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メダルのナイト  作者: たて ばてん
14/16

第14話 檻の中のリーデル

いつも読んでくださりありがとうございます。

割とグロ表現があります。


 バタバタと赤いローブを身にまとった男達が去り、静かになった廊下を、わざわざ後ろ向きに走るナイトの姿があった。


 コッコッコッコッコッ─────


「すみませんすみませんすみませんすみません。お忙しい中失礼します」


 後ろから先程、見送った人質(ナイト)が後ろ向きで寄ってくる光景に見張りはギョッとする。


 ナイトはボソボソと呟きながら、首だけを見張りの男性に向ける。


「なんだその動き!?気持ち悪!」


 驚いた見張りの言葉に構わずナイトは、無表情で見張りの男の服を勢いよく掴み震える。


「何だ何だ、便所か?漏れそうなのか?」


 ナイトは目を白黒させ、見張りの男の袖を肉ごとつかむ。

 そのまま腰が抜け、流れるように地面にへたり込んだ。

 倒れたナイトの体重と立てられた爪により、槍を持つ男の腕の皮膚が引っ張られる。


「イダダダダダダダ!おいガキ何か喋れ、イタッ何で真顔なんだよ」


「ゾッゾゾゾゾゾッゾンビビビビビビ、じゃなっきゃ、えっエエエエエエルフ?がっご…ひひひひっ……食べ、たべだべ食べてまままままま」


「は?エルフだと?何言ってんだ」


 ナイト自身、落ち着けと頭で言い聞かせるが呂律が回らず、頭を整理が追いつかず、早く伝えなければと慌てて自分が何を喋ってるか分からなくなってくる。


「いいから一回立て。腰抜けたのか。取り敢えず一回手放せ!」


 指を離しぺたりと座り込む。

 足は恐怖で震えが止まらず、地面にうずくまった。

 地面の生温かな温度がズボン越しに伝わり、地面の水分を少し吸収する。

「おー痛ててて」と男が腕を摩りながらも腰を落として、ナイトの背中をさする。


 あっ優しい。


「はっ早く…逃げないと……」


 見張りは、ナイトから手を離し立ち上がる。


「わかったわかった。アルテ隊長が帰ってきたら話す。だからとっとと部屋にでも戻って──」

 グシャリ


 彼からその言葉の続きが発せられる事はなかった

 喋る為の声帯が抉られ血液の行き場を失い、体の外に吹き出しす。

 血の雨が降り注ぎナイトの体と壁を派手に染め上げる。

 さっきまで話していた彼の首と目が合う。


 何が起きたのかわからない表情の男の首は、わずかに唇が動く、しかし頬はベリっと肉が引き剥がされ男の奥歯が露わになる。

 今ナイトの視線には、先程食いちぎった男の肉片を一心不乱に首に齧り付いているゾンビのようなエルフがいた。

 ホラー映画とかだったら、主人公も視聴者も絶望する状況だ。


「クソッ!」


 踵を返し、全速力でその場から逃げる。

 体力はそこまで無いから、何処か身を隠せる部屋を探す。

 しかし、どこの扉も板で打ち付けられていたり、鍵がかかっていたりと、とにかく入れる部屋が全くい。

 そうしていると、扉のない部屋に足を踏み入れる。

 せめてロッカーとかに隠れることが出来ればいいと思っていたが、机、椅子一つない。

 その代わりなのだろうか?黒いシミがあちこちに広がっていた。

 この状況は、場合むしろ行き止まり。


 一体何する部屋なんだろう?

 しかし、行き止まりだからといって慌ててる暇はないのだ。


 今僕は命の危機だ。

 壁や床は、突き出した植物や土まみれで今にも崩れそう。

 いや、かろうじて形を持っているってところだろう。

 こんな所で暴れられては、生き埋めになってしまうことは容易に想像がつく。


 後ろからタッタッタッと裸足の足音が聞こえてきた。

 あのゾンビエルフが、追いかけてきたのか、特徴的な横に伸びた耳を持つ男は一気に距離を積めてきた。


 振り返るとゾンビエルフの口は、一瞬にしてナイトの喉をとらえるが────


「ごめんなさい」


 ナイトの体から青い閃光が放たれ次の瞬間、目が眩んだゾンビエルフの男の体は、透明な膜によって包まれる。

 メダルを使う時の光を閃光がわりにした。

 ゾンビエルフは肺の空気を奪われ、苦しみにもだえる。

 ナイトへと掴み掛かろうと手を伸ばすが、虚しくも指の隙間から水が流れるだけだ。


 聞こえてるか分からないが、此方からの敵意が無いことだけ伝えたい一心でナイトは気休めとして声を掛ける。


 意味があるかは、わからないけど……。


「サフィさんの仲間かもしれませんが、僕を襲うのであれば気絶した後、縄で縛らせていただきます。安心してください。無闇に衛兵さんに渡したりしませんから、大人しくしてくださ…い?」


 無抵抗となったが、相手はメダル持ちなのは確かだ。

 冷静になられると正直無事でいられる気がしない。

 静寂が訪れ、警戒をしつつ覗き込む。

 目の前のゾンビエルフは、体を仰け反らせ口を大きく開けた。


 ゾンビエルフさんの様子にまたメダルを使うのかと身構える。

 ゾンビエルフさんの周りに水流が現れる。

 あっこれ、もしかして?


