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異世界スライム紀  作者: すらいむ太郎


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# 第二十一話 長い触角

長い二本の触角。


それが暗い水の中からゆっくり現れた。


(……なんだあれ)


俺は岩陰へ身を隠す。


触角はまだ伸びる。


長い。


洞窟甲虫の触角なんて比べものにならない。


そして。


次に現れたのは硬そうな殻。


丸い身体。


何本もの脚。


そして大きな鋏。


(エビ?)


いや。


ザリガニか?


人間だった頃の知識を総動員する。


だが。


こんな場所にいる時点で普通じゃない。


全身が青黒い。


身体には所々、青い結晶のようなものが生えていた。


そいつはゆっくり浅瀬を歩く。


魚ではない。


地面を歩いている。


そして。


近くを泳いでいた小魚が逃げ遅れた。


鋏が動く。


速い。


ぱちん。


小魚を掴む。


そのまま口へ運ぶ。


(うわぁ……)


強い。


間違いなく強い。


洞窟甲虫よりも。


しかも。


硬そうだ。


俺はじっと観察する。


相手はこちらに気付いていない。


大きさは洞窟蜥蜴より小さい。


だが。


水の中ではかなり厄介そうだった。


その時。


頭の奥に反応が浮かぶ。


洞窟結晶蝦


解析不能


(蝦ってエビか)


初めて見る生き物。


そして。


また解析不能。


つまり。


今の俺では理解できない相手。


俺は素直に逃げることにした。


勝てない相手と戦う理由はない。


しかし。


身体を動かした瞬間だった。


近くにいた小魚たちが慌てて散った。


その動きに。


洞窟結晶蝦が反応した。


長い触角がこちらを向く。


(やば)


鋏が開く。


俺は全力で逃げた。


身体を縮める。


伸ばす。


水を掻く。


まだ遅い。


でも逃げる。


後ろから振動。


速い。


思ったより速い。


(いやいやいや!)


(エビってそんな速かったっけ!?)


岩陰へ飛び込む。


その瞬間。


鋏が目の前を通り過ぎた。


危ない。


あと少しで挟まれるところだった。


俺はさらに狭い隙間へ逃げ込む。


洞窟結晶蝦は追ってくる。


だが。


途中で止まった。


大きすぎる。


入れない。


長い触角だけが隙間を探る。


俺は身を縮める。


動かない。


頼む。


帰ってくれ。


数分後。


ようやく振動が遠ざかっていく。


助かった。


本当に助かった。


(危なすぎるだろ……)


地底湖。


豊かな場所だと思った。


それは間違っていない。


だが。


豊かな場所には。


強い生き物も集まる。


そんな当たり前のことを。


俺は改めて思い知った。


その時。


逃げ込んだ隙間の奥で。


何かが微かに青く光った。


発光茸ではない。


結晶でもない。


もっと柔らかい。


丸い。


小さな球体。


そして。


身体の奥を流れる不思議な感覚が。


今までで一番強く反応した。


(……なんだ?)


俺は思わず近付いていた。


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