024 閑話 料理人、川で米も炊く
「ただいま」
「おかえりナッシュくんっ」
なんだなんだ。
いつもより出迎えが温かいな。
いいことでもあったか?
「今日は報告があります!」
「どんな報告だ?」
ニヤニヤしてるな。
そんなに嬉しかったのか?
「それは~」
随分溜めるな。
なんだろうか。
「ついにお米が完成したよっ」
「ほう、ひよりが食べたいと言っていたやつか」
「そうそうそれだよっ!デラルさんとみーちゃんのおかげで美味しくできたのっ」
「良かったじゃないか」
「ナッシュくんのもあるよっ」
俺のまで作ってくれたのか。
ありがたいし嬉しいな。
「はい!これが炊く前のお米とお鍋だよっ」
「炊く前?ってことはこれから炊いてくれるのか?」
「なーに言ってんの~ナッシュくんがやるんだよっ」
「やり方がわからないぞ?」
「初めちょろちょろ中パッパ、赤子泣いても蓋取るな!だよっ」
「なんだその呪文は……」
よく分からない上に、俺が自分でやらないとなのか……
いや、これは料理人の俺への挑戦状なんだろう。
意味不明な呪文だけで作れって言うな。
ひよりにだってできたわけだ。
本職の俺ができないわけがない。
むしろできなければならない、できて当然、そういうことなんだろう。
ふふふ、やってやろうじゃないか。
そのお米とやらを炊き上げてやる!
「まずは米を洗って鍋に米を平らに均すと」
この小さく白い米を炊くとどのくらい美味しいのか、今から気になるな。
「水を入れてと……水分量は指のここだって言ってたな」
分量を間違えると美味しくなくなるって話だ。
繊細な料理なんだろう。
これは腕が鳴るな。
「ここからが難題だ。弱火で沸騰するまで煮込み、そしてそこから強火で熱する。音が変わったら火を消して蒸らす、だな」
この音が変わったら、が理解できない。
初めちょろちょろ中パッパまでは教えてもらったから理解できたが……
音が変わる?
どう変化するんだ。
俺の経験の中で煮ていて音が変わるなんて感じたことがない。
まずは弱火で温めよう。
そこからだな。
「煮えてきたな」
ここで一気に強火だ。
吹きこぼれそうなほどグツグツ言っているな。
どこで音の変化があるんだ。
絶対に聴き逃してはならない。
すぐなのか?それともまだまだかかるのか?
今日も男の、仕事人の汗が額から流れるな。
ダンジョンで感じる汗と全然違う。
やはり本職で流す汗は最高だ。
「ね~まだー?」
「つ、次こそは!」
もう二回も失敗しているなんて言えないぞ。
一回目はこげまくり、二回目はびちゃびちゃ。
なんて繊細な料理なんだ。
くそっ、失敗したとしてもこれは俺が作ったものなんだ。
食べてやらねば申し訳がない。
だがこれをひよりに出すなんて言語道断。
完成品を出してひよりに感動の涙を流させるんだ。
「完成……だろ……」
この輝くような白さ。
沸き立つ湯気と共に放つ優しい香り。
これが……米!
だが既に俺は焦げ焦げ米とびちゃびちゃ米を食している。
まだ食べれるだろうか……
どっちも美味しいとは言えなかったが、俺が作り出した愛すべき料理達。
お前らのことは忘れない。
「わぁ、できたねできたねっ」
「食べてみてくれ」
「いただきます!」
「どう、だ?」
「ん~完璧だよっ!ちゃんと炊きたてご飯になってるよ~」
「そ、そうか……」
俺も食べたいが、もうお腹がいっぱいすぎて……
「みーちゃんはおかずはお刺身がいいの?マグロ?サーモン?カツオがいいのね~」
『キュキュ!』
サーモンにカツオだと?
どんな味がするんだ。
食べたいのに……うっぷ……
俺の炊いた米を美味しそうにひよりとみーちゃんが食べている。
それを見ているだけで俺は満足さ。
はは、明日は一発で完成させてやるからな!
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