から知っている人と話しているような安心感があった。


 ともりは改めて二人を見つめる。

「まずは、お礼を言わせてください。」


 想太が目を丸くする。

「お礼……ですか?」


「はい。」

 ともりはゆっくりと頭を下げた。

「ここまで来てくださって、本当にありがとうございました。」


 突然のお礼に、はるなは慌てて首を振る。

「い、いえ……。私たち、何もしてません。」


 ともりは穏やかに微笑んだ。

「そんなことはありません。お二人は、ちゃんとここまで来てくれました。」

「それだけで十分なんです。」

 その言葉の意味は、やはりわからない。それでも、嘘を言っているようには思えなかった。


 想太が一歩前へ出る。

「ここは、一体どこなんですか?」

「僕たちはどうしてここへ来たんですか?」

「レゾネーターは何なんですか?」


 質問が次々と溢れてくる。ともりは困ったように笑った。

「たくさんありますね。」

「でも、大丈夫です。」

「今日は、ちゃんとお話しします。」


「……全部ではありませんけど。」

 最後の一言だけ、少しいたずらっぽかった。


 はるなが思わず笑う。

「全部じゃないんですね。」


「はい。」

「全部話してしまうと、楽しみがなくなってしまいますから。」

 その言い方は、どこか親しみがあった。不思議な安心感だけは、確かにそこにあった。ともりは静かに視線を上げる。白しかない世界なのに、どこか遠くを見つめているようだった。


「昔。」

 静かな声が響く。

「七人で、一つの約束をしました。」


 想太が聞き返す。

「七人……?」


 ともりはゆっくり頷く。

「はい。」

「誰一人、取り残さないこと。」

 短い言葉だった。けれど、その一言には長い年月が込められているように感じられた。


 はるながそっと尋ねる。

「その七人って……。」


 ともりは穏やかに微笑む。

「それは、もう少し先のお話です。今はまだ、その時ではありません。」

 二人はそれ以上聞かなかった。聞いても答えは変わらない。そんな気がしたからだった。


 ともりは二人へ向き直る。

「どんな世界になっても、どんな人生を歩んでも、最後には、また会いましょう。」

「それが、七人の約束でした。」


 その言葉は、不思議と懐かしく響いた。初めて聞くはずなのに。なぜか胸の奥が少しだけ温かくなる。


 ともりは満面の笑みを浮かべた。

「そして今日。」

「その約束へ、一歩近づくことができました。」

 少しだけ目を潤ませながら、本当に嬉しそうに笑う。

「だから私は――」

「今、とても幸せです。」

 白い世界に、優しい静寂が流れていた。その言葉の本当の意味を知る日は、まだ少し先になる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。