047 ゆーるしーませーん2回目
「あの野郎……許さん!」
「おい、なんか言ったか?」
「いえいーえ!なーんでもあーりません!皿洗いーは、たーのーしーいなー」
ナッシュ……私はお前を許さない!
「おい、洗い直しだ。まだ汚れがついてんぞ」
「は、はいー!たーだいまーやーりなおーしまーす」
「……なんだ、また悪寒がするな」
「えー、風邪引いたの?」
「そういうわけじゃないんだが……」
「じゃあ疲れてるのかも?夕飯はどこかに食べに行こ?たまには作らない日があってもいいよねっ」
これはひよりの優しさなのか。
染みるな……
「それならどこかに食べに行くか。いい店でも知ってるのか?」
「そんなの知らないよ~適当なとこでいいんじゃない?ナッシュくんの料理より美味しいとこなんてないでしょ?」
「ははは、そうだな。よく分かってるじゃないか」
今度は褒める、だと?
今日のひよりはどうしたんだ。
だが、悪くない。
むしろいつもそうであってくれてもいい。
「ここなんてどう?歩くのもめんどくさいからどこでもいいよね?」
「ああ、どこでもいい。ここにしよう」
……ん?ここは見覚えがあるような。
うーん、思い出せんな。
まぁいい、不味かったら帰って俺が作るまでだ。
「へ~なかなかいい匂いするねっ」
「そうだな」
なんだが思い出せそうな……
「いらっしゃい。適当に座ってくれ」
あ、思い出した。
このイカつい店主の店だったか。
まずい、まずいし不味いのが出てくるぞ。
「おう、オメーは前に一度来た兄ちゃんだな。今日もツイてるぞ。この前のより美味い肉が手に入ったんだ。ツレの嬢ちゃんは初めてだな。うちはメニューはねぇ。その日その日で違うからな。楽しみに待っててくれ」
「そ、そうですか。楽しみ、ですね……」
「なーんだ、ナッシュくん来たことあるんじゃんっ」
「ああ、店に入って思い出したんだ。すまない」
「しかも美味しいお肉だって~楽しみだねっ」
匂いは良いんだがな。
どんなのが出てくるのか怖い。
……悪寒の正体はこれか。
この未来を示唆していたのか。
「ななな、ナッシュだとおおおぉぉぉ!」
「うるせーぞ!皿洗いはどうした。さっさとやっちまわねーか!」
「ええい!お前こそうるさい!私はナッシュという男に用があるんだ!」
俺が呼ばれてるのか?
知り合いなんているとは思えないんだが。
「やはりお前はナッシュ!やっと見つけたぞ!」
「…………初めまして」
「ナッシュくん、知ってる人?」
「いや、ちょっと思い出せなくてな」
本当に誰だ?
こんな変なやつと知り合いなわけないんだが……
「オメェ、俺にそんな口をきいていいと思ってんのか?」
「うるさいうるさい!私はこの男にぃぃぃぃぃぃ、いいいたたたたた!」
「さっさと皿洗いをしちまわねーか!終わったから聞いてやる!客に飯を出すんだ、ちんたらしてんじゃねぇ!」
あ、連れて行かれちゃった。
なんなのあの人。
ナッシュくんの知り合いでもないって言うし。
なんか王都って変な人多いよね~
人口が多いからかな?
「すまんな。すぐに持ってくるから待っててくれ」
「は、はぁ。お願いします……」
どさくさに紛れて帰れば良かったな。
あの男はなんだったんだ。
俺のことを知っていたようだが……
全然思い出せんな。
「待たせたな。自信作だ。この肉はゴッドブルと言ってな。ブル系の中で一番美味い肉だ」
「ゴッドブル……聞いたことないですね」
「そりゃそうだ。俺が見つけた新種だからな」
「え、それってどういう……」
「オメーには言ってなかったが、俺はSSS級冒険者でグルメハンターをやってんだ」
「……は?SSS?世界に一人しか居ないと言う、あの?」
「おう、よく知ってんじゃねーか。秘境の奥地で見つけてきたとんでもねー牛だったな。倒すのに苦労したぞ」
よくわかんない話してるけど、これってもしかして魔物のお肉?
え~、一気に食べたくなくなってきたよ~
匂いは美味しそうなのになぁ
「さぁ、食べてみてくれ」
「で、では……」
ナイフでスっと切れるな。
見た目は以前同様で美味しそうなんだが……
こ、怖い……
「さぁ、早く」
「いきます……」
なに!
