027 家を買って!
「見てみろ、あれが王都だ」
「あ、あの奥に見えるのがお城?」
「そうだ、あの城はこの大陸で一番大きいだろうな。この距離からでもよく見える」
すごいなぁ。
日本のお城とは感じが全然違うよ。
西洋な雰囲気だよね。
「あと30分もしないで外壁に着くからな。三日も短縮できたのはひよりのおかげだ」
「あ、あはは、良かった~」
そのせいで馬車酔いで大変だったけどね~
野宿も快適だったし、むしろゆっくり行ってくれた方が良かったかも?
でもやっぱり長時間の移動はしたくないよねっ
「そういえば聞いてなかったけど、ナッシュくんは王都にいたことあるの?」
「言わなかったか?俺はひよりに会う前は王都で専属料理人として働いてたんだ」
「王都で専属?それってお城の?」
「そんなわけあるか。クランの専属料理人だ」
「クラン?」
「……それも前に説明しただろう」
「覚えられるわけないじゃん!」
ナッシュくんの説明は分かりづらいから困るんだよね~
とりあえずそのクランってとこにいたならそれでいいよねっ
「もう一度説明するとだな……」
「いい、いらないよっ」
こいつは……まぁいい。
もうここに戻ることはないと思っていたが、何が起こるかわからないな。
何も起こらないとは思うが、ひよりが危険に巻き込まれないように気をつけないとな。
「ねえねえ、そういえばさ、この国の名前ってなーに?」
「教えてなかったか?」
「うーん、多分!」
聞いてないよね?
覚えてないだけかも?
よくわかんないねっ
「この国はジールノート王国だな。王都もジールノートって名前だ」
「ふーん、じゃあこの前までいたところは?」
「それは説明したろう……って途中で話を遮ってたな」
「だって~知ったところでって思っちゃったんだもん!」
「はぁ、まぁいい。あの街はビレダ辺境伯が治めるバグースって街だ」
「なんか濁点が多いねっ」
「よくわからん感想だな……」
王都か~
日本で言えば東京みたいな感じかな?
東京のJKの私にとっては庭みたいなもんだよねっ
「検査は問題なかったから王都に入るぞ」
「おーやっとだね!ワクワクする~」
「このまま私の工房に行くからな」
道が広いな~
それに人が多いよね。
さすが異世界の東京だねっ
「ねぇねぇナッシュくん、しばらく王都で暮らすわけじゃん?またホテル暮らし?」
「リディルさんのところは住めないってことだからな。金はあるし、近いとこの宿でいいんじゃないか?」
「家買うのは?」
「いい所があればそれでもいいが……高そうだな……」
家か~買っちゃったら本当にこの世界の住人になった感じするかもなぁ。
ナッシュくんと家を買う相談って……夫婦じゃん!
恥ずかしすぎるよ~~~
「家か……」
王都に腰を据えるなら買ってもいいかもしれんが、ひよりと住むのか。
今と変わらないが、家か……アリだな。
冒険者活動してれば金の心配はないか。
……なぜ冒険者活動を本職にしようとしているんだ。
俺は料理人なんだ。
色んな国をまわって修行した方がいいんじゃないのか?
だがひよりとの安定した生活……悩むな。
違う!俺はひよりを元の世界に返すんだろ。
だから悩む必要などない、ないんだ……
「おい、着いたぞ?二人して何を悶絶しているんだ?ほら、降りろ」
「ふぇっ!」
「ここが私の工房だ。近くに宿があるからそこまで案内しよう。当面はここで暮らすといい。王都の冒険者ギルドは各地区にあってな。ここは東地区だ。中央区と西地区の3つで構成されてる。地区のギルドによって依頼が変わるらしいからな。色々行ってみるといい」
「そういえばそうだったな」
「ナッシュは王都で働いてたってことだから、あとはナッシュに聞くといい」
「わっかりました!」
「夕飯は王都の美味い飯をご馳走しようじゃないか」
「おー!それは期待だねっ」
「今日は旅の疲れもあるだろうしな。明日から本格的に私に協力してくれ」
「うんうん、一緒に可愛いのに作りましょっ」
「ああ、私も期待してるからな」
私にも作れるかなぁ。
こっちの世界でお仕事ができるのかもだよね。
まだ日本では学生なのに、なんか変な感じ。
知識チートみたいなのがないから心配だけど、なんとかなるよねっ
「宿はここだろう。名前も合ってるな」
「みーちゃんも泊まれる?」
「従魔も泊まれると言ってたから平気だろう」
「それならバッチリだねっ」
『キュッ!』
夕飯はご馳走してくれるってことだからな。
宿でのんびりしてればいいだろ。
「お部屋はご一緒ですか?」
「ああ、それで頼む」
当たり前のように一緒の部屋にしているが、よく考えたらおかしくないだろうか。
ひよりも全然気にしていないな。
あまり深く考えるのはよそう。
俺はまだ修行中の身なんだからな。
「王都だからかな~とっても広いし綺麗だね!って言いたかったのに……むしろ悪化してるじゃん!」
なにこれ、どういうこと?
