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異世界スライム紀  作者: すらいむ太郎


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# 第十九話 浅瀬

呼ばれている。


そんな感覚を振り払うように、俺は岸辺へ戻った。


いや。


呼ばれているなんて変だろ。


生き物じゃないんだし。


岩が「こっち来い」なんて言うわけない。


(疲れてるのかな)


スライムに疲労があるのか知らないけど。


とにかく。


今はできることを増やす方が先だ。


地底湖の中央へ行くのは、その後。


俺は再び浅瀬へ向かった。


今度は慎重に。


少しずつ。


身体を水へ浸ける。


冷たい。


でも嫌な感じはしない。


半分。


七割。


そして全部。


身体全体が水に浮かぶ。


(おぉ……)


相変わらず不思議な感覚だ。


沈まない。


苦しくもない。


身体を縮める。


伸ばす。


するとゆっくり進む。


慣れてきた。


まだ遅いけど。


最初よりずっと安定している。


そのまま浅瀬を行ったり来たりする。


岩の周りを回る。


発光茸の群生を眺める。


少し楽しくなってきた。


(スライムって案外悪くないかも)


いや。


人間に戻れるなら戻りたいけど。


でも。


こうして新しいことを覚えていくのは嫌いじゃなかった。


その時だった。


何かが身体に触れた。


小さい。


細い。


反射的に身体を縮める。


すると。


小さな魚が慌てて逃げていった。


(おっ)


初めて見る。


さっきの大きな魚とは違う。


俺より少し小さいくらい。


群れで泳いでいる。


どうやら浅瀬に住んでいるらしい。


しかも。


あまり警戒していない。


一匹が再び近付いてきた。


興味津々といった感じだ。


俺も興味津々だった。


しばらく見つめ合う。


いや。


俺には目がないけど。


そんな感じだった。


すると。


小魚が俺の身体をつついた。


(こらこら)


またつつく。


どうやら食べ物か何かだと思われているらしい。


ちょっと失礼だな。


そう思った時。


小魚の一匹が身体の中へ半分ほど入り込んできた。


(え?)


小魚も驚いたらしい。


慌てて逃げようとする。


だが。


遅かった。


するりと。


自然に。


小魚は俺の身体へ沈んでいった。


俺は固まる。


小魚も固まった。


……たぶん。


そして。


しばらくして。


動かなくなった。


(……食べちゃった?)


いや。


そんなつもりじゃなかった。


本当に。


事故だ。


事故なんだけど。


頭の奥に情報が流れ込んでくる。


鱗。


鰭。


水流。


尾。


そして。


泳ぐ。


洞窟遊魚


解析進行度:3%


初めて見る名前だった。


さらに。


水棲適応


解析進行度:3%


こちらも増えている。


(増えた……)


しかも。


身体の中が妙に重い。


満腹感とは違う。


なんだろう。


そんなことを考えながら。


俺は何気なく水中へ身体を伸ばした。


すると。


身体の一部から。


透明な水がふわりと外へ流れ出した。


(……ん?)


俺は動きを止めた。


今。


何か出たような気がした。


気のせいか?


いや。


気のせいじゃない。


俺の中に。


今までなかった何かが入っている。


そんな不思議な感覚があった。


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