#065 「やっと会えました」
白い世界の中を歩く二人。遠くに見えていた人影は、少しずつその姿をはっきりと現していく。長い黒髪。純白の巫女装束。柔らかな笑顔。
どこか懐かしく、それでいて初めて会う少女。二人の前まで歩いてくると、少女は静かに立ち止まった。そして、小さく微笑む。
「やっと会えましたね、想太。」
その声は優しく、温かかった。まるで、ずっと昔から知っている人へ語り掛けるように。
想太は目を見開く。
「え……?」
初めて会うはずだった。なのに、その声を聞いた瞬間。胸の奥が、懐かしさでいっぱいになる。
「僕を……知っているんですか?」
少女は穏やかにうなずいた。
「もちろんです。ずっと、お待ちしていました。」
そのやり取りを見ていたはるなが、小さく口を尖らせる。
「……あれ?」
二人が同時に振り返る。はるなは少しだけ頬を膨らませていた。
「何で最初が想太なの?」
一瞬だけ、静寂。少女はきょとんと目を丸くする。そして、くすっと笑った。
「ごめんなさい。」
「順番を間違えてしまいました。」
今度は、はるなの方へ向き直る。優しく一礼する。
「やっと会えましたね、はるな。」
その瞬間。はるなの表情が少しだけ緩んだ。
「……うん。」
想太は思わず苦笑する。
「はるならしいね。」
「だって。」
はるなは少し照れたように笑う。
「いきなり想太だけ名前を呼ばれたら、気になるもん。」
三人の間に、柔らかな空気が流れた。
しかし。少女は静かに表情を引き締める。その変化に、二人も自然と笑顔を消した。
「申し遅れました。」
少女は静かに胸の前で手を重ねる。
「私は、ともり。」
「この世界では、そう呼ばれています。」
二人は息をのむ。どこかで聞いた名前。いや、聞き続けてきた名前だった。
レゾネーター。祠。蒼羽と真凜。そして、AIともり。すべてが一本の線でつながり始める。
「ともり……。」
想太がその名前を口にする。少女は優しくうなずいた。
「はい。」
「あなたたちが知っている『ともり』です。」
はるなが恐る恐る尋ねる。
「じゃあ……。」
「AIともりとは。」
少女は静かに微笑む。
「その話も、これからゆっくりお話しします。」
そして、二人を真っ直ぐ見つめた。
「今日は、お二人に知っていただきたいことがあります。」
「少し長いお話になります。でも、どうか最後まで聞いてください。」
二人は顔を見合わせる。そして同時にうなずいた。
「お願いします。」
ともりは穏やかに笑う。その笑顔は、どこまでも優しかった。