ベッドは二つあるけど他がなんもないじゃん!
シャワーはあるけどトイレ共同ってどういうこと?
キッチンもないし、これじゃあご飯作ってもらえないじゃん!
「値段も高いが、王都ならこんなもんだろ」
「買って……」
「ん?」
「家買ってナッシュくん!」
「ほ、本気か?」
「だってどこの宿でもこんな感じなんでしょ?だから買うしかないでしょ!」
「いや、そうかもしれんが……高いぞ?」
「稼いできて!」
「おおう?まぁ頑張るが……ひよりのやることに俺は協力できないだろうからな。明日探しに行ってみるとするか」
もー最悪だよ!
こんな劣悪な環境で生活とかありえないもん。
早いとこナッシュくんには頑張ってもらわないとねっ
「ここが私の行き付けの飯屋だ。王都で美味い飯と言ったらここだぞ」
ほぅ、ここは王都でも知る人ぞ知る名店と呼ばれている場所だな。
俺も何度か足を運んだことはある。
「好きな物を頼んでいいぞ」
「メニューはどーれ?」
「ここに書いてあるものを注文していいぞ」
「ナッシュくんは来たことあるの?」
「ああ、何度かな。確かにここは美味いぞ」
「ふーん、ナッシュくんのより?」
「……俺の方が美味いに決まっているだろう」
「そっか~じゃあ期待できないね!」
「おまっ、そんなこと大きな声で言うんじゃない」
本当のことだとしても、わざわざ言うことないだろうが……
ほら見ろ、何人かが睨んでるじゃないか。
「どれにしようかなぁ」
不思議なことにこの世界の文字が読めちゃうんだもんねぇ
最初は不思議だったけど、これも転移した特典?みたいなやつなのかな~
「お肉とスープとパンのセットだね!クレイジーホースのステーキと本日のスープとパンにしよっかなっ」
「ほう、この店でイチオシのクレイジーホースを選ぶなんてやるじゃないか。久しぶりに私もそれにしよう。それとエールだな」
「俺はビッグボアのステーキとこだわりのスープとパンにするか」
「みーちゃんは?いらないの?」
『キュッ!キュキュ!』
「後でなにかホテルで食べさせて?うーん、ホテルで調理できないよ?」
『キュキュ!』
「収納にある残り物でいいの?みーちゃんがそれでいいならそうしようね~」
みーちゃんが食べないってことは、やっぱり期待できないのかも?
私もやめたくなっちゃうじゃん。
リディルさんがもう頼んでるし、ここは諦めるしかないよね……
「お待たせしました~」
「おーきたきた、王都に帰ってきたらこいつを食べないとな!」
「ほう……」
「ねぇ、これでっかくない?」
「揃ったみたいだな!ようこそ王都へってことで~乾杯!」
「いただきまーす……」
「頂こう」
ビッグボアの肉は臭くて下処理が大変だが、匂いは大丈夫だな。
入った時の店内が臭くなかったからな。
料理人がしっかりしているんだろう。
次は焼き加減だ。
しっかり中に火を通しすぎるとガチガチに硬くなるんだが……
ふむ、スッと切れるな。
いいじゃないか。
味の方は……
よくある普通のソースだが、丁寧に作られているのがわかるか。
普通に美味い。
だがひよりの世界の肉を知ってしまうと、物足りなさを感じてしまうな。
以前はこれが最高に美味かったんだが。
ひよりの持ってるソースを使いたくなるな……
「スープから食べてみようかなっ」
見たことない野菜が入ってるけど、食べれるんだよね?
みんな食べてるし大丈夫なんだろうけど……
外国に行った時に初めて食べる料理って感覚がしちゃうけど、それ以上に不安すぎるよ。
まずはスープを一口……うん、塩味だね。
パンもカッチカチだし、みんなやってるけど、スープに浸して食べるんだろうな。
ちぎってるけど、私の力でできるのかなってくらいカッチカチじゃん。
ナッシュくんに頼んでふわふわのパンを作ってもらわないとだね。
でもどうやって作るんだっけな~
お肉は……バッチリ焼かれてるだけのお肉だね~
うーん、食べれなくは無いけど、普通かな?
すっごい美味しいわけじゃなくて、不思議なソースのおかげで普通って感じ?
王都で一番ってリディルさんが言うんだから、他のとこなんて行く気にならないじゃん……
「美味かったな!」
「ご馳走様でしたっ」
「それじゃあ明日は朝からうちに来てくれ」
「わっかりました!」
王都に帰ってきたんだな。
もう戻ってることはないと思ってたが、こんなに早く戻ってくるとは。
俺のいたクランは西地区だ。
あっちに行かなきゃ会うことはないだろうが、冒険者活動してたら近いうちに会うかもしれない。
俺は追放、じゃなくて解雇された側だから問題ないだろうが、何も問題にはならないだろ。
「ナッシュくんっ、明日からおうち探し頑張ってねっ」
……その前に家探しか。
「ナッシュー?どこかで聞いた名前でーすね」
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