036 閑話 浄化しちゃって
ひよりはすごいな。
あんなに堂々と魔王と話してるじゃないか。
しかもハンバーグを食べながら。
魔王が食べたいなら俺が作ってもいいんだが、ひよりがダメと言っているしなぁ。
『我も食べてみたいのだ!』
「だーめ!」
『おい、そこの雑魚料理人!我にそのハンバーグとやらを捧げるのだ!』
「なんでナッシュくんに集ってるの!ダメでしょ!」
……あの恐怖の権化とも言われている魔王を叱ってるじゃないか。
ひよりがいなかったら捧げてるだろうな。
だってちょっと怖いんだぞ。
『ええぃ、それならペンギンになっておるお前のを……ってもう食べ終わってる!』
『キュッ!』
「ナッシュくんも食べて食べて、怨霊魔王さんがうるさいけど美味しいよっ」
「ああ、そ、そうだな」
この状況で食べられる二人が信じられんが……
だがいただくとしよう。
────っこ、これは!
美味すぎる……
口に入れた瞬間に広がるハンバーグの香り。
そしてデミグラスソースの濃厚な味わい。
噛めば溢れる肉汁。
肉なのに噛む力がほとんどいらないなんて…こんな美味い肉があったのか。
これは泣く、だろ……
『なんだ雑魚料理人!泣くほど美味いのか!ずるいずるいぞ!我にもハンバーグをくれっ!』
「もうありませーん、ここの住人じゃないからありませーん」
『な、なんだと!ここに住んでたのは我の方が先なのだ!貴様らが勝手に我の家に住み着こうとしているんじゃないか!』
どういうことだ?
先に住んでただと……
「どういう意味よっ!ここは私達がちゃんとお金出して買ったんだからねっ」
私達……ではなく全部俺なんだが……
『この真下に我は封印されておるのだ。だからここは我の土地なのだ!3000年前から我のものなのだっ!』
「だとしても建物は魔王さんのじゃないでしょっ!だからハウスだよっ!ゴーホームだよっ!」
はうす?ごーほーむ?
帰れってことか?
魔王にそんなこと言えるなんて、尊敬するぞ。
『キュッ!』
『ぎゃあああああ!その光はやめるのだ!溶ける!浄化しちゃう!』
「みーちゃん、それは可哀想だよ~あと少しだけにするんだよ?」
『ちょ、ま、だめ、ほんとに浄化しちゃう!』
容赦ないな。
やはりみーちゃんは光魔法も使えるのか。
謎が多すぎるぞみーちゃん。
「その辺にしてあげて?消えちゃったら可哀想だもん」
『キューッ!』
『はぁはぁ、なんてパワーだ……あと少しで本当に浄化するところだったのだ』
もしかしてあの天井の違和感は……
「えっと……魔王さ、ま?あの天井の中に住んでたりするんですか?」
『はぁはぁ……むっ、貴様は我を敬うなんていい心掛けなのだ。それに免じて教えてやろう』
敬ってはいないんだが……怒られなくてよかった。
俺の攻撃を指だけで止めるような相手に、ひよりのように話すのは無理だろ。
『我は魂だけで彷徨っていたのだ……』
長くなりそうだが、俺はハンバーグを食べたらダメなんだろうな。
早く食べたい……
『勇者との戦いに敗れ、この地に封印されての。1000年以上前にこの国がここに出来たのだ。街が発展することで我の封印が少しズレが生じたのだろうな。そして魂の一部だけが表出するようになったのだ』
その勇者ってのは……まさかな。
『我は勇者への怨みを忘れてはおらぬ。その怨みで我は怨霊となり、この地に残ったままになっておるのだ。だから今の我は魔王だが怨霊での。怨霊王と名乗っておるのだ』
「ふーん、女々しいのね魔王さんって!怨霊王さんって呼べばいいのかな?3000年も恨み続けるとかダサいよ?早く浄化してもらった方がいいんじゃないの?ね、みーちゃん。やっちゃっていいよ?」
『キュッ?』
『いや待て!ちょ、ほんとに!待ってください!お願いです!』
本当に魔王なのだろうか。
みーちゃんとひよりにペコペコしまくってるぞ。
実はそんなに怖くないのか?
『我の力が1番強いこの場所に建物が建っての。屋根裏がいい感じだったので改造して住み着いておるのだ。我の部屋には来てはならぬぞ?いいか?絶対だからな?』
「わかったよ!みーちゃん見に行こ!」
『ちょ、え?全然分かっておらぬではないか!ま、待って!待ってくださいいいい!』
随分と楽しそうだな。
ハンバーグ食べてようかな……
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