030 閑話 ゆーるしーませーん
どこに食べに行こうかな。
東地区はそこまで詳しくないんだがな。
リディルさんと行ったところに入るか、それとも違う所を探すべきか。
もうすっかり日が暮れてるし、さっさと決めて入るとしよう。
「家、か……」
ひよりと住む家を買うことになるとはなぁ。
王都に近づくのもやめようかと考えていたのに、まさかこうなるなんて予想できないだろ。
商業ギルドで相談はしてみたが、ひよりとみーちゃんの3人で住めるようなところが空いてなかったんだよなぁ。
中央区は高いだろうし、西地区は治安がよくない。
西地区はそれにあいつらと会う可能性が高いだろうし。
会ったところで関係ないんだが、ひよりといる時に会いたくはない。
なるべく東地区で3人で住める家があるといいんだが。
「この店は……ここでいいか」
「いらっしゃい。適当に座ってくれ」
無愛想な店主だな。
だがこういう人の料理は美味いってのが相場だ……多分。
「うちはその日に仕入れたものしか出してねぇ。それでもいいか?」
「あぁ、もちろんだ。それで頼む」
毎日違うものを提供する店なんだな。
その日によって何が出てくるか分からないのか……おもしろい。
それだけ店主の腕がいいからできるやり方なんだろう。
これは期待できるかもしれない。
「待たせたな。本日のディナーだ」
「ありがとう」
スープにパン、そして何の肉だろうかこれは。
なかなか判別できないな。
「この肉は……何の肉なんだ?」
「そいつはビッグスパイダーの肉だ」
「ほう、あのでかい蜘蛛か」
「なんだ、お前食べたことないのか?」
「そうだな、まだないな」
「美味いから食ってみろ。今日は当たりの日だぞ」
当たりの日?
ハズレもあるのか……
怖い店だな。
「ほぅ、肉は柔らかそうだな」
「くくく、そうなんだ。蜘蛛だからってみんな食わねーが、最高に美味いぞ」
「では……」
─────まずい。
これは厳しいな。
なんて臭みなんだ。
これが美味いだと?
どうなってるんだ、ここの店主の舌は。
「どうだ?」
「なかなか独特……だな」
「くくく、気に入ってくれたか。残さず食べてくれよな。今日はみんな残していきやがる」
あれ……これって俺は残せないやつじゃないか。
確かにこれだけ臭かったらみんな残すだろ。
「くくく、また来てくれよな。レアな魔物素材が入ったら呼んでやろう」
「はは、その時はよろしく頼む」
遠慮願いたいが、これも俺の料理修行の一環と思う……思えるわけないだろ。
二度と来ることはないかもな。
さて、帰るか……うっぷ……
「おいおーい、こーんなとこで会えーるとはなー。おーまえがナッシュって男だろー?」
「…………誰だ?」
「なーにー?わーたしのことを知ーらないのは、ゆーるせませんねー」
「許せないと言われてもな……誰なんだ?」
なんだこいつは。
見たことない男だが……
それに話し方が絶妙にイラつくな。
どこかで会ったやつなのか?
「おーまえはクランデンダールをーつーいほーうされたーんだってなー」
「…………なぜそれを知っている。どこで聞いた?」
「はーはははー、知りたーいかー?知りたーいなら───」
「いや、知らなくていい。そうだ、俺はあそこをクビになってな。今はフリーだ」
「え、知りた、知りたくない?え、バラされたくなかったらとか、え?」
「口調が普通になってるが、そっちの方がいいぞ?」
「───っは!びっくーりして、素ーになってしーまったじゃないでーすか」
「さっきのが素なら、それわざとやってるんだろ?疲れないか?」
「うーるさーいでーす。わーたくしはーおーまえにうーらみがあーるんでーす」
「はぁ?初対面なのに恨み?俺が何をしたって言うんだ?」
本当にこいつは何を言っているんだ。
なんでこんな愉快な奴から恨みを買わないといけないんだ。
「わーたくしはーおーまえをゆーるしーませーん」
「許さない?許さないとどうなるんだ?」
「………………」
「………………」
どうなるんだろう。
早く何か言わないだろうか。
とりあえず気持ち悪いから早く帰りたいな……
「おい、お前に提案がある。俺に復讐なり何かをしたいんだろう?それならそこの店の飯を食べてみろ。完食したら相手してやろう」
「ほほーう、そーんなのかーんたーんでーす。すーぐに食べてやーりましょー」
「じゃあ俺は帰るから頑張ってくれ」
「つーぎにあーうとーきは、おーまえをけーちょんけーちょんにしーてやーるでーす」
ほっ……行ったか。
健闘を祈る。
それにしても誰だったんだろうか。
…………あ、名前も聞いてないな。
まぁどうでもいいか。
気分も悪いし意味がわからなかったし、早く帰ろう。
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