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メダルのナイト  作者: たて ばてん
11/16

第11話 サフィと忙しい買い物

「はぁ。昨日はあの受付のお姉さんに、めちゃくちゃ怒られた」


 ナイトは落ち込みながら朝食のスープを口にする。


 下級冒険者が中級クエストに挑むのは違反だ。

 それは分かるだが今回は緊急だったからお咎めはないはずだったが───


 ナイトはオークを倒した後、ギルドに報酬を受け取りに行った。


 そこで経験も浅い上、無理して戦ったことを知った受付嬢に「馬鹿ですか!」と怒られた。

 どうやら昨日のナイトの行動は、よくない行動だったらしい。


 緊急クエストだったら群れの討伐は、町の総力を上げて魔物を倒すクエストだ。


 だが今回のように町の人間、もしくは冒険者でも倒せないほど強い魔物が現れた時は、『町の戦力では対応不可能な案件』とこの町の正門からかなり離れた屋敷にいる伯爵様から王都へ報告をしてもらうのが本当の目的だったらしい。


 そうすることで対象の魔物を倒せるだけの兵士を幾人か派遣して貰えたと説明された。


 ギルドマスターがメダルを使って欲しいというのも、実際、初心者なのも理解した上でメダルを使っても苦戦するというのを伝えるためだとか。


 今は下級冒険者しかいなかったから尚更王都からお援軍が来ることが前提のクエストになるのは冒険者稼業じゃ常識だ。


 もちろんナイトは、そんな事情は知らない。


 まぁ要するに、ナイトが無理にオークを倒す必要はなかったのだ。


 この時のクエストは手下のゴブリンの数を減らすくらいでよかった事をギルドマスターに言われた。


「初めからそう説明すればいいのにと思うが名目上、街の戦力の一つである冒険者が本気で戦って勝てないという事実がないと、伯爵様に援軍を呼んでもらえない事。まさか、ナイト君が知らないとは思わなかったよ」と。


 これもマーロム人なら知ってて当然の常識なのだろう。


 しかし知らないからと言って、クルーガーを助ける為とはいえ自分の無謀な行動に、ナイトは反省しなければならない。


 そんな立ち直りが遅いナイトを見ていたサフィは、クルーガーに耳打ちする。


「クルーガー。ナイト、冒険者以外の仕事、探したほうがいいんじゃないの?」


「俺もそう思うが、だからと言ってあいつは文字も読めないし、騙されやすい。少なくとも商人には向かないだろう。何より身元不明がつける仕事なんて…このご時世、難しいだろうな」


 クルーガーはじっとナイトのことを心配そうに見つめ、さりげなく自分の皿から肉を分け与えようとするが、ナイトに朝から重いのでと断られる。




 朝食を済ませた三人は、買い物に行くため宿屋の部屋で荷物確認をする。


 ナイトは毒瓶の蓋をより強く締め直す。


「1日が短く感じる……歳かな?」


「ジジイか。まだそこまでの歳じゃねぇだろ」


「いや、あの…最近僕、気絶ばかりしてるからいつの間にか日付が変わるばっかだったので」


 サフィは、さりげなくクルーガーを見上げる。

 あれから聞いた話だとオークに潰されてた人たちは教会で奇跡的に死を免れたらしい。


 人間の生命力ってすごい。


 見たところ、結構思いっきり人体が壊れていたように見えたはずなのに。




 にしても、規定上倒せないって分かってて戦わせるって……


「命軽すぎませんか?」


「ナイト、し!冒険者みんな思ってるけど、し!」


 クルーガーは人差し指を口元に当てる。


 そこは思ってたんだ。


「いつも上級達が余裕で倒してるから、危機感が抜けて下級でも冒険者はいるのだからと、伯爵に重要ととってもらえなかったみたいだ。」


 それでも町への危機であることには変わらないと思うけど………


 なんか伯爵様って…


「マーロムのお偉い様方は平和ボケしてるって本当ね」


 思わずナイトは口を覆う。


 僕がつい言ったわけじゃなかった……。


「サフィ。聞こえるからもっと声絞れ。侮辱罪で捕まる」 

 宿屋の前にたむろしている他の冒険者に目を向けると、頷いてる人が数人見えた。


 かきゃ冒険者の皆さん不満が溜まっていらっしゃる。


 上級の人達、早く帰って来てくれるといいな。


 またあんなの来たらたまんない。


 俯くナイトにクルーガーは落ち込んだんのかと思い、飴を渡す。


 大阪のおばちゃん?


