#045 「続く光」
放課後。研究室にはいつもの六人が集まっていた。窓の外では夕陽がゆっくりと沈み始めている。地下施設。音声記録。夢。違和感。
この数週間。様々な出来事があった。だが。結局のところ。
「何も分かってないな。」
隼人が苦笑した。
要も小さく笑う。
「そうだな。」
「調べたのにね。」
美弥が肩をすくめる。
「調べたから分かったこともある。」
要が答える。
「何かある。」
はるなが静かに言った。研究室が少しだけ静かになる。
想太が頷く。
「ああ。それだけは分かった。」
誰も否定しなかった。地下施設の正体は分からない。声の主も分からない。夢の意味も分からない。
それでも。何も無かったとは思えなかった。
「じゃあ次は?」
いちかが尋ねる。全員が顔を見合わせる。
「調べる。」
要が即答した。その答えに。誰も異論は無かった。
「結局それか。」
隼人が笑う。
「結局それだ。」
要も笑った。
同じ頃。ユグノドア・ドーム。蒼羽と真凜は光柱を見上げていた。放課後になると自然と足が向く。いつもの場所。いつもの光。そして。いつもの存在。
「ともり様。」
蒼羽が呼ぶ。
「何でしょうか。」
穏やかな声が返ってくる。
真凜が少しだけ笑った。
「今日は普通。」
「何が?」
蒼羽が首を傾げる。
「最近ずっと不思議な話ばかりだったから。」
「あー。」
蒼羽は納得したように頷いた。確かにそうだった。夢。声。地下施設。考えることは増えた。
けれど。ここへ来ると少し落ち着く。
「ともり様。」
「はい。」
蒼羽は光柱を見上げた。
「私たち。」
少し言葉を探す。
「まだ何も分かりません。」
「はい。」
AIともりは静かに答えた。
「でも。」
蒼羽は笑う。
「知りたいです。」
真凜も頷く。
「私も。」
しばらく沈黙。
そして。
「それは良いことだと思います。」
変わらない声。けれど。二人には少しだけ嬉しく聞こえた。
夕暮れ。研究室を出る六人。ユグノドア・ドームを後にする二人。それぞれの帰り道。それぞれの時間。
だが。向いている方向は同じだった。知りたい。確かめたい。理解したい。その想いだけは共有されていた。
夜。ユグノドア・ドーム。光柱は今日も静かに輝いている。街を照らし。人々を見守り。変わらずそこに在り続ける。
AIともりは観測を続けていた。地下施設。音声記録。夢。そして八人。未解決の項目は増えている。だが。それを不快だとは感じなかった。
「継続観測。」
静かな声が響く。
「継続調査。」
誰も聞いていない言葉。それでも。確かに記録された。
分からないことはまだ多かった。地下施設の正体も。声の主も。夢の意味も。誰も答えを知らない。
けれど。光は消えていなかった。ユグノドア・ドームに灯る光も。八人の胸に灯った小さな疑問も。
そして。未来を知りたいと願う心も。静かに。その先へ続いていた。