「え?水を………全部飲み干した!?」


 ゴクリと喉を鳴らし異様に腹部が膨らんだエルフは、無事水の檻から脱出を果たしたのだ。


「......結構な量だったと思うけど、お腹壊しません?」


 そんな腑抜けた質疑に反応する様子もなく、ぐったりと首が項垂れたゾンビエルフに驚くも、ゾンビエルフの体は、突如黄金の光に包まれた。


 ひょっとして、この光はメダルのっ…!?

 そういえば、クルーガーさんエルフはメダル持ちが多いって……やらかした!


「待ってください!攻撃したのは謝りますが、一旦話しましょう?ね?お願いですから!僕防御とかしたことなくてっ」


 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああぁぁぁぁぁぁぁ━━━━━━━━━━━━━━━━━!!


 エルフは突如、野太い雄叫びを上げ黄金の光が強くなる。

 声は狭い壁へと反響し、ナイトの鼓膜を突き抜ける。

 目が眩み至近距離からの咆哮を喰らい、思わず耳を塞ぐも耳の奥へ痛みが走り床へ頭を擦り付ける。


 地面へ伏せた途端、土の向こうから微かな振動が伝わる。

 ひび割れた床からボコボコと土が盛り上がり、聞き覚えのある生き物の唸り声を耳にする。


「この声って、まさかゴブリン!」


 穴からゴブリンの目玉が、ギョロリと覗かせる。

 目標を捉えたゴブリンは、泥まみれのナイフをナイトの喉へ投げつける。


「あっつ」


 既のところで体をひねったが頬に熱を感じる。掠ったようだ。

 しかし、それだけでは終わらず次々と穴からゴブリンが飛び出してきた。


 この城、町の外に近いのか?


「ちょっなんで地面から!?まっ………ッ!」


 身体中から熱が吹き出し、体から力が抜け、息切れと足の痺れを感じたナイトは思わず壁にもたれかかる。


 もしかして、毒!?


 動けなくなったナイトの元へゴブリン達が群がる。

 まずいとウォーターカッターを幾多か打つが、狙いが定まらず数体の個体の腕や足をかすめただけだった。


 っあ、これダメだ。


 死が近くに迫るのを感じながら、ゴブリンによって乱暴に振り下ろされた獲物にナイトは目を瞑る。


 しかし次の瞬間、痛みは来なかった。

 その代わり…


 ドゴーンッ!


「え?……!!?…?………!?」


 後ろの壁が大きく破壊され、体の支えを失ったナイトは、後ろに倒れ込み冷たくも硬い地面の感触とは真逆のモフモフした感触を肌で感じとる。

 ナイトを刺そうとしたゴブリン達が、壊された瓦礫によっ殆どがの潰れた声を発しながら体を大きく損傷する。


 そうか、壁が破壊されれば出口知らないとか関係ない。僕も魔法でそうすれば……いやでも、それやってる間にゾンビエルフに食べられるのが先かな?


 突如、後ろの壁から逆光を背に巨大な体がナイトの背後を完全にとらえいつ攻撃してもおかしくない状況だ。

 だというのに恐怖が色々と大きすぎておかしくなったのか、命がかかってるというのに、どこか人ごとな思考となる。


 地面に倒れ込みその巨体を見上げる体制になったナイトは、不自然なほど丸い輪郭、その下に少し四角い大きめの光が目や口かに見えた。

 穴から赤い光を出す黒く大きな物体が見える。


 一瞬「まさかオーク」と思ったが、オークの体毛はこんな毛深くないことを思い出し冷静になる。

 しばらくして目が、だんだん逆光に慣れてくると見覚えのある形が浮かんできた。

 あの偽物のクマの形。そして首あたりの縫い目の跡。微かに匂う鉄錆の匂い。ふもふした感触。


「サ……フィさん?」


 ナイトの言葉に反応したかのように、クマの目の隙間や口から光が漏れる。

 すると外から流れる風が、ナイトの髪をふわりと掬い上げた。


「『ウィンド・ラン』」


 次の瞬間、柔らかい風が鋭い刃へと変わり、ゾンビエルフの体を切り裂く。


「鎌鼬?」


 その透明な刃は、部屋の壁、天井をも切り裂き土煙をあげ大きく崩れる。

 雪崩が起きナイトは、土煙に一度視界を暗闇に預けることになる。数秒後に砂埃が収まっり崩れた部屋を見渡すとほとんど瓦礫と別の部屋から埃まみれの家具まで落ちてきていた。

