# 第四話 群れ
四匹。
洞窟甲虫は列を作るように移動していた。
触角を揺らしながら。
ゆっくりと。
だが迷いなく進んでいる。
(群れることもあるのか)
今まで見たことはなかった。
たまたま一匹で行動していただけなのかもしれない。
俺は発光茸の陰でじっとしていた。
今の俺では勝てない。
一匹なら何とかなる。
二匹は分からない。
三匹以上は無理だ。
そう思う。
だから動かない。
気付かれないことを優先する。
洞窟甲虫たちは近付いてくる。
俺のいる場所のすぐ近くまで。
触角が揺れる。
何かを探しているように。
(来るな……)
身体を縮める。
だが甲虫たちはそのまま通り過ぎた。
ほっとする。
しばらくして振動が遠ざかる。
ようやく緊張が解けた。
(危なかった)
今はまだ弱い。
改めてそう実感する。
俺は発光茸の陰から出た。
そして甲虫たちが通った跡を見る。
すると。
そこには食べ残しがあった。
発光茸だ。
半分ほど齧られている。
俺は近付く。
少し考えた後、取り込んだ。
空腹が少し満たされる。
その時だった。
微かな違和感を覚える。
頭の中ではない。
身体の先端だった。
俺は身体を伸ばす。
細く。
長く。
いつものように。
すると。
以前より滑らかに形が作れた。
維持時間も長い。
(またか)
洞窟甲虫を取り込んでから少しずつ変わっている。
気のせいではない。
俺は細い突起を揺らしてみた。
もちろん何かを感じるわけではない。
だが。
ほんの僅か。
地面の振動が分かりやすくなった気がした。
(……気のせいか?)
何度か試す。
変わらない。
だが確信も持てない。
分かるような。
分からないような。
曖昧な感覚だった。
結局答えは出なかった。
俺は変形を解く。
身体が少し減る感覚がした。
やはり消耗する。
無駄遣いは良くない。
そのまま移動を再開する。
発光茸の群生地を抜ける。
さらに奥へ。
今まで通ったことのない場所へ。
洞窟はどこまでも続いていた。
岩。
水。
暗闇。
景色はほとんど変わらない。
それでも。
少しずつ違いはある。
壁の形。
地面の硬さ。
流れる水の量。
そして。
生き物の気配。
その時だった。
地面に新しい振動が伝わる。
洞窟甲虫ではない。
動き方が違う。
速い。
そして軽い。
俺は近くの岩陰へ滑り込んだ。
振動は近付いてくる。
やがて姿が見えた。
小さい。
洞窟甲虫よりさらに小さい。
丸い身体。
長い後ろ脚。
灰色の体毛。
見たことのない生物だった。
その生物は地面を跳ねるように移動している。
ぴょん。
ぴょん。
と。
もちろん音は聞こえない。
だが動きだけで分かった。
そして。
その生物の姿を見た瞬間。
頭の奥に言葉が浮かぶ。
――跳鼠。
俺は初めて。
洞窟甲虫以外の小さな生物を見つけた。




