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異世界スライム紀  作者: すらいむ太郎


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# 第二話 探索

洞窟甲虫を取り込んでから、どれくらい経っただろうか。


時間の感覚は相変わらず曖昧だった。


空腹になれば動き。


満たされれば休む。


その繰り返し。


今の俺の生活はとても単純だった。


発光茸を見つけて食べる。


水を吸収する。


休む。


移動する。


ただそれだけだ。


それでも少しずつ分かってきたことがある。


まず。


身体は回復する。


洞窟甲虫に削られた部分はすでにほとんど元に戻っていた。


発光茸や水を取り込むことで少しずつ再生しているらしい。


そしてもう一つ。


身体が少し大きくなっていた。


本当に僅かだ。


だが転生した直後より質量が増えている感覚がある。


気のせいではないと思う。


(成長してる……のか?)


答えは分からない。


誰も教えてはくれない。


俺しかいないのだから。


洞窟を進みながら周囲を探る。


相変わらず遠くまでは分からない。


だが近くにあるものの輪郭くらいなら感じ取れるようになっていた。


慣れもあるのだろう。


少しだけだが。


転生直後より世界が広くなった気がした。


その時。


何かが転がっていることに気付く。


小さい。


硬い。


近付いて確認する。


洞窟甲虫の死骸だった。


正確には死骸の一部。


脚だけが千切れて落ちている。


(なんでこんな所に)


分からない。


だが考えても仕方がない。


俺は脚へ身体を伸ばした。


ゆっくりと取り込む。


空腹が少し和らぐ。


それだけではなかった。


頭の奥に違和感が生まれる。


脚。


関節。


外殻。


断片的な情報。


以前にも感じた感覚だった。


しばらくすると消える。


だが完全には消えない。


ぼんやりと残っている。


俺は試しに身体の一部を変形させてみた。


細く。


長く。


洞窟甲虫の触角を思い浮かべる。


何度も。


何度も。


繰り返す。


すると。


身体の先端が細く伸びた。


以前より自然だった。


少しだけ長く維持もできる。


(前よりできてるな)


だがまだ触角とは呼べない。


ただ細く伸びただけだ。


それでも確かな変化だった。


俺は何度か試した後、変形をやめた。


身体が少し減った気がしたからだ。


変形にも消耗があるらしい。


無駄遣いは危険だ。


俺は再び移動を始めた。


しばらく進む。


発光茸が群生している場所へ出た。


今まで見た中で一番多い。


洞窟の壁一面がぼんやりと光っている。


幻想的だった。


もし人間の姿だったら見惚れていたかもしれない。


その時だった。


微かな振動。


ぴたりと動きを止める。


何かいる。


振動は小さい。


だが近い。


俺は発光茸の陰へ隠れた。


待つ。


やがて暗闇の向こうから姿が現れた。


洞窟甲虫だった。


前に見たものより少し小さい。


甲虫は発光茸へ近付き、夢中で齧り始めた。


触角を揺らしながら。


周囲を警戒する様子もない。


(気付いてない……?)


俺は甲虫を見つめる。


前回は襲われた。


必死に生き残った。


だが今は違う。


相手は俺に気付いていない。


逃げる必要もない。


ふと考える。


もし取り込めれば。


またあの不思議な感覚を得られるかもしれない。


そして。


食料にもなる。


俺はじっと甲虫を見つめた。


生まれて初めて。


自分から獲物を狙おうとしていた。


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