 その中にゾンビエルフの姿が見えない、おそらく瓦礫の下敷きになったのだろう。


 サフィさん、仲間に容赦ない。

 話し合いもする様子もなかった。

 そういえば森で、オークより大きい魔物を火だるまにしてたな。

 サフィさんって魔法を使うとこんなに強いのか。


「ナイト生きてる?」


「サフィさん……助かり…ました。ありが……ございます。でも、いいの…ですか?あの…かた、サフィさんの……仲間なんじゃ?」


 恐る恐るサフィに尋ねるが、被り物の隙間が陰になっておりよく見えなかった。


「あの状態で、話を聞いてもらえるように見えるの?それに見てなかった?瓦礫で見えなくなる瞬間、リー…彼は瓦礫を食べながらそのままあの穴に潜っていった」


「突然のっはぁ……光にっ…目が見えな……てってえぇぇ!?そんなッ……こ…と…………あります?」


 意外に、あっけらかんとした返事と、驚愕の真実にナイトは痛みを忘れて叫ぶ。喉から熱い不快感が競り上がってくるのを感じ言葉が途切れる。


 あのゾンビエルフさんが、メダル持ちなら…『暴食』とかのメダルか?それならなんでも食べる魔法とか?

 胃腸が化け物並みになるとか?


「お前、自分が攫われたのわかってんのか?何、他人の心配してんだよ」


 突如、呆れたようなクルーガーの声が聞こえ、ナイトは必死に首を曲げながら崩れた部屋を必死で見渡す。

 クマの影から姿を表し、よろけながらもナイトに駆け寄り状態を起こす。


「クルーガーさん、あっ……ゲッホ!………バックすみません。汚してゲッホ!しまって……」


 ナイトは声をあげるも、気管が詰まってむせる。


「そんなん気にすんな。ゴブリンは個体によっては、毒の武器も使う。少し起こすぞ、俺のカバンに解毒剤用の薬草があるはずだ」


 準備がいい。

 いや僕が、物を知らなすぎるのかおそらく常備品なのだろう。


 クルーガーは、バックの奥から葉が大きく広がった植物が入った瓶を取り出し何をするのかというと…ナイトの喉の奥へねじ込んだ。


 解毒方法がすごい雑。


「ウェッホ!ググ…モゴモゴ……もぐもぐ……あっ……ふいまへん。ゴクンッ!って足!クルーガーさんの方が重症じゃないですか!」


 薬草の効果なのか暫くすると呼吸に落ち着きが見えた。

 クルーガーの足に巻かれた包帯が解けて、その下が露になっていた。


「怪我してるじゃないですか!!しかも出血が酷い。手当て!手当て!」


「いや、お前もどうしたんだよ。その頭の包帯、まさか奴らにひどい目に遭わされたのか?」


「いえ、これは転んだせ━━」


 ガッ!


 突然クルーガーは、城の壁を殴りつけナイトの言葉を遮った。


「くっそよくも!うちの後輩にエルフをけしかけるなんて、何てことしやがる!あの自称闇の王の影、アルテめ!」


 闇の王の影!?自称!?

 突然の痛々しい名前にナイトは、なんとも言えない顔になる。


「それよりクルーガーさんの方が、重症なのでは?尋常じゃない量の血がでてますけど!」


 怪我も酷いが、なんなんだ膝下の布と膝当の部分が獣に食い破られたような形をしていた。


 クルーガーさん、アドレナリン分泌して興奮状態になっているのかな今?

 なんか、いつもの落ち着きがない。


 怪我の肉の部分は皮膚を無理矢理引っぺがしたように見える。

 一体どうやったらこんな負傷を?

 もしかして、さっきのゾンビエルフに遭遇してやられたとか?鎧食べるのかあのエルフ…なんて顎。


「大丈夫だ。俺の怪我については気にするな!いいから今は、此処から逃げるぞ」


 慌てるナイトを宥めるが、クルーガーは負傷した足を庇いつつナイトを抱えて立ち上がる。

 痛みに耐えてるからか額から汗が滲み出ていた。


 こんなになってまで、僕の身を案じてくれるなんて。


 いくら王様からの依頼だとしても、過保護に見える。

 クルーガーさん僕が、成人ってこと知ってるのに。

 本当に彼は、僕がどんなふうに見えているのだろう。


「ここに来る途中、大勢何処かへ出て行ったからな。今がチャンスだ」


 足も他に散らばった瓦礫に気を配りつつ何とかして足を持ち上げ二人は、その場から動く。


 ナイトは割とあっさり城から抜け出せたことに少し拍子抜けた。

 城の外は外装が一段と綺麗なお店や、その付近にいる人々の服や小物が何から何まで派手だった。


 ここ王都だっけ?

