魔力石
「レオン様、これでいいですか?」
「うん、それで大丈夫。あとはここに魔法をかけるだけだ」
遠くからでも連絡が取り合える道具を開発し始めてから一ヶ月が経った。最初は私一人だけでやろうと思っていたのだけれど、やはり私ができることには限界があって。仕方がないので一度王都に戻って、レオン様に助けを求めたのだ。断られることを想定していたのだが、レオン様は二つ返事で子爵邸まで来てくれた。日が登ればレオン様は子爵邸にやってきて、日が沈めば公爵邸に戻っていく。開発すること自体、かなりの魔力を使っているはずなのになぜこの人は一日に2回も瞬間移動を使えるのだろうか。本当にこの人の魔力は無限大だとしか思えない。
「空間を繋げることで連絡を取り合えるようにする、か。それにしてもよく思いついたね」
「空間魔法自体はレオン様が作ったものですから、褒められたことではありませんよ」
「それだけじゃない。こうやって魔力を物体として作り出すこともリュシエンヌが発明したじゃないか」
そう言いながらレオン様は、手に小さい魔力石を作り上げた。私たちのように魔力を多く持っていないダリア様たちがいつでも使えるようにどうすればいいか、考えた結果私は体内の魔力を物体として取り出すことにした。そして成功したものが、今レオン様が手に持っている魔力石だ。魔法を使う上で一番最初に訓練する魔力を循環させることを応用して作った。そして、微かなものだとしても魔力を流し込めば魔力石に込められた魔法が発動するようになっている。
「大したものではありません。きっとレオン様だってできたはずです」
「俺には無理だ。俺は第一自分の助けになるものしか作らないから。こうやって他の人のために使う魔法は一生かかっても無理だろう」
「そんなことありませんよ。現にレオン様が考えた空間魔法はこうやって人のためになっているのですから」
私はレオン様と話しながら魔力石に魔法を込めるための魔法陣を書いていく。魔法を普通に使う上では、魔法陣など必要ないのだけれど魔力石に魔法を込めるためには古代からあった魔法陣が必要だった。一度魔法石に直接魔法をかけたら、魔力石が魔法の負担に耐えられなくて爆発した。本当に死ぬかと思った。レオン様が近くにいて防御魔法を使ってくれたから無事だったのだけれど。
「よし、これで魔力を込めてっと」
私は紙に書いた魔法陣の上に先ほど作った魔力石を載せる。紙に触れて魔力を流し、熱くなってきたと思ったら魔力を流すのをやめる。魔法陣が光り輝き、それに同調するかのように魔法石が光始める。その光が収まれば、魔法がこもった魔力石の完成だ。
「成功しました」
私は輝きが治った魔力石をレオン様の元に持っていく。
「魔力石全体に魔法が行き届いている。爆発することはないだろう……」
爆発という言葉を聞いて私は苦い顔をする。あの時レオン様にこっぴどく叱られてしまったんだよなぁ。本当に怖かった。笑っているのに笑っていない目をしていた。怖い。もう二度と怒らせないようにしなければって心に誓った。
「それに15回ほどは連絡が取れるようになっているな」
「そうですか、もう一度作るってなった時レオン様を呼んでもいいですか?」
「構わない。むしろ呼べ。俺が見ていないところで爆発なんてされたくないからな。そうだ、これを渡しておく」
レオン様、だいぶ根に持ってるなぁ。とはいえ、渡されたこれなんだろう。魔力石っぽいけど。
「防御魔法が込められている。リュシエンヌの命が危険に晒された時、一度だけだが何人たりとも通さない防御壁を張るようになっている」
へぇー。レオン様は流石だな。私の研究を手伝う傍らでこんなものを作っていたとは。うん?でも何かがおかしい気がする。
「えっと、命が危険に晒された時に発動って。魔力を流し込んではいないのにですか?」
「そうだ。常にその魔力石から魔力を辺りに散らすことで危険なものを探知するようにできている」
やっぱり。私が作った魔力石の発動条件は魔力を流し入れること。だけど、レオン様の魔力石は自動で魔法を発動させることができるのだ。なんだか私が開発したものでさらに上にいかれると悔しいな。私はその気持ちを込めてレオン様を睨みつける。だけれど、まだ感謝の言葉を言っていない。
「ありがとうございます、レオンさま」
「あぁってなんか微妙な顔していないか?」
レオン様は感謝されて嬉しいんだかなんだかわからない表情をした。でもとりあえず、贈り物をちゃんと準備できてよかった。




