# 第十二話 知らない気配
知らない振動だった。
洞窟甲虫でもない。
洞窟蜥蜴でもない。
跳ねる生き物とも違う。
何かを引きずるような。
そんな不思議な動き。
俺は少し迷った。
危険かもしれない。
でも。
気になった。
この洞窟で生き残るなら、知らないものを知る必要がある。
いつまでも発光茸と洞窟甲虫だけじゃ限界が来る。
だから俺は進んだ。
慎重に。
振動を追う。
途中で何度か立ち止まる。
相手の動きを確認するためだ。
幸い向こうは気付いていないらしい。
距離は少しずつ縮まっていく。
そして。
ようやく姿が見えた。
(なんだあれ)
思わずそう思った。
長い。
細い。
体の大部分が節になっている。
まるで巨大なムカデだった。
ただし色は白い。
岩の色に近い。
発光茸の光を受けてぼんやり浮かび上がっていた。
その生き物は何かを引きずっている。
近くを見る。
洞窟甲虫だった。
しかもかなり大きい。
死んでいるらしい。
白いムカデはそれを巣へ運んでいるようだった。
(あいつが倒したのか?)
だとしたら強い。
洞窟蜥蜴ほどじゃなくても危険だ。
俺は岩陰に隠れたまま観察する。
白いムカデは周囲を気にする様子もなく進む。
かなり自信があるのかもしれない。
あるいは。
敵が少ないのか。
その時だった。
洞窟甲虫の死骸の一部が外れた。
脚だ。
ぽろりと落ちる。
だがムカデは気付かない。
そのまま進んでいく。
やがて暗闇へ消えた。
振動も遠ざかる。
俺は少し待った。
すぐには動かない。
もし戻ってきたら危険だからだ。
しばらくして。
完全に気配が消えたことを確認する。
俺は脚へ近付いた。
見慣れた洞窟甲虫の脚。
食べ慣れた獲物の一部。
だけど。
今回は少し違った。
近くの地面に跡がある。
無数の細い脚の跡。
そして。
深く刻まれた引きずり跡。
(強そうだな……)
正直、あまり関わりたくない。
でも。
洞窟蜥蜴もそうだった。
強い生き物から得られるものは大きい。
俺は甲虫の脚を取り込む。
空腹が少しだけ和らいだ。
その瞬間。
洞窟甲虫
解析進行度:21%
数字がまた増える。
最近ようやく分かってきた。
同じ生き物を取り込むほど解析は進む。
じゃあ。
二十の次は三十。
三十の次は五十。
百になったらどうなるんだろう。
(何か覚えるのか?)
(それとももっと変形できるようになるのか?)
少し気になる。
かなり気になる。
ゲームだったら新スキル解放とかありそうだ。
まあ。
人生でスライムになった経験なんてないから分からないけど。
そんなことを考えていると。
頭の奥にまた振動が伝わった。
今度は近い。
かなり近い。
しかも速い。
(え)
その瞬間。
暗闇の中で何かが動いた。
俺は反射的に身体を縮める。
だが。
遅かった。
白い影が。
岩陰から飛び出してきた。




