# 第二十三話 初めての光
俺の身体が光った。
ほんの一瞬。
青白く。
発光茸のように。
いや。
もっと弱い。
でも。
確かに光った。
(……今の俺だよな?)
周囲を確認する。
他に光るものはない。
発光茸もない。
球体も岩陰の奥にある。
つまり。
今の光は。
俺。
俺だった。
(え、すご)
思わずそんなことを考える。
もちろん。
何が起きたのかは分からない。
分からないけど。
ちょっと嬉しい。
初めてだ。
触角。
硬質化。
跳躍。
水棲適応。
全部便利だった。
でも。
どれも身体の延長だった。
今の光は違う。
明らかに違う。
人間だった頃に想像していた。
ファンタジー。
魔法。
そんなものに近い。
(いや、光っただけなんだけど)
うん。
光っただけだ。
攻撃できるわけでもない。
すごく明るいわけでもない。
でも。
なんかいい。
ちょっとテンションが上がる。
俺はもう一度試してみた。
身体の奥。
満ちている何か。
それを意識する。
すると。
ぽう。
また光った。
(おぉ!)
今度は少し長い。
三秒ほど。
そして。
すっと消えた。
同時に。
身体の奥にあった満ちた感覚が少し減る。
(減った?)
俺は試しにもう一度。
ぽう。
光る。
少し減る。
また光る。
少し減る。
(なるほど)
どうやら無限じゃないらしい。
何かを消費している。
おそらく。
魔力。
たぶん。
きっと。
知らんけど。
その時だった。
隙間の外から微かな振動が伝わる。
洞窟結晶蝦だ。
まだ近くにいる。
俺は身体を縮める。
しかし。
洞窟結晶蝦は隙間へ入ってこない。
代わりに。
長い触角を伸ばしていた。
そして。
触角の先が。
俺のいる方向を正確に向いていた。
(え?)
その瞬間。
洞窟結晶蝦の身体に生えた青い結晶が淡く輝く。
次の瞬間。
水が動いた。
ぶわっ。
周囲の水流が急激に変化する。
俺の身体が押される。
岩に叩きつけられそうになる。
(なっ!?)
何が起きた?
水流?
いや。
偶然じゃない。
洞窟結晶蝦の結晶が光った。
その直後だ。
つまり。
(あいつ……)
(今、水を動かしたのか!?)
洞窟結晶蝦の結晶は数秒で光を失う。
荒れていた水流も落ち着いていく。
そして。
頭の奥に浮かぶ。
魔力保持
解析進行度:2%
俺は動きを止めた。
(増えた……?)
そして。
ようやく理解する。
あの青い結晶。
あの青い球体。
そして。
洞窟結晶蝦。
全部。
同じ何かを持っている。
魔力。
そして。
もし今のが魔法なら。
(この世界、本当に魔法あるんだな……)
そんな当たり前のことに。
今さらながら。
少し興奮している自分がいた。
その時。
隙間の奥。
俺のすぐ近くで。
ころり。
小さな音がした――気がした。
いや。
音は聞こえない。
でも。
振動は伝わった。
青い球体。
その隣。
暗闇の中から。
もう一つ。
小さな丸い影が転がり出てきた。
そして。
それはゆっくりと。
俺の方へ近付いてきた。
(……え?)
球体じゃない。
生きている。
小さい。
丸い。
そして。
身体の一部が。
俺と同じように。
淡く青く光っていた。