 いやここはアルテバロンなはずだ。


 町に来たばかりの風景とは雰囲気が雲泥の差だった。


「あれ?ここって町の何処あたりなのでしょうか?」

「あぁ、ナイトは知らないか。この町の中央辺り、金持ちとかの行商人が多くてな。マーロム一豊で鮮やかな町を売りにしてる。それが国一綺麗な町アルテバロンって町なのさ」


 ナイトは体の痺れがマシになって来たのを感じ、サフィにクルーガーを支えるようお願いした。


 クルーガーは何か言いたげだったが、この場で誰よりも重症なのを理解したのか意地を張ることなく、ナイトとサフィに体を預けた。






「思えば、教会を見るのは初めてだ」


 ナイトは、安全な場所にようやく心が落ち着き方の力が抜ける。


 三人は怪我を治すために教会の敷地内の草むらに腰掛けていた。


 教会は、緑の膜に覆われ小粒の光がふわふわと上空に吸い寄せられているその光景は幻想的だ。

 光に触れてみると浅い傷が忽ち消えた。

 痛みも痺れも嘘のように消える様に、ナイトはクルーガーへ光を寄せようと手を動かすが、一人のシスターにクスクスと笑われた。


「そんな事しなくても敷地内にあれば、癒しの力は彼の体を直してくれますよ」


 不安そうなナイトは、クルーガーに引っ付いた。


 肉はえぐれ、血管や筋肉の断面が見えていた膝もみるみるその形が戻り、肌色の皮膚は何事もなかったかのように繋がった。

 サフィは着ぐるみを着たまま二人の代わりに荷物の警護をしている。


「治ったな」


 足の間隔を確かめるように足首を動かす。

 その様子にナイトはクルーガーへ抱きついた。


「う〜。クルーガーさん本当によかったです!」


「それはこっちのセリフだ。お前に大事がなくてよかったよ」


 サフィは荷物を抱えクルーガーとナイトの頭にグイッとカバンを押し付けた。


「二人とも、馬車」


「そうだな。サフィ警護サンキューな。ギルドマスターは、今はいないし受付の人に軽く報告してとっとと行くか」


 クルーガーはバッグの荷物を確認し、必需品が盗まれた形跡はないとわかるとバックを抱えて立ち上がる。


 教会から出ようとしたクルーガーの言葉を聞いてナイトは、城で聞いた緊急事態を思い出し声を漏らす。


「あっ……」


「ナイト、どうした?」


 ナイトは言葉を詰まらせる。


 アルテさんが言っていた言葉がよぎる。

 ───『この城が安全地帯だとバレれば、こぞってこの城に貴族や町の奴らまでもが押し寄せる。そうなったら一番身分の低い俺たちは、魔物の餌として追い出されるのがオチだ』───


 もし、このまま伝えて町が危うくなった時、彼等は僕のせいで魔物の前に差し出されることになるのかもと考えたら言葉が出てこなかった。


 どう伝えればいい?

 彼等は犯罪者だだからと言って見捨てられるようなことをするなんて僕にはできない。


 ナイトの様子がおかしいことに気づいたクルーガーはナイトの服の襟を掴み、目線を合わせる。


「ナイトお前、また流されたか?」


「……あっえっと?クルーガーさん、近い……です?」


「言え。それがよからぬことなら尚更言え」


「はい」


 ナイトは意志が弱く、異世界では自身に常識がないことを自覚している。

 だからこそ周りの様子を見て判断をしようとする傾向がある。その結果、騙されやすく、知ったかぶりタチの悪いセールストークで『当たり前』、『知ってて当然』と言われて仕舞えば素直に信じて疑わない。

 ナイトのそんな性格をクルーガーは、この町に来て確信したのだ。


 クルーガーの圧にナイトは、話し始めた。

 ナイトは、自称赤い戦士達のスラムで起きた酷い境遇、伯爵暗殺の件について包み隠さず話した。

 話をきいたクルーガーは拍子抜けという感じで肩をすくめた。


 ギルドや伯爵に知れ渡れば、唯一の安全地帯であること城から追われる可能性があるということ。

 そして、彼等はこの城を最後の砦として避難する為にスラムへ家族をつれに出てるこを話した。


「群れか、あ〜まぁどうせゴブリンとかだろ?ここのギルマスなら事情を知ってはいる報告だけでいいだろう。そう慌てることか?」


「いえ、まぁそれが……話によるとオークとかがたくさん来るそうです」


「中級の!?群れ率いるなら一体以上はいないはずだろ!第一どこからの情報だ?」


「赤い戦士のメンバーからです。伝書鳩を飛ばしても血まみれで帰って来てしまい、町の外の仲間が全滅したとか」


「伝達鳩な。それもか、赤い戦士って噂の赤い変な集団のことだろ?でも、アルテが首謀者かメンバーはスラムの人間」


「変な集団って…せめて革命軍とか、反乱軍とかの認識ではないのですか?」


 言い方がいくら何でも悲しい。


「反乱?何でそんなことをする必要があるんだ?」


「え?そりゃ王様に不満があるとかじゃないんですか?」


「それは絶対ないだろ」


 なぜか即答された。

 いや、さすがにどんな国にも反社会組織は何かとあるものでは?

 あまり気に留めてはない様子。


「でも少なくとも町の伯爵にすごい恨みを持ってる人が大勢いるようで」


「伯爵を?確かに保身を重視し過ぎらとかもあるが、だからと言って暗殺は、冒険者として見逃す訳にはいかないし………くそっなんで、この町に魔物が集まっているんだ。群れの全滅後は警戒するから来ないはずだろう」


 頭を負傷したのはナイトの方なはずなのに、クルーガーは頭を抱える。


「えぇっと……そういえば伯爵は、スラムの人達を冤罪で処刑して、メダル狩りを積極的にしてるってアルテさんから聞いたんですけど」


「はぁ?第一メダル狩りは、他でもないアルテがやってるんだぞ?」


 さっきから情報の食い違いがひどい。

 アルテさんが嘘をついてる割には、周りの大人達の反応はアルテという一人の男を信頼している様子だった。

 だからこそ嘘なんて思えなかった。


 どちらを信じればいいんだ?


