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異世界スライム紀  作者: すらいむ太郎


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8/25

# 第八話 変化

近付いてくる。


洞窟甲虫が一匹。


俺はその場を動かなかった。


隠れる必要もない。


逃げる必要もない。


今なら勝てる。


そう思えた。


もちろん油断はしない。


前回も前々回も、運が良かっただけかもしれない。


だが。


少なくとも転生直後の俺とは違う。


甲虫はゆっくりと進む。


触角を揺らしながら。


発光茸を探しているらしい。


俺は地面へ意識を向けた。


微かな振動。


甲虫の位置。


動く方向。


以前より分かる。


ほんの少しだけ。


だが確実に。


(これが触角の影響か……?)


確証はない。


それでも無関係とは思えなかった。


甲虫が近付く。


あと少し。


あと少し。


俺は身体の一部を細く伸ばした。


触角を真似た突起。


以前より長い。


以前より安定している。


甲虫がさらに近付く。


そして。


俺は飛び出した。


身体を広げる。


甲虫へ覆い被さる。


甲虫が暴れる。


だが。


俺は以前ほど苦戦しなかった。


振動が伝わる。


動く方向が分かる。


どこへ逃げようとしているのか。


なんとなくだが予測できた。


身体を回り込ませる。


塞ぐ。


包み込む。


やがて甲虫は動かなくなった。


二度目。


三度目。


そして今。


狩りは少しずつ慣れ始めていた。


俺は甲虫を取り込む。


空腹が薄れていく。


だが完全には消えない。


やはり以前より多くの食料が必要らしい。


その時だった。


頭の奥に浮かんだ情報が、今までと少し違った。


洞窟甲虫


解析進行度:17%


俺は動きを止めた。


(……え?)


今。


何か見えた。


文字ではない。


声でもない。


頭の中へ直接浮かんだ感覚。


洞窟甲虫。


解析進行度。


十七。


意味は分かる。


だが。


なぜ分かるのかが分からない。


しばらく待つ。


もう一度。


何も起きない。


俺は近くの岩へ意識を向けた。


変化なし。


発光茸へ意識を向ける。


何も起きない。


洞窟甲虫の死骸へ意識を向ける。


すると。


再び浮かんだ。


洞窟甲虫


解析進行度:17%


(なんなんだ……?)


混乱する。


だが。


今までの経験から学んでいた。


分からないなら試すしかない。


俺は甲虫の死骸へ身体を伸ばした。


完全に吸収し終える。


数分後。


再び情報が浮かぶ。


洞窟甲虫


解析進行度:18%


一つ増えた。


ほんの少しだけ。


だが増えた。


(増えるのか……)


俺は考える。


今まで取り込んできた洞窟甲虫。


その情報。


積み重なっている感覚。


もしかすると。


これはその進み具合なのかもしれない。


そう考えた時だった。


遠くから。


今まで聞いたことのない規模の振動が伝わってきた。


重い。


大きい。


そして。


速い。


俺は反射的に身体を縮めた。


洞窟甲虫ではない。


洞窟蜥蜴でもない。


もっと大きい。


地面が震える。


振動は真っ直ぐこちらへ向かってきていた。


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