063 閑話 欲しかった力
「……ここは……おれは何を……」
一階の厨房じゃないか。
床で寝ていたのか……
「うっ……身体が痛いな」
こんな硬い床で寝ていたらそうなるのは仕方ないが、なんで俺はこんなとこで……
「……そうか。魔王様が力を与えるとかなんとか……」
何かされたんだ。
力とはなんのことだろう。
魔法を使えるようにしたと言っていたが……
あの瞬間は身体に火がついたかのような熱さを感じたんだが、今は床で寝ていた痛み以外はないな。
「守る力、か……」
たしかに俺には勇者様のような力はない。
欲しいわけではなかったが、ひよりを守るためには必要なのかもしれない。
本当に魔法が使えるのか?
料理ではなくて戦闘技術が上がったのか?
確かめようがないな。
魔法を使えるようにしてもらったとはいえ、使い方がわからん。
スキルが増えたりしたのかもしれないな。
確認してみるか。
「スキルオープン」
おっ、出てきたな。
『スキル:身体強化(Lv.MAX)』
『スキル:料理(Lv.MAX)』
このふたつは元から俺が持っているものなんだが、Lvとはなんだろうか。
これまでにはなかったが……
『スキル:全属性魔法(Lv.MAX)』
『スキル:魔力増大(Lv.MAX)』
『スキル:切れ味向上(Lv.MAX)』
『スキル:火加減調整(Lv.MAX)』
なんだこれは。
これが魔王様が与えてくれた力なのか?
全属性魔法……とんでもないスキルなんだが、それを俺が?
切れ味向上と火加減調整なんてスキルも聞いたことないが、これは料理に活かせそうだな。
全属性ということは、火魔法も水魔法も使えるということか。
これは試してみないとわからないな。
火魔法は危険だろう。
水魔法を使ってみるんだ。
「水よ……ふんっ」
おお、出てる、手のひらから水が……
みーちゃんの水魔法の水は味も美味しかったんだ。
俺のは……これは!
みーちゃんのに匹敵するほど美味しいじゃないか。
いや、もはや俺の方が美味しい感じすらするぞ。
魔力の多さで美味しさが決まると言っていたような……
ということは、俺の魔力はみーちゃんを超えたと言うのか。
そういうことか。
料理で使う水も美味しくなれば、より俺の料理が美味しくなるんじゃないか。
切れ味向上もそうだ。
なんでも切れるとしたら……
なんだと!
力を入れてないのにサクサク切れるじゃないか。
玉ねぎもネギもキャベツも……
これはすごい!
なんて力を与えてくれたんだ魔王様。
火加減調整がまだ試せないからわからないが、これも確実に料理に活かせるはず。
これで俺はひよりを守ることも、料理人としてのスキルアップも果たせたんだな。
修行もせずに得た力、か……
切れ味向上や料理のようなスキルは自動発動だからな。
自ら封印するようなことができない。
与えて貰えたのはありがたいが……
自分で自分を律するしかあるまい。
このスキルの力に溺れることなく邁進するんだ。
ひよりだってそうだ。
すごいスキルなのに驕ることはないんだ。
……理解してないだけな気もするがな。
何かあった時に守る力は確かに必要なんだ。
魔王様から頂いた力で、ひよりを守り、この世界で一番の料理人になるんだ。
誰かの力に頼ったままじゃいられないな。
俺もどこかで働きに出る方がいいだろう。
ひより以外の、より多くの人に俺の料理で笑顔になってもらいたい。
自分自身で磨いた力で、な。
それが世界一の料理人ってもんだろう。
ひよりの世界の食材に頼らず、この世界の食材で勝負だ。
でもどこで働きに出ようか……
決まるまではひよりには秘密にしておこう。
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