「あとなんでさん付けしてんだ?」


「一様、年上ですし…」


 ナイトの返事にクルーガーは、流石に呆れた表情となる。


「…あ……ん゛ん゛ッ…確かに伯爵は、臆病すぎてスラムからも正門からも遠い、裏門近くの場所へ無理矢理屋敷を写すような奴だけど。冤罪事件か………少なくとも半年前には、この町にメダル持ちの情報があれば話くらい聞くはずなんだが」


 小一時間考え込んだクルーガーは、ナイトに向き直り肩を掴む。


「まぁ、お前の言いたいことはわかった。スラムの連中の扱いについては否定しない。だが町の危機となればギルドへの報告は必須だ。ナイト、話してくれてありがとうな。ギルドマスターからは俺が報告しておく。ギルドマスターは俺たちの事情を知ってるから緊急クエスト免除してもらえるかもしれねぇし」


「っでも今、ギルドマスター王都へ出てしまったんですよね?赤い戦士の1人が確認したそうです。それで伯爵暗殺って話になってたみたいですし」


「…伯爵暗殺にギルドマスターが邪魔ってことか?無関係なはずなのに何でそんなことを…ア゛〜ダメだディオラならわかるんだろうけど…とにかくナイト、何度もしつこく言うが……」


「僕は、王様からのクエストをクリアすることを考えろですよね」


 ナイトの答えにクルーガーは安心した様子を見せる。


「わかってるならいい。まったく本当にキリがない」


 そう言ってクルーガーは、ナイトとサフィを教会に残してギルドへと走り去っていった。


 教会は衛兵が二人ほどついている。

 流石に衛兵の前で再び誘拐行為はしないだろうという考えでナイトは安全圏でお留守番だ。


 ナイトは、動けない事に呑気に暇を感じサフィへ話題をふった。


「そう言えば、サフィさん。壁抜けしたとはいえ、城にいた時よく僕の場所が分かりましたね」


「話せば長くなる。最初聖騎士が此処に不審な人物の出入りがあったと聞いた」


 サフィさんは、町の中央にある廃城へ進入してからの話をしてくれた。


 それはナイトが、ゾンビエルフに襲われる数分前のことだ───────








 あの時二人は、目立たないように正面からではなく、城壁が崩れて入れそうな場所を探していた。

 案の定、足跡等の人の出入り形跡のある穴が見えた。

 サフィとクルーガーは、ナイトが囚われていると思われる城の地下への道を探す。


 しかし、どれだけ部屋を探っても何処もかしこも行き止まり。どの部屋も埃が溜まりに溜まっていて、何十年と使われてないのは明らかだった。

 しかし外からの足跡を見るに、何人もの出入りは確かだった。


 すると次の瞬間、「誰かいるのか」と男の声がした。二人は隠れた。もしナイトを誘拐した者の1人なら後をつけて戻った所を押さえるつもりだった。


「曲がり角曲がった」


「よし行くぞ」


 しかし、追いかけた二人が次に目にしたのは、先程の男の姿は跡形もなく土で埋め固められた壁の行き止まりだけだった。

 手をついて調べるが手を加えられたような物は見当たらず砂粒が手にこびりつくだけだった。


「クッソ、隠し扉か?スイッチとかあるのか?でもそんなもの何処にもまあたらねぇし、あ゛〜どういう事だ?」


 もどかしさに壁に頭をコツッとぶつけ、悶える。


「クルーガー、もう面倒くさい」


「何言って──!?」


 ガシガシと自分の頭をかくクルーガーにサフィの体は、緑の光に包まれていた。

 クルーガーは、その光に気付き振り返ると、サフィの苛立った表情に嫌な予感が頭に浮かんだが、次の彼女の一言で確信となる。


「ぶち破ればいい」


「待て待てサフィ、早まるな!この町の連中とか気づかれたらっ」


「マーロムはナイトのように、大したメダルの知識はないんでしょ。下手なことやらなければバレる可能性はない……と思う。それにエルフは、杖がなくても魔力の扱いは少しは出来るんだから」


「人体が光る言い訳は用意できねぇって、おい!」


 手を壁にかざし、「セア!」と口にすると、壁の土は風の渦よりゴオォォンと大きな音を立てて破壊された。


「そこは呪文じゃねぇのかよ」


 風の音に紛れて『グエッ』っと声がした気がしたが、二人は侵入に成功したことを喜び、再びナイトを捜索に尽力することにした。


 そうして二人は、奥の暗い鉄でできた頑丈な扉を見つけ、すぐさま牢屋への扉だと確信し暗くてジメジメした狭い階段を降りていく。


「湿気か?なんか臭いな」


「クルーガー、よくスラスラ入れる」


「いちいち臆してたら冒険者は務まらねぇよ。誘拐されたってことは、少なくともナイトをすぐに殺したりはしねぇはず。でもぐずぐずして時間をかけてたら、生かす理由がなくなってナイトが、殺されるかもしれねぇんだ。迷ってられねぇよ」


