#062 「送り出す仲間」
旧校舎の廊下を、六人は静かに歩いていた。誰も無理に言葉を探そうとはしない。研究室で出した答えは、全員が受け止めていた。だからこそ、その重みを噛みしめるように、一歩ずつ地下へ向かっていた。
先頭を歩く要が、小さく口を開く。
「確認しておこう。」
全員が足を止めることなく耳を傾ける。
「向こうで何が起こるかは誰にも分からない。危険だと判断したら、すぐ戻る。」
その言葉に想太が静かにうなずいた。
「分かった。」
「無理はしない。」
はるなも続く。
「絶対に。」
美弥が苦笑する。
「それだけは約束して。」
「せっかくここまで来たんだから、無茶だけは駄目だからね。」
いちかも優しく笑った。
「私たちは待ってるから。」
「焦らなくていい。」
隼人は少し照れくさそうに頭をかく。
「何かあったら逃げろ。」
「それくらいしか言えないけど。」
その一言に、六人の間から小さな笑みがこぼれた。緊張していた空気が、ほんの少しだけ和らぐ。
やがて地下旧図書館へ続く扉が見えてきた。要が静かに扉を開く。薄暗い地下通路。静まり返った空間。足音だけが規則正しく響いていく。
その先。レゾネーターは、以前と変わらぬ姿でそこにあった。青白い光が静かに脈打っている。六人は自然と立ち止まった。誰も言葉を発さない。
要はレゾネーターを見つめたまま、小さく息を吐く。そして振り返った。
「ここから先は。」
一拍置く。
「二人の役目だ。」
静かな声だった。しかし、その言葉には確かな信頼が込められていた。
隼人が笑う。
「ちゃんと帰って来いよ。」
美弥もうなずく。
「私たちは、ここで待ってる。」
いちかは二人を見つめながら微笑んだ。
「大丈夫。」
「二人なら。」
はるなは四人の顔を順番に見渡した。その表情には、不安よりも信頼があった。
「ありがとう。」
想太も静かに頭を下げる。
「行ってくる。」
二人は並んでレゾネーターへ向き直る。一歩。また一歩。静かな足音だけが地下室へ響く。
そして二人は、光の前で立ち止まった。レゾネーターは、まるで二人を待っていたかのように、淡い光をゆっくりと強め始める。
誰も動かない。誰も声を掛けない。ただ四人は、二人の背中を静かに見送っていた。
次の瞬間、世界が動き始める。




