贈り物
ダグラス様に提案を飲んでもらった私は、そのまま二人を連れてアクセサリー店にいった。
「ここです」
「ここは、アクセサリー店みたいね。アクセサリーが欲しかったのなら言ってくれればさっきの店で買ったのに」
ダリア様は私の頭を撫でながらそういった。
「ここが良かったんです」
「そうなの?」
「とりあえず入りましょう!」
疑問を浮かべる二人をぐいぐいと押しながら店の中へと入った。
「いらっしゃいませ…!お待ちしておりました、フロライン様」
店に入れば従業員がすぐに迎えに来た。私の顔を見ればハッとして、私の名前を呼んだ。
「ねぇリュシエンヌ、さっきもこんなことあったのだけれど」
「あ、今回は違いますよ!前々からここには頼んでいたものがあるんです」
ダリア様は、また私が経営をしているのではないかと疑っているようだった。でも、その表情もすぐにいつものものに戻ってくれた。
「それでは、リュシエンヌ様。応接室にご案内させていただきます」
私は軽く頷いて、その従業員の後をついていった。
「お待たせいたしました。こちらがご注文のお品物でございます。ご試着なさいますか」
私たちが部屋に案内された後、従業員が席を外して私が頼んでいたものを持ってきてくれた。
「ありがとうございます」
私は持ってきてもらったアクセサリーを眺める。うん、とても綺麗だ。私は二人の方を向いて話し始めた。
「ダリア様、ダグラス様。私がタルト家に来て7年。7年が経ちました。私はあっという間に14になり、もう直ぐ学園に入学します。だから、だから私はタルト家を離れなければなりません」
話し始めたのはいいけれど、少しずつ目がうるっとしてきた。きっとこの場所から離れたくないからなんだろう。その気持ちを整理するためにもちゃんと話さなきゃね。
「タルト家に来た当初は、私はきっと歓迎されないだろう。そう思っていました。それなのに、二人は私の心の壁をゆっくりとなくしてくれました。なぜあなたたちが私によくしてくれるのか、なぜそうも愛してると言ってくれるかも私には分かりませんでした」
今までの感じた思いを少しずつ少しずつ吐露していく。
「二人は私をただただ受け止めてくれて、時に叱ってくれて。それが本当に嬉しかったです。だから、私はここを離れるのが嫌です」
弱音を吐く私を二人はじっと見つめている。
「これは甘えることを覚えてしまった私の駄々です。その時になったらちゃんとここを離れます。ですので私から贈り物をもらっていただけませんか?」
「ダリア様にはシトリンという宝石を使ったネックレスを、ダグラス様にはパールのネックレスを」
私は箱に入っているネックレスをそれぞれ二人に差し出した。
「ダグラスの方、私とは少しデザインが違うみたいね」
ひょこっとダグラス様のネックレスのデザインを覗くダリア様がそう呟いた。
「あ、ごめんなさい。デザインが違うのはダグラス様にはネックレスが邪魔になってしまう可能性を考えたからなんです。宝石が付いている部分、指輪になっていましてどちらでも使えるようにしたんです。指のサイズがわからなかったので少し細工をさせていただきました」
指輪を渡そうと思ったら指のサイズを測らなきゃいけなかったのだけれど、そうなるとこれから指輪を渡すって言っているようなものだったから嫌だったのだ。だから、魔力を流し込むと形を変える特殊な鉱石を指輪の素材にした。
「一度、指輪をつけてみてくださいませんか?」
ダグラス様は私の言葉に従って、指輪を指に通そうとした。どうやら、指輪はダグラス様にとって少し小さかったみたいで第二関節のところで止まってしまっている。そこでだ。私はダグラス様に近づいて、指輪に魔力を流し始めた。自由に形が動くようになったものを、ダグラス様の指の根元まで持っていき魔力を流すのをやめた。この鉱石は魔力を流し終わった後、縮む特性がある。だから、いまダグラス様の指にはピッタリと指輪がくっついている。
「すごいな。だが、これだと外せないのだが」
誰でもサイズを合わせることができるという大きなメリットがあるのだがそれは、魔力を持っていればの話だ。しかも魔力を流し込むということは少し練習しなければならない。魔力を持っていない、うまく魔力を流し込めない、そんな人たちにもちゃんと使えるようにと私は魔力石を提案した。
「魔力石と言って、魔力を外に出した結晶です。これを指輪に触れさせれば魔力を流し込んでいることと同じことが起きます」
一度魔力石を使って指輪を外してみせた。
「贈り物受け取ってもらえますか」
一通り説明した後、私はそう聞いた。もしこれが気に入らなければどうしようなどと頭の中で考えながら。でもそれは杞憂でしかなかった。
「えぇ受け取らせていただくわ。こんな贈り物気に入らないはずないでしょう?」
「あぁ、私もだ。リュシエンヌが私のことをよく考えてくれたことがわかって嬉しいよ」
そういって二人は優しく私に近づいた。そうだ。この方達はこういう人だった。私の欲しい言葉をすぐに私にくれる。心の中を見透かされているかのようだ。
「ありがとうございます!家に帰ったらもう一つとっておきのものがあるんです!楽しみにしていてください」
「もうこれだけでも嬉しいのに?でもありがとう。楽しみにしておくわね」
「お世話になりました」
アクセサリー店を後にする際、そう一言従業員に告げた。
「いえいえ!こちらこそフロライン様のお力添えで新しい商品を開発できました。本当にこの度はありがとうございました」
従業員は嬉しそうに微笑みながらそう言ってくれた。私はただダグラス様のためにやっていたのだけれどそれが誰かのためになったのだとしたらなんだかくすぐったかった。