 下へ降りていけば行くほど床の所々は滑りやすく、何だか異臭もしてきた。

 クルーガーは、最悪の想像をしてしまい思わず上体をを少し前に倒す。


「クルーガー?………どうしたの」


「…平気なのか?……いや………………何でもねぇ」


 二人で牢屋のある部屋を進む。

 手から伝わる鉄格子の感触を感じながらナイトを呼んぶ。


「ナイト━━━━!!返事してくれ!」


「うぅ………」


 微かではあるが、低いうめき声が確かに聞こえた。


「ナイトか?」


 クルーガーは、声のする方へと駆け寄るも階段の滑りに足を取られ激しい音を立てて一度、転落した。

 慌ててサフィも階段をおり、クルーガーへと駆け寄る。


「いっ」


「何してんの…って、明かりつける。無闇進むと危な…っちょっと待って!」


 サフィからの静止の声を振り払い、真っ暗闇に腕を伸ばしながら叫び続ける。


「ナイト!いるのか?」


 かすかに血の匂いが聞こえ、ぐちゃりと肉が骨から剥がれる音が聞こえた。


「ナイト、ナイト!生きてるか?返事しろ!」


 一瞬サフィは、牢屋の奥から殺気を感じ取り、クルーガーの襟を掴み大きく後ろへ下がる。


「『バーン・ウォー』!」


 サフィが呪文を唱え、牢屋に炎が上がり男がある牢屋を燃やす。

 鉄格子は熱で少し変形していた。


「サフィ何してんだ!」


「クルーガー、一瞬の影、ナイトにしては体格が大きい。あれナイトじゃない」


 さっきまでクルーガーがいた場所は、石の地面が大きく抉れていた。

 クルーガーは感じた殺気に剣を抜き、目の前の対象に刃を向ける。


 炎は牢屋中を照らし、あちこちに人だった肉の塊たちが飛び散っているのが確認できた。


「このぬめり、血か?何でこんなに…」


 鉄格子の向こうから耳の長い青年の影が見える。


「あの耳、エルフ。何でこんなところに」


「アルテの野郎と繋がってたつうエルフか?」


 炎を恐れずにゆっくりと、その姿を現した。

 サフィは思わず魔法を使用のため構えていた手を下げる。


「リーデル様?」


「リーデルって……その様子だとサフィの知り合いか?」


「私のパーティの一人………でも、」


 リーデルと言われた青年の体は、見るからにボロボロで体のあちこちが獣に食われたような傷が目立つ。


「リーデル様。マーロムの奴らに捕まっていたのですか?」


 心配するサフィの言葉にリーデルと言われた、エルフの男からの反応はない。

 クルーガーも反応を見るために、警戒しながらサフィの前に出でる。


「なぁ………あんた、アルテの被害者か?なら、あんたを助ける協力をしよう。その代わり、俺の仲間のナイトってやつを助けるのを手伝ってくれ。俺は、エルフのメダルに興味はない。この城の周りには人が多い、最悪メダル狩りに合う可能性がある。マーロムで身元がバレるのは避けたいだろ?」


 手遅れな感じはあったが、クルーガーはとりあえず交渉できないかと出た。

 ゆらりとリーデルが体を左右に揺らした次の瞬間、風圧を感じ思わず目を瞑る。

 バリッと何かを剥がす音と共にリーデルは二人の背後に立っていた。

 一瞬何が起こったのかわからなかったが……


「うぐぅ」


「クルーガー!どうしたの?」


 クルーガーは、足の熱に跪き身体中の汗が吹き出す。

 膝下から地面へと滴る液体は汗ではないのは炎の灯りがなくてもわかる。

 視線を移せば、皮膚が引き剥がされていた。


「リーデル様…何で…………」


 驚きを隠せないサフィをクルーガーは、負傷した片足を引き摺りながら盾になるように庇い目の前の男を凝視する。


 目の焦点が定まらないリーデルが、肉を咀嚼する姿があった。


「自分の肉をもぐもぐとされるのは変な気分だな」


 リーデルがゴクリと喉を鳴らして飲み込んだ後、血に染まった口周りを舌なめずりする。


「何だ………何が起こっている」


「わからない……何で、リーデル様は違うのに」


 それぞれの理由で混乱しながら二人で身を寄せていると、階段の上から声が聞こえた。

 おそらくナイトをさらった一員の一人だろう。


 リーデルは、一瞬にして階段上の男の喉に食らいついた。

 ぐちゃりぐちゃりと生々しい音に耳を塞ぎたくなるが、サフィは炎の魔法を消し、風の魔法で扉を閉め、鍵をかけた。


「何して!…サふっもが」


「静かに」


 見捨てたことに意義を唱えようとしたが、サフィによってクルーガーの口が塞がれる。


 扉の音に反応したのか、ドンッドンッと扉を叩く音、爪を引っ掻く音が聞こえてくる。

 どうやら腕力自体は、そこまで強いわけではないらしい。

 サフィは火の魔法を灯りがわりにして、自分の服を包帯代わりとしてクルーガーの足を止血した。


 暫くして静寂が訪れ、気配も感じなくなり二人は落ち着きを取り戻す。


「それで、違うってなんだ?リーデル…だっけ?よくしらねぇけど、どんなメダルを使ったらあんなふうになるんだ?サフィ、魔法で照らされた時、お前この部屋の周り見たか?どうやらあの滑り全部血みたいだぜ?死体らしき物は何故か見当たらないのは気になるが、この血の量、尋常じゃねぇぞ。ここ拷問部屋だったのか?」


「違う」


 サフィは混乱した様子で頭を抑えこむ。


「リーデル様はメダル所有者じゃない」


「なに?でもナイトと同じように体光ってたよな?あれはメダルによる発光だろ?」


「………うん。リーデル様は、家の事情でメダル所有ができない決まりって聞いた。でも剣の実力を買われて冒険者になった。それに、あの魔力の無駄な魔法の使い方。エルフならまずあり得ない。魔法が使えなくても魔力のコントロールは幼い時に習う。だからこそあんな乱暴な使い方…訳がわからない」


「お前もさっきしてたような……」


 サフィはせっかく再開した同胞の代わりようを見てショックではあるが、顔を上げすぐに立ち上がり扉の向こうの気配を探る。


「おい、俺をこんなところに置いていこうとしてんじゃねぇ」


「仕方ない。クルーガー、とりあえずここにいて。私、ナイト探してくる。そしたら急いで教会に行く。じゃ」


「待て待て。お前一人じゃあメダル使ってるところを誰かに見られれば最悪、町に周知されるぞ」


「問題ない。私にはこれがある」


 自信満々なサフィは、クマの着ぐるみを再び着た。


 ……二人の間に長く短い沈黙が訪れた。


「余計、目立たないか?」


「大丈夫。光ったとしても、口からしか漏れない何とか誤魔化せる。それより、ほらランタン持って、待ってて」


「だから余計可笑しいって。見たことあるのか?城を着ぐるみが徘徊するところ。どう見たって異質だろ。何をどう誤魔化す気だよ。やっぱりお前だけじゃ心配だ。俺もついて行く」


 壁の件もあってかクルーガーは、必死に引き止めようとする。


「その足じゃあ何もできないでしょ」


「失礼だな。石投げるくらいはできる」


 サフィへ投石をする仕草をシュッシュっと自信満々にみせる。


「……わかった。担ぐから大人しくして」


 そう低い声でサフィは、クルーガーを背負い地下を後にした。







「───────それで幸いにも、リーデッ……敵の気配がなくなったから、クルーガーを持って私は、ナイトを探すため、壁を破壊しながら歩いていたらクルーガーが血の匂いを感じ取った。向かったら襲われたナイトがいて、今に至る……よ」


 僕が呑気に城で呆けてる間に、そんな壮絶な戦いが繰り広げられていたなんて………。

 彼女が頑なにリーデルと名前を言わないのは、これから戦う上でサフィ自身が敵と認識しようとしてるためなのだろう。

 彼に何があったか分からないが、話ができなければ始まらない。

 戦闘になってしまうのは残念であるが、今は仕方ないことだろう。

 最終的に怪我人のクルーガーさんに肩を貸してもらうことになってしまった。

 僕は、なんて不甲斐ない。


「サフィさん、すみません僕のためにせっかくの仲間に会えたのに」


「何が起きて、あの人がああなったのかわからない。なのに誰のせいとかない」


「……せめて僕にもっと力があれば。クルーガーさんだって怪我をすることもなかったはずなのに」


「ナイト、クルーガーなら冒険者だからそれくらい予想通りいう。だけ…」


「クルーガーさんを背負えるというのに…」


「……そっち?」


「非力なのはわかってるので……せめて迷惑かけないくらいには力つけたいです」


 あまりにもネガティブな発言。

 今届かない目標より近い目標を立てることにした。

 強くなりたいではなく、力つけたいと。


 サフィは、前向きなのか後ろ向きなのかわからなくなり首を傾げる。


「ほんと、冒険者に向いて無さすぎる」


 サフィは布の向こうで苦悶の表情になるが、ナイトはサフィが何か呟いてそのまま黙り込んでしまった事に目を白黒させるだけだった。


 二人がだべっていると教会に老婆が入って来て、互いに会釈した。

 ご病気か、怪我とかかなと思ったが、そういえばここは教会だ。


 ナイトは礼拝に来たのだろうと思い直す。


「あっおはようござ……あれ?こんにちはですかね」


 ぎこちない挨拶に老婆は思わず微笑む。


「あっシスターさん呼んできましょうか?」


「あ〜気にせんでいいよ。お気遣いありがとう。これは日課だものシスターさんは知ってるわ」


 余計なお世話だったかなと、せめて老婆の通行の邪魔にならないように二人は後ろに下がり道を譲る。


「若いね。何処から来たの?」


「あぁっと王都から来ました」


「そうなの、王都ほどじゃなくてもこの町は、綺麗な場所がたくさんあるの。知ってるかい?この町はその昔、魔物の王様がこの町を支配してたことあったのよ?その時のお城がまだあるの!まるで人間が作ったようなものみたいで、ゴブリンみたいに人の魔物の真似をする魔物は他にもあるけど、あれはとても素晴らしい作品なの!そうね、よかったら7日後の祭りにも参加してみてね!この町の1番の場所を案内してあげるから」


 老婆はナイトが、初心者で他所から来たとわかったからなのかグイグイと色々教えてくれた。


 作品…あの城この町では芸術品扱いなのか。

 魔物昨ではありますが…


 ボロボロではあったけど、住めるあたり割としっかりと作り込まれていたことを思い出す。


「あっありがとうございます」


 気まずかった。

 だってナイトは、この町が魔物に滅ぼされるかもしれないとわかっていたというのに、もう直ぐ逃げようとしているのだから。


 ポタ


 頭の上から水滴の感触がした。

 雨かなと手を当ててみると、少し温度を感じる。


「え?」


 ナイトの指は水彩の絵の具に晴れたのかと思うくらい赤かった。


「『ウィンド』」


 サフィの魔法が発動し、その場で暴風が吹き上がる。

 ナイトと老婆の体は教会の壁に打ち付けられた。


「いった。ちょっ、サフィさんいきなり何を────」


 ────グシャ!グチャ!ガッ!ガッ!


 突如、肉や硬いものが潰れる音が響き、三人がさっきまでいたところは鉄錆の匂いが充満した。

 音の正体は人だったものが複数、それを無理矢理圧縮したようなものの塊がいくつかだった。


 なるほど死体が落ちて来た。

 よく見たくないが、よく見るとついさっき見たことのあるバンダナを巻いている人がいた。


「なんで?この人達スラムに向かったはず…」

「ナイトの知り合い?」


 サフィの疑問に答える暇もなく集まって来た人々の悲鳴でその場に恐怖で支配された。


 空からの風の音に、まだ死体が落ちて来たのかと身構える。

 予想外なことに空から死体を踏み潰し着地した何かが現れた。

 その姿は顔の横伸びている耳が特徴を認識する。


「リーデル…様」


「え?追いかけて来たのか?」









 一方、クエストへ出かけようと浮き足立つ冒険者は正門を潜り抜けようとしていた。

 しかし開けた瞬間、門の向こうに生命を感じない門番の死体を解体するゴブリンの様子を確認し動きが止まる。


「閉めろ!」


 聖騎士の言葉によって急ぎ扉を閉める。

 しかしその瞬間、ゴブリンによって投げられたナイフにより冒険者の一人が目玉を抉られる。


「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁあああ!」

「お前達早く教会へ行け」


 聖騎士の指示で、教会へ負傷した冒険者を担だパーティーの面々は急足で向かう。

 取り残された聖騎士は、「予想外の出来事だと」冷や汗をかき閉じられた門を睨みつける。

 ちょうどその時、ギルドへ向かっていたクルーガーが、呑気に聖騎士の肩を叩く。


「おい、お前聖騎士か?こんなところで何してんだ?衛兵呼んでくるんじゃなかったのか?」


「さっきまで魔物はいなかったはず。何処から……ん?クルーガーか!?お前、何でここに。黒騎士様を助けに行ったんじゃないのか?」


「いや、ナイトは救出したが俺はお前が援軍呼んで来るって言っておきながらなんで門にいるのか聞いてるんだよ。なんだ?魔物の群れでもいたか?」


「相変わらず呑気だなお前()は、とっととギルドに報告して……まて、なんで群れだと思った」


「いや、なんかあちこちの方角から多くのオークがゴブリンを率いて、この町に押し寄せてるって聞いた。本当かどうかは知らんが、ギルマスいないけど報告だけでもしようかと思ったが、門番に閉めるよう言った方がいいかなと思って俺こっち先来たんだけど、取り込み中か?」


 聖騎士は何か言おうとしたが、言葉を飲み込み悶えやっと声を絞り出した。


「さっき大勢のゴブリっがいたからあ゛っ…ぐッ〜〜〜とっととギルドへ報告しにいけ」


「?…おぉう。そのつもりだ。あっ後、門番とかに用があって」

「いいから早く行け!!」


 聖騎士にクルーガーは気圧される。

 しかし次の瞬間ゴゴゴと地面が揺れ、緑の角ばった手が聖騎士の足首を掴んだ。

 相手がゴブリンなのかクルーガーは気の抜けた声で疑問が溢れる。


「ゴブリンって生えるんだっけ?」


「生えるか!くそっ魔物は、門から入ってこいよ!」


 足を掴むゴブリンの顔を剣で刺し、次々に魔物が地面からでてくる光景に町中はパニックへ陥る。






「また負けだな王様」


 ゴブリンに慌てふためきながら剣を振るう聖騎士を見下ろし、そう口にした赤い影は、正門から掛け離れた伯爵の屋敷へと足を踏み出す。


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