ふ、普通だ、普通に美味しい。
ソースが絡むとより美味しくなるな。
「ど、どう?ナッシュくん、美味しいの?」
「美味い……これはひよりの出してくれる肉に近い味がするぞ」
「え、ほんと?じゃあ私も食べてみようかな」
ナッシュくんが美味しいって言うなら、食べてみる価値はあるよね。
泣いてはいないからそこまでではないんだろうけど……
「んー!美味しい!」
思った以上だよっ
普通に食べられちゃうじゃん~
「くくく、そうだろそうだろ。ドラゴン以外では一番美味いと思った肉だからな。ドラゴンの肉には勝てないが、なかなかいけるだろう?」
「はい、美味しいです」
「くくく、それは良かった。ところでお前らはあいつの知り合いなのか?」
「いや、記憶にないので知り合いではないかと……」
「あいつは兄ちゃんが食べに来た後にうちに入ってきたんだがな。俺の飯を不味いと言って残しやがったんだ」
あー、あの蜘蛛肉か。
あれは確かに不味かったが……
「説教して俺の弟子にしてやったんだ。なのにまだ舐めた口をききやがる」
こんなイカつい人の弟子……
しかもSSS級の。
一生皿洗いから抜け出せないかもな。
「スープはイマイチだけど、お肉は美味しかったねっ」
やっぱりこの世界の味付けはシンプルだから仕方ないよね~
「……なに?嬢ちゃん、俺のスープが口に合わなかったってぇのか?」
「普段ナッシュくんの食べてるからねっ!でもおじさんのスープも美味しい方だと思うよっ」
「ほう、言うじゃねーか。兄ちゃんも料理人なのか?」
「は、はい、料理を少々嗜んで……」
「んだぁ?はっきりしねーな兄ちゃん!」
なーにビビってんのよ!
ガツンとかましちゃいなよっ
「はーはははは、そーいつはクランをクービになーった、料理人なーんでーすよー」
「うるせぇ!皿洗いは終わったんか!」
「ん?なんでお前がそれを知ってる?」
「ぐぬぬ、ほーんとーうにおーぼえーてなーいのかーい?」
「……その喋り方、どこかで聞いたような」
「はーはははは、今日こーそは、おーまえを料理でー、たーおしてやーるのでーす」
うーん、もう少しで思い出せそうなんだが……
「ねぇねぇ、なんでこの人、こんなに変な話し方してるの?さっきは普通だったじゃん?」
「……あ!思い出した!お前はあの変な話し方のやつ!」
「どんな思い出し方してんだよ!」
「あ、ほら、普通に話してる。聞き取りにくいから普通に話してくれないかなぁ」
この人はやっぱり変な人なんだ~
ほんと王都は変な人だらけだねっ
「おいおーい、お嬢さーん。こーのわーたくしのエーレガンッツーな、話しかーたを、理解でーきなーいなんてー、かーわいそーでーすねー」
「ええ、かわいそうなのはそっちだよ~?本当に大丈夫?」
「な、なんだって!少しかわいいからって調子に乗り……か、かわいい……」
ん?なんだ、ひよりを見る目が……
「お嬢さーん、なーぜー、きーみみたいーなかわいーい女性がー、こーんなおーとこと、いっしょーにいーるんでーすかー」
「えー、なんでって~?それはナッシュくんが寂しがり屋さんだからだよっ」
ぐはっ、それは秘密の約束だろう!
なぜそれを言ってしまうんだ。
「はーははは、わーたくしーもー、さーみしがーりやなーんでーす。そーんなだーさいおーとこはやーめて、わーたくしーのとーころへー、きーませーんかー」
「えー、寂しがり屋なの?きもっ!」
なんでこんなキモい人のとこに行かなきゃなのよ~
ぜーったいやだよねっ
「き、きも?え?きもい?私のことか?」
「うん、あなたのことだよっ。顔も話し方もきもいもーん。ねぇねぇ、SSS級のおじちゃん。弟子ならしっかり面倒みてあげて?」
「おい!ふざけてんじゃねーぞ!こっちこい!兄ちゃんたち、今日は迷惑かけてすまんな、代金はいらんから、また食いに来てくれや」
「い、いやあああぁぁぁぁ!お、お前ら!絶対に許さんからな!」
行っちゃった。
生きて帰ってこれるのかな?
なんでもいっか~
「ナッシュくんのお友達だったの?」
「いや、知らんな」
「ふーん、じゃあ帰ろっか!」
『キューキュキューキュキュー』
「ふふ、みーちゃん真似してるよ?そっくりそっくりっ、もう1回やって~」
『キュキューキューキュキュー』
あの人は変な人だったけど、みーちゃんは今日もかわいいねっ
変な人が多い王都だけど、今日も楽しかったな~
明日からも頑張ろっと~
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