 美味しくいただ──美味しくないやこれ。

 何味?えぐみが凄く吐き出したい衝動に駆られるが、貰ったものをダメにしたくない思いで飲み込む。


「倒す倒さない以前に、ナイトは冒険者にオークの目の前にぶん投げられてたからな。戦ったのは自己防衛だって言えばよかったじゃないか?」


「ナイト、言い返さず、ひたすらごめんなさいって言ってた」


「いえ、クルーガーさんの逃げろって指示に逆らって、僕が出しゃばったのが事実です。言い訳をするのはよくありませんし、僕は反省しなければなりません」


 結果として僕は、ギルドに、町に迷惑をかけてしまったんだ。


「でもナイトはクルーガーを助けたかったんだよね?」


「っ!」


 サフィの指摘にクルーガーは目を見開く。


「ナイト、俺はお前より経験がある。このくらいのピンチ何度も潜り抜けて来た。だから俺の事は気にせず、今度はちゃんと自分の身を守ってくれ」


「はっ………はい」


「でも、ありがとうな」


 クルーガーは責めずにナイトの頭を撫でる。

 しかしナイトはそれでも顔を上げられなかった。


 その様子を見ていた影に三人は気づかない。


「そういえばナイト、筋肉痛は本当に治ったんだよな?結構な苦しみに見えたけど」


「大丈夫ですクルーガーさん。ちゃんと痛みは治りました」


 ナイトは腕を上げ下げして元気だとクルーガーに見せつけた。


「にしても、ナイトは普通に力が無さすぎる気がするけど、病気とかじゃ無いよな?」


「そっ………それは。僕が鍛えてないからです」


 恥ずかしいが、これは本当だ。


 元の世界にいだ時は必要最低限、外に出ることは堕落に繋がるとして家で禁止されていた。


 その分体育ではいつも情けなく一番に体力が切れる。


 しかし、ここではそんな言い訳は魔物がいる世界は許さない。


「甘えたことをいうわけにいかない。せめてここにいる間は鍛えないとな」

 





 ナイト達は宿をでた後、道具屋に来ていた。


 もちろん、壊れたクルーガーの鎧を新調する為だ。


「ナイト、本当にいいのか?俺の鎧代、払ってもらって。オークを倒したのはお前だろ?報酬はお前が一人占めしていいものだぞ?」


「確かにトドメを指したのは僕ですが、そんな僕を護ってくれたのはクルーガーさんです。だから、僕だけの成果じゃないです。せめて金貨一枚受け取ってもらうか、何か奢らせてください!」


 そう言ってナイトはクルーガーに迫る。


「謙虚で、遠慮ばかりしてるくせになんでこういう時は押しが強いんだよ。その威勢をナイフ買わされる前に発揮しろよ」


 クルーガーが鎧を選び終わるのを待ってる間、ふとナイトは店の壁に貼り付けられた指名手配の似顔絵が目に入る。


 昨日の衛兵に職質された事をナイトは、思い出していた。


 あの日、群れ襲撃の後すぐに衛兵へ指名手配の人物の目撃情報が入った。


 なるほど、追っていた先に血まみれのクマを見かけたから、衛兵が警戒するのも当然だったわけか。


 サフィは、その時間は魔物の群れ討伐に行っていた。多くの冒険者が見ていたからアリバイがある。


 その時は冒険者のカードを見せて終わった。


 そう、ナイトとサフィは本当にカードを見せただけだった。


「中身まで見ないなんて、偽物があったらどうするんだろ」


「カードが本物から魔力を込めた時に光かどうかでわかる。少なくとも正式な冒険者カードは、そう簡単に量産できるものじゃないからな」


 クルーガーは鎧を試着しながらナイトの疑問に答えてくれる。


 なんか装飾が派手だ。

 めちゃくちゃ似合ってない。


「指名手配されるほどの犯罪者、怖いですね」


 気にせずナイトは、クエスト中のオークに飛ばされていた冒険者達を思い出す。


「あっそういえば指名手配犯追ってた冒険者の人、吹き飛ばされてた。」


 冒険者って魔物を倒すのが主なのかと思ったけど、そういうのもやるんだな。


「その話なら俺も聞いたな。昨日、指名手配犯を追っていた冒険者達がクエストを無理矢理中断した上に重傷を負ったから、せっかく確保出来そうだった手配犯が逃げてしまい。捕まえるのが余計困難になったとか………………」


 緊急クエストが裏目に………


 百匹にも満たない数だった群れ、重要なクエストを中止させてまで戦っていないと国からの援軍は望めない。


 ナイトは、しっくりこない指示に眉を潜めて唸っていると肩に手を置かれた。


「門が開くのは明日になる」


 声の方に振り向くと、クマ(サフィ)はお肉を片手に持ってやってきた。


 いないと思ったら買って来たのか。


「暇だったから店で買ってきた。美味しい………」


 見た目、肉食動物だから熊と合ってはいるな。


 クルーガーは、慣れたのか表情は動くこともなくなった。


 というか無表情だ。


「サフィ、誰に聞いたんだ?」


「裏路地で衛兵とここのギルドマスターが話してたのを聞いた」


「やっぱりな」


「クルーガーさん?やっぱりって飾りの件でしょうか?」


 騒ぎで聞きそびれたが結局稀に他のボスがいたかもしれない可能性はどうなったのだろう?


「ナイト、その件だがもう終わった。あまり触れると、また先に進めなくなる。俺たちのクエストは峠のゴブリン退治に集中しよう」


 クルーガーは念を押すと、ナイトは頷きそれ以上聞くのをやめた。


 ゴブリン100匹を雑魚として扱う割にはクエストを機密事項にしたり、それ以下の数にクエストを中止しなくてもいい冒険者たちを無理矢理集めて退治させたり、なんなんだろうこの世界。


 ナイトは狭い洞窟でのディオラの行動と、町の手続きの悪さ、中級の魔物が混ざってる可能性があるのに油断し続ける、らしくないクルーガーに声を漏らした。


「やっぱり呪い?」


「ナイト、呪いってどうゆう事だ?」


「いや、クルーガーさんとディオラさんのゴブリンに対する行動がらしくなくて、もしかして悪魔の呪いが関わってるのかなと」


 クルーガーはありえないと断じた。


「ナイト、それは無いんじゃないか?悪魔なんてナイトが倒した悪魔はここ200年存在が発見されてないし、そんなにホイホイいたらとっくにマーロムは滅んでる。ゴブリンに関しては、そもそも普通に問題ないと判断してるだけだ。下級冒険者ならあっさり倒せる、ナイトより俺たちはちゃんと経験重ねてる。お前は心配しすぎなだけなんだよ」


 ……そう言われるとそんな気がしてきた。


 ディオラさんも本当は作戦があったから洞窟に入ったかもしれない。


 冒険者達は仕方ないと思ってルールに従ってるだけだったのかもしれない。

 こんなんじゃあ、ナイトはサポートどころか邪魔してるだけなのではないかと気づく。


「馬鹿だな。僕は」

「まだ、お前は始めたばかりだ。これから経験を重ねていけばいい。それでお前は相談する癖をつけろ、まずはそこからやっていけ」


 クルーガーの言葉に濡れた目元を拭いナイトは頷く。


「よし!まずはゴブリン百匹だ、経験沢山詰めるな!」


 気を取り直したクルーガーに表情が固まったナイトは、白目をむいて向かいの武器屋をじっと見回した。


「百匹………地雷とか、爆弾とかないかな?」


 銃がある世界ならあってもいいでしょうに。


 緊急クエストの群れより多く倒さなきゃいけない現実に、もうちょっとこの町にいたいと思うナイトだった。





 次にサフィの服を買うため店に赴いた。


「この世界、着ぐるみもあったからパーカーもあると思ったけど、ないな…………」


 ナイトの呟きにクルーガーは首を傾げる


「パーカーってなんだ?」


「あっ……と、フード付きのジャケット?…って伝わるのかな?えぇっと………冬に着る普通の服にローブ?の頭の部分が着いてる感じの服です」


 パーカーって昔は、なかったんだっけ?


 わかんないよ〜。


 クルーガーさんはそんな僕の情報を頼りに店主へ聞いて見てくれたが──


「え〜っと………すみません。そういったものは此方では取り扱ってません。ローブはありますけど………」


 この通り無さそうだ。


 店にあるローブはヒラヒラしてるし、動きずらいかも。


 どうしたもんかとナイトは悩んだ。


 ましてや今は、タイミングが悪い。


 クルーガーはナイトに耳打ちする。


「ローブは今はやめたほうがいいかもな。どう見ても訳ありと思われる。最悪、店主に探られて通報されるのは避けたい」


 そう言われるとナイトは店主が着ぐるみのクマを睨んでるのに気がついた。


 早くもピンチ。


 店主は臆する事なくクマの着ぐるみに詰め寄る。


「っで?なんで顔を隠そうとするんだい?最近指名手配犯がうろちょろしてるって聞いてね。面倒ごとはごめんだよ」


 店主はクマの口からサフィの顔を覗こうとするが


「あぁ───!」


 ナイトが奇声を発する事で阻止した。


「うお!なんだい。いきなり大声で」


 店主は驚いた声でナイトの方へ振り返る


「いや、あの彼女は今アラレもない姿で、その上恥ずかしがり屋なもので顔を見られると照れてしまうのです!」


 聖騎士の時のように言い訳して切り抜けようとしたが、しかし警戒しての事か店主の表情は納得してない様子。


 さりげなく後ろから足を蹴られ、ジンジンと痛む。


 サフィさん今は我慢してください。


 店主に余計怪しまれたか?

 店主は近くにあった服を手に取る。


「そんなら買えとは言わないが、服を着て顔を見せてくれよ。ここは服屋だ。やましくないなら一瞬でも見せることくらいはできるだろ?」


 「着てみろ」と店主は服をサフィに押し付ける。


 恐らくだが、エルフの特徴はあの耳長だ。


 でも、ここで拒否すると今度こそ無理やりサフィさんの顔が見られかねない。


 ナイトは勢いよく店主から服を奪い、片手にサフィを掴んで試着室に入った。


「………なんで彼まで入る必要があるんだ?」


 ナイトの行動にますます不信感を持った店主。


「あぁ……えっと。あいつは世話焼きなもので」


「だとしても待機するとしたら外だろ。中狭いぞ?」


 店主の言った通り試着室は横に大きい着ぐるみに圧迫されていた。


 僕も焦って一緒に入ってしまった。

 そりゃ家族でも試着室に一緒に入る人いないもんね。


 クマの被り物に頬を圧迫されナイトの体の空気が漏れ出す。


「グフッ」


「自分でやっといて死にそうな顔しないで。それでどうする?私、このまま逃げる?」


「いや、今逃げたら余計犯罪者を匿ったかもって結果的に通報される可能性があります。ここは僕に任せて」


「どうする?」


 被り物をカーテンの外へ出してサフィは髪を上げる。


 サフィの耳が揺れた。

 耳が動いた!可愛い〜。


 状況を忘れたのかナイトの緩んだ顔に、サフィはナイトの眼球に風を強く当てた。


「ぎゅ、ドライアイ魔法ですか?」


「そんな魔法聞いた事ない!それよりナイト、聞いてんの?」


「すみませんすみません!それで耳を隠すだけならいいでしょうか?」


「まぁ、エルフの特徴は耳の長さでしょうね。マーロム人にとってエルフとマーロム人の区別ってつかないらしいわよ」


「耳だけなら、一瞬でもいいなら髪でも問題ないはず。サフィさん髪留めのゴムあります?」





 試着に数分かかり店主は痺れを切らす。


「なぁ?もういいか?」


「ちょっと待ってください!女性は支度が遅いものです!」


「……ちょっと俺も見て来ていいですか?」


 ナイトの震えた声に心配でたまらなくなったクルーガーも、試着室のカーテンをつかんだが流石に店主に止められる。


「なんでいいと思うんだ?鏡見ろおっさんが、変態か?」


「なんでそうなるんだ?俺も彼もほぼ同い年だぞ?」


「……嘘つくならもっとマシな嘘つけ。さすがにおっさんが女の着替え中に入るなよ」


 嘘じゃないのにとクルーガーは、ちょっとショックを受けた。


 忘れられているがナイトもアウトである。


 クルーガーさん、ありがとうございます。

 クルーガーさんが止めてくれてたお陰で間に合いました。


「もう開けるぞ!」


 店主は試着のカーテンを勢いよく開けた。


「どっ………どうですか?」


 試着室には、青色のワンピースを着た綺麗な緑色の髪を団子にした少女の姿を出す。


 耳は髪を縛った時に不自然に見えないほどに髪で隠した。

 いわゆる耳隠しと言われる髪型である。


「サフィさん髪サラサラで手こずった」


「手入れしてる証拠」


 店主はサフィの顔をじっと見て、すぐに警戒を解いた。


「確かに指名手配犯じゃねぇな」


 店主が納得したところで三人は、ほっと胸を撫で下ろした。


「にしても、嬢ちゃんそんな可愛いなら別に隠す必要ないだろ?エルフじゃあるまいし」


 三人は一瞬ビクッとしたが、すぐにナイトは店主とサフィの間に出て、サフィの姿を隠す。


「はっ恥ずかしがり屋なもので!」


 サフィは空気を読んで顔を覆った。


「あの、僕知らないんですけどエルフだと、どうなんですか?」


「は、知らない?」


 クルーガーがあっと口を手で覆う。


「そういえばナイトお前、記憶喪失だったな。じゃあその常識も知らなかったのか」


 店主は納得してナイトに説明してくれた。


「おぉう、そうか。エルフは暗黒時代の後もマーロム人に対してメダル狩りをしてたんだよ。特にこの地方は被害に遭った人が多かったから、エルフに対する恨みが根付いてるんだ」


「メダル狩りって……」


 歴史でやった魔女狩りとか、人狼狩りとかとみたいなものかな?


「ナイト、お前俺と初めて会った時、騎士団に酷い目に合わされたって言ってただろ?」


「はい。その後クルーガーさん達に出会えました」


 クルーガーとナイトの会話に店主は同情の目をナイトに向けた。

 そんな店主の様子に構わずクルーガーは続けた。


「あの頃、お前みたいに被害に遭った奴が多くてな、前に話した女の子の事もそうだが……噂ではあの頃の騎士団はメダル所有者に冤罪かけてメダルを奪ってたって聞いた。多分あれがメダル狩り」


 メダルを奪う事は所有者を殺すと同じ。

 つまりあの時、僕は今悪魔と言われている亡き騎士にメダル狩りにあいかけたって事なのだろう。


「怖いな……」


 予想が当たったとはいえ、一人呟くナイトは身震いした。

 ナイトの背中に隠れたサフィは少し気まずそうに俯いた。


 何はともあれ、こうしてナイト達のハラハラした買い物は終わった。








 話さないように隠していた事実をナイトに知られてしまった。


 いつの間にか一人にされた時、メダルが教えてくれた。


 別の世界の人間。


 エルフの、私に敵意のない目を向ける騎士を名前に持つマーロム人っぽい男の子。


 たとえ通報されなくても、一人取り残されるのは嫌だ。


 サフィは意を決して、一向にこちらを向かないナイトの服を掴む。


「ナイト、隠してたの怒ってる?」


 恨みはなくても、メダル所有者ならエルフを恐れるのは当然だ。


 しかしナイトは何の変哲もない顔であっさり答えた。


「サフィさんは、襲うどころか、助けてくれたからメダル狩りとは無関係だと思ってます」


 すごくバカな答え。


 でも、ナイトの言葉にサフィの心は落ちつきを取り戻す。


 それと同時にサフィは会って間もないのに、たった一度助けられたくらいで全ての警戒を解くナイトに呆気に取られた。


「ナイト、もっと警戒しないと早死にする」


「えぇ!?」


「よく言ったサフィ」


「クルーガーさんまで